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【天空のカヴァルリー】 〜若き元空挺軍総帥の憂鬱〜  作者: 瀬道 一加
Section 7. 着任式へ。
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Scene 39. 期待と、不安。

「ごめんよロブソン、僕が提案したばっかりに。」


マイクは言いながら、新しく買ったパックのドリンクを集会場の中への通路の脇でしゃがみ込んでいるロブソンに再度差し出した。ロブソンはハイパーループに乗ったせいで増してしまった痛みに耐えながら、ぐったりとした様子である。


打たれ弱いわけでは無いはずのロブソンがここまで痛そうにしているのだから、相当当たりどころが悪かったか、ハイパーループに乗った時の圧が酷く影響を及ぼしたかのどちらかだ、と隣にいたミィヤは心配になり始めていた。もしかしたらその両方かもしれないが。


「おーサンキュー……まー、しゃあねぇよ。遅れるわけに行かなかったしさ。」


ロブソンは言いながらマイクが差し出したパックを受け取ると、それまで使っていてぬるくなってしまった方のパックの蓋を開けて、中身を一気に飲み干した。食欲があるのは良い兆候だと、マイクとミィヤは少しホッとする。



「うう、帽子かぶんなきゃダメだよなやっぱ。」


立派なたんこぶになってしまった幹部に新しく受け取ったパックを当てて、ロブソンは項垂れる。


「だろうね。途中で外す事になるけど。」


と、マイクは答えたが、外したら外したで腫れ上がった額が随分目立ってしまいそうであることには、言及しないことにした。


ロブソンの怪我は悪化してしまったが、ハイパーループに乗ったお陰で三人は目的地には随分と早く辿り着いていた。バンドのナビゲーションの通りに、コロセウムと呼ばれる大昔の闘技場を模したような作りの集会場の入り口のひとつに、三人は既に足を踏み入れていた。通路の脇で、着任式の開始までまだ少し残っている時間を持て余している状態だ。


正装を身に纏った他の新任の空士候補生達も続々と到着し、ミィヤ達の前を通り過ぎて、中央のフィールドの入り口付近に向かって行く。訓練校と防護船からの顔見知りも勿論大勢いたが、頭のこぶを揶揄されたくなくて俯いているロブソンのために、二人はあまり積極的に声をかけることは避けた。




もうすぐ着任式が始まる。それを実感して、ミィヤは待ちに待った着任に当たっての気分の高揚とは、また別の緊張を感じ始めていた。壁際に立って、そわそわと会場の奥に入っていく人混みを見回す。ミィヤのその様子に特に気づくでもなく、ロブソンがぼそりと言った。


「先輩も来るんかなぁ。」


自分の考えをそのまま言葉にしたようなロブソンの呟きに、ミィヤはこっそり驚愕したが、何も言わないことにした。代わりに、ロブソンの反対側で壁に寄りかかっているマイクが答えた。


「どうだろう。訓練校の管轄から母艦への異動だったら僕らと同じだから、もしかしたら来るかもね。」

「上官の着任式も一緒にやるのか?」

「さぁ、僕にも分からないや。」

「うぅ、また会いてーけどこの頭は見られたくねぇなぁ。みっともねぇ。」

「はは、笑われるねきっと。」

「うー。」


ロブソンは呻きながら更にがっくりと項垂れた。二人の会話を聞きながら、ミィヤは緊張で鼓動が高鳴る一方だったが、何とか平静を装っていた。そう言えば、二人の前で先輩と会う事になったらどう振る舞えば良いのだろう。



今やデートをした仲とはいえ、まだ一回だけだし。こっちとしては二人に、特にヴァースは憧れの人だと堂々と慕っているロブソンに明かすのは、ミィヤはもう少し待ちたかった。予感でしか無かったが、何だか盛大に羨ましがられる気がする。あっちとしても、公になってしまったら色々と面倒に違いない。ただでさえ着任したばかりで、余計な噂話は無い方が良いに決まっているのだ。


だからと言って、本人の前で何も無いふりをするのも、ミィヤは苦しい気がした。そうしなければならない状態なんて、考えるだけでも辛い。会いたいのに、会えたら嬉しいのに、それを伝えられないなんて。逆の立場で考えるのは、もっと辛かった。何も無いそぶりなんてされたとしたら、それだけで心が壊れてしまいそうだった。



既に幾度と無く思い起こした、自分が言った言葉を思い出す。



大切にします。



大切にする?どうやって?どうするのが正解なんだろう?どう振る舞えば、大切にした事になる?


本当に、どうしたら良いのだろうと、直前になって重い困惑がまた襲ってきて、ミィヤは気分が沈んでいくのを感じていた。それをよそに、マイクが穏やかに呟く。


「奥に入っていくのは初等空士ばかりだね。新任の士官や上官達は入り口が違うのかなぁ。」

********


今日も読んでくれて有難う!

続きはまた明日♪


瀬道 一加


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