Scene 52. 警報と、出陣。
食事を終えたミィヤ、マイクとロブソンの三人は、寮に帰る為に丁度カウンターの席を立とうとしていたところだった。
突然、店内に何重ものアラームが鳴り響いた。
反射的に部屋を見渡した三人だったが、音の出所が分からない。音源は複数ありそうだった。間髪置かずに、今度は背後で大きな音がする。
三人が振り向くと、三人の男が飛ぶ様に走って店を出て行ったところだった。騒音は、勢いよく椅子を蹴って立った音と、投げ出されたフォークやグラスが立てた音だったに違いない。テーブルの上には、半分も食べられていない料理の皿が取り残されていた。紙のナプキンが、一枚ふわりと床に落ちた。
「なんだぁ?」
ロブソンが、慌ただしいその様を見て呟いた。ミィヤとマイクは、アラーム音がもう聞こえなくなっていることに気づく。音源は走り去った男達だったようだ。
「何かあったのかな?」
「バグだろうな。」
マイクのつぶやきに、カウンターの反対側にいた店主らしき人が答えたので、三人は揃って振り向いた。
「お前らも、今にああやって駆り出される様になるぞ。」
三人を見て言った店主は、自分の手首をもう片手の人差し指でトントン、と指差しながら言った。その指先にあるのは、シルバーのバンドだ。ミィヤたちは、それぞれ自分の手を胸元まで掲げて、自分のバンドを見つめた。店主は服装を見て、三人が防護班であると理解できていたのだろう。
「バグか……」
ロブソンがまた呟いた。
三人は、まだ実物を見たことが無かった。
人類の脅威であると言う、未知の存在。
これから三人が立ち向かっていくであろう対象。
それは、殆ど防護班の存在意義、そのものだった。
ミィヤは男達が走り去った出口を見て、何故だかヴァースの事を思い出していた。
「お前さんが行くと、現場が混乱するぞ。」
おもむろに茶会の席を立ったヴァースに、フラーが声を掛けた。ヴァースは執務室の扉に向かう穏やかな歩調を止めずに応えた。
「出しゃばりはしませんよ。現場の司令官に任せます。」
顔だけ振り向いて、フラーの方を見る。三衛星も、神妙な面持ちでヴァースの方を見ていた。
「なに、四年振りに現場の空気を吸ってくるだけですよ。なんせカンが鈍っていますからね。」
そう言って、ヴァースは正面に視線を戻す。
「平和ボケした感覚に、喝を入れてくるだけです。後程、ラッザリーニ殿。」
そう付け加えて、片手を掲げた。フラーと三衛星は、それ以上は何も言わずに、ヴァースが執務室の中に消えるのを見送った。
「は、仕事熱心なのは変わっちゃいないな。」
ラッザリーニは吐き捨てる様に皮肉を言って、椅子に背を預けた。フラーとラピーテンはそれには反応せずに、何処を見るでもなく、何処か憂いに満ちた表情を浮かべていた。
ヴァースは早足で特別区画の通路を進み、程なくして目的の場所に辿り着く。四年前まで、特に艦長を務めてから幾度となく訪れた場所だった。
全身をスキャンする認証を終えて 二重の自動ドアを潜る時、ヴァースはほんの一瞬動きを止めた。それから、ゆっくりと室内に足を踏み入れる。
見慣れた半円形の、巨大な部屋。それは母艦マザー・グリーンの、主要司令室だった。
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今日も読んでくれてありがとう!
続きはまた明日♪
瀬道 一加
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