怠惰ってる?
「性格悪そう?残念美人?おたんこなす?随分ボキャブラリーが足りないみたいですね」
やばいやばいやばいやばい。まさか見えてない、聞こえてないんじゃなくて無視してただけだったとは。
明らかに強いであろう女神様を怒らせるのは不味いでしょ!下手したら死ぬ!!誰も見てないから完全犯罪だ!!
この状況を打破するために、今の俺に何が出来る?考えろ考えろ……はっ!!
「本当にッ!!申し訳ありませんでしたッッッッ!!!」
漢佐々木三郎魂の土下座!!これしかない!力の限り許しを乞う!!これが俺の戦い方!!
「……」
沈黙が痛い。冷や汗が止まらない。自らの背に女神様の視線が突き刺さっているのを感じる。どうする?こっから足でも舐めればいいのか?
「ふふ、ふふふ、アッハッハッハッハハハハハ!!面白い!実に面白いですねニンゲン!最初は縊り殺してやろうかと思いましたが、変更です変更。とても卑屈で良かったですよ」
た、助かったのか?……というか俺、土下座してなきゃ下手しなくても縊り殺されてたのか!?怖すぎる、恐怖だ。やっぱり俺の勘は間違ってなかった。コイツ、勇者君たちの前では猫被ってただけだ。絶対性格が悪いぞ。
「あ、そうそう。ちなみに私、人の心が読めちゃうんですよね~」
はへ?人の心が読める?……。
「偉大なる女神様!!自分がバカでした!!無知で愚かな私をその寛大なる御心でお許しください!!」
死にたくなーい!!俺はこんなところで死にたくないんだ。死ぬならせめて無双してモテモテになって人生を最高に謳歌してからで!!
「ふぅ、十分笑わせて頂いたのでもう卑屈にならなくていいですよ。勇者たちを召喚しようとしたら何故か付いて来てしまった一般人以下の弱小なニンゲン様?」
……クソ、完全にからかってやがるぜ。でも何も言えない。俺が殴りかかろうモノなら、次の瞬間には天国……いや、地獄に落とされそうだ。
「いやー、でもこのままだったら地獄でも生ぬるいかもー、誰かこのか弱い女神様の話を聞いてくれたら、それを回避できるかもしれないのになー」
話を聞く。聞かない。聞く。聞かない。……聞くしかないよなぁ。正直言って俺に選択肢なんてないんだ。ロクでもないことと分かっていても話に乗るしかない。
「はい、一名様ごあんなーい!というわけでこちらのスキルをどうぞ!」
【スキル:怠惰を入手しました】
は?バカにしてるのか?何だこのスキル名は。めちゃくちゃ弱そうじゃねぇか。……そ、そうだ。スキルの効果を見てみるか。判断するのはそれからで良いよな。
☆怠惰(その様、正に不動の山の如し。汝、七つの大罪の一つを背負うに相応しき者なり)
七つの大罪!?七つの大罪って言ったらあれだよな。キリスト教か何かで良くないって言われてる罪の……。ええと……。その……。
うん、俺七つの大罪について全然知らないな!それにこのスキルがどういうモノなのか、説明文を読んでも全然分からない。中二病的な感じで説明文がかっこいいけど、当事者からするともう少し直接的に書いて欲しいと思ってしまう。
何しろ俺の持っているスキルは、怠惰を除くと、どこでも眠れる居眠りしかないからな!(キリッ)
……はぁ。スキルを見てると、眠ったりサボることしかできない雑魚にしか見えないな。……いやまぁ、事実なんだけどね?レベルも一般人以下みたいだし。
「ち!な!み!に!このスキルを持っていると世界中の善良な人々に命を狙われることになっちゃうんですよねー。きゃー、こわーい!」
は?え?はえ!?ちょ、まっ!?
「という訳で、貴方には勇者たちと同じ異世界に行ってもらいマース!」
え?それは少し気が引かれるけど……でも世界中の人に命を狙われるんだろ!?流石に嫌だ!
「今更嫌だって言っても無理です。という訳で……行ってらっしゃい♡」
クソ女神が俺に笑いかけたその瞬間、足元にぽっかりと穴が空き、俺の体が宙に浮いた。こ、これは……!
「こんの!クソ女神がぁぁぁぁぁあ!!!覚えてやがれぇぇえ!!!!」
こうして俺は、異世界へ落ちた……いや、堕ちたのだ。
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