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【天空のカヴァルリー】 〜若き元空挺軍総帥の憂鬱〜  作者: 瀬道 一加
Section 8. 式典。
42/77

Scene 42. 式典と、見物。

コロセウムのフィールドに並んだ空士達に、機械音の場内アナウンスで静粛が促された。しかしまだ場内のざわめきは収まらない。フィールド内だけでなく、観客席や特別席の中にも、多くの人がやって来ていた。新任の空士や士官達の家族や親類なのだろうか、私服姿の人も多く見られる。


程なくして、ミィヤ達の正面にあった石造りのアーチの下の格子戸が開き、グレーの軍服を着た男に率いられた一団が現れた。後に続く者たちの制服と帽子には、白地に黄色い縁取りがある。マザー・グリーン内部にある士官学校を卒業した、新任の少尉達だ。


足早にミィヤ達の右手に進むと、最前列の前で方向転換し、空士達の整列の前に進んでいく。均等な間隔で立ち止まると、正面を向いて後ろ手を組み微動だにしなかった。そのやや物々しい様子に、新任の空士達は少し気圧される。


グレーの軍服を着た男だけは、一人整列に向かって中央正面に立つ。自分に続いて出てきた一団が全て位置に着き静止したことを確認すると、フィールド中に響く大声で叫んだ。


「全員、整列!!」


ざ、と先頭にいた一団が一糸乱れぬ所作でそれに従い、後ろで組んでいた手を身体の横にぴたりと付け、両足を揃える。新任の空士達は慌てたようにそれに続く。観客席や特別席にいる者達も立ち上がり、騒めきは急に収まって行った。


全員が号令に従ったのを確認して、グレーの軍服の男が再度号令を下す。


「敬礼!!」


ざ、と、会場内の全員が同時に動いた音が会場内に響く。その反響が収まった後は、会場は水を打ったような静けさだった。グレーの軍服の男は一人、体の向きを変え、自分も正面上方を向いて敬礼の姿勢を取る。その視線の先には、柱に施された空挺軍の地球のモチーフがあった。



「それじゃ、若者達に挨拶しに行こうかの。」


会場内に響き渡った号令を聞いて、フラーは言った。浮遊椅子を操って、柱の横の開口部へ進み、フィールド側のステージに向かった。三人はヴァースに対する敬礼から直り、その後に続く。


「お前さんも一緒じゃよ。椅子は余分に用意するように言ってある。」


進みながら浮遊椅子から顔を少し横に出して、そう言えば式典中の着席場所に関して確認していなかったことに気づいたヴァースに対して、完璧なタイミングでフラーは言った。納得して、ヴァースは三人の後に続いた。


「三衛星では無くて、四衛星になっちゃったわねぇ。」


三人のうちの一人、壮年の女性がヴァースの斜め前を進みながら小さく言った。他の男二人は、先を歩きながら横目でヴァースを伺っていたが、やがて視線を外してステージに出て行く。


「お久しぶりです、ラピーテン大将。ご挨拶に伺えずご無礼を。」


ヴァースは女性に対して小さく答えた。


「いいのよ。私の出発前にゆっくり話せたらいいのだけど。」

「お声がけします。」


足は止めずに囁きを交わしながら、二人は明るい会場内に足を踏み入れた。




「お、来た来た。出て来たな。」


訓練校にいた時と変わらない寮室のベットに座って、横になったリディが操っているスクリーンを覗き込んでいたビーは、会場内に現れた艦長達を認めて呟いた。会場内のカメラからの映像に映る、艦長に続いて現れた、白い軍服を身につけた四人目の人物を指差して続ける。


「これ元隊長だろ。本当に将官の軍服着てやがるな。」

「いやぁーん先輩かっこいいーーーっ!!背ぇ高ぁ〜い!!」


スクリーンを操作していた両手を顔の横で組んで、目を輝かせながらリディは叫ぶ。


ビーとリディの着任式は翌日だった。早朝にミィヤ達三人を連絡船乗り場で見送った後、特に着任前の準備をする必要の無い二人は、最後の休みをリディの部屋で昼間からビール片手にピザを頬張りながら、のんびりと過ごしていた。今頃着任式が始まっているだろうとビーが言った後、見物しようとリディが室内のスクリーンに会場の映像を繋げたところだ。


「こいつらが三衛星か……。」


フラーに続いてヴァースと共にステージに現れた三人を見ながら、ビーは呟いた。


「なぁにそれー?」

「……お前な、就職先の幹部の事ぐらい知っとけよ。」


とぼけた声で聞いたリディに、ビーは呆れて冷たく返した。



三衛星とは、フラーとヴァースと共に現れた三人の事だ。空挺軍に三人しかいない大将で、マザー・グリーンが誇る三つの艦隊を預かる、隊長達。それぞれが、太陽系内の防護の鍵となる区画の巡回を任されていた。


顔に傷のある色黒で大柄の男はジョシュ・ラッザリーニ・アレン。士官では珍しい地上の出身者で、その見た目と豪快な性格から、「海賊船長」の通り名で知られていた。


唯一の女性が「女帝」メラニー・ドリアーナ・ラピーテン・サンチェス。豊かに波打つ黒髪を首の後ろに一つにまとめていて、真っ赤な口紅と膨よかな褐色の肌が白い軍服によく映える華やかな見た目だが、ラッザリーニに劣らないほどの豪傑だと噂されていた。


白髪の老紳士はアダム・レオン・デューモ・シャークマン。三人の中では一番老齢で、フラーと同年代だ。どちらかと言えば派手な印象を受ける他の二人に比べると目立たないが、ヴァースと同じく艦長を務めた父親を持つ、生粋のエリートだった。



「我らがヴァース元隊長も務めた三衛星だぞ。マザー・グリーン軍で一番でかい船を任されてる奴らだ。次の艦長は大体この中から決まるんだから、そのくらい知っとけよ。因みに、こいつが元隊長の後釜。」


ビーはそう言いながら、画面に映ったラピーテン大将を指差した。


「へぇ〜、そーなんだぁ〜。」


枕に顎を乗せて、対して興味も無さそうにリディは言ったが、思いついてビーに聞き返す。


「そしたらヴァース先輩って何になるの?一緒にいるって事はその仲間ぁ?」

「さぁなぁ、知らねーよ。こいつらは『大将』だけど、元班長は『准将』だ。艦長の補佐っつってたから、三衛星みたく艦隊率いて外に出る事はねぇんじゃねぇの?まぁ、言ってもここにいる全員、現艦長も含めて元隊長の元部下だ。同じ扱いはねーだろーな。」

「えー!!何それやばーい先輩凄ーい!!」


何を今更、と、ビーは据わった目で、目を輝かせて画面を食い入るように見るリディを見下ろしたのだった。

********


今日も読んでくれてありがとう!

続きはまた明日♪


瀬道 一加


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