異世界転生するにあたって望みを1つ叶えてくれるらしいからお願いした結果。
「はい、次の方どうぞ〜」
目の前には白い扉。中から呼ばれたので指示通り、私はドアノブに手をかけて引いた。
そして思う。
アレ、私なんでこんなところにいるんだっけ、と。
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私は日本で社会人として働いていたモブ山モブ子。23歳。地元を離れて大学に通ったものの、都会は気疲れするし実家が一番という理由で地元就職をしたような女である。さてさてそんなどこにでも居るような私が、一体何故こんな場所にいるんだろうか。呼ばれて開けた扉の向こうにはやけにほんわかする雰囲気を醸し出す男が1人。長くて結われた銀の髪が何故かキラキラ光っていて、目は紫。髪に光る粉でも振りかけてんのか…というかコスプレ?部屋にはポツンとこちら向きにデスクがあって、壁際には本がぎっしり詰まった本棚がいくつもある。書斎?にしては広くて真っ白な部屋だ。男は、こちら向きに座っていた。
「よく来たね〜。待ってたよ」
男はにこにこ笑っておいでおいでと手招きをした。待ってたよ、なんて言われても、私は何かこの人と約束した覚えはない。そもそもこんな美人の知り合いはいないし、まずここは本当に現実か?あの美人も本当に人間なのか?
「うん、僕は人間ではないかな〜」
と、まるで心を読まれているかと思うほどタイミングよく答えが返された。こいつ、神か。
「あ、それそれ」
「は?」
「人間が考える神ってやつに近いかな」
たっぷり3秒。
考えるには充分。
「あの、私、死にました?」
状況から判断した私の問いに、暫定神様はゆっくりと頷いた。
自称神様曰く。
「死んだら別世界に魂は廻すルールなんだ。この世界は君の次の転生先なのは間違いないんだけど、君は本来まだ死ぬはずではなかった。決められた死期より早く死ぬとさ、君みたいに記憶がリセットされないんだ。それってちょっと厄介なんだよね、あるはずのない異世界の知識を持ち込まれちゃうし。まあそれは地球の神の不手際ってやつだし、それなりに優遇してくれたからいいけどね。で、代わりに君のことは僕が対応することになったんだ」
よくもまあ口が動くなあ、と思いつつとりあえず頷く。考えたところで私の思考は彼筒抜け。それにそういう経緯はどうでもよくて、一番気になるのは。
「これからどうなるか、だよね?」
私が口を開く前に、わかってるよと言わんばかりの笑みで問うてきた神。やっぱり無駄にキラキラが舞っていて、うん、なんかイラッとする。
「あはは、人間にとっては好ましい顔にしたつもりなんだけどなあ。気に入らなかった?」
「いや、格好いいと思いますよ、一般的には」
日本人顔慣れした私には、なんていうか華美過ぎてお腹いっぱいって感じなだけで。私はこう、近所にいる気軽なにいちゃん的な人の方が親しみやすくて好ましいけれど。
「そっかそっか、君の好みはそんなかんじなんだね」
覚えておくね、とかなんとか言っていたが、果たして覚えてどうする。そんなことより。
「で、私はどうなるんですか」
「そうだね、話が逸れていたね。君にはこれからこの世界に転生してもらう。地球での記憶は消させてもらうけど、今回の不手際のこともあるから、転生するにあたって1つだけ希望を叶えてあげるよ」
1つ、か。とは言われても、これと言ってどうなりたいというものもない。まあ、強いていえば。
「じゃあ、私に幸せな人生をください」
ただいまと言える家族がいて、暮らせる分の稼ぎがあって、幸せな生活があればそれでいい。華やかな生活も、楽な生活も要らない。なんせ前世?私は家族大好き人間だったからな。これってある意味、どれだけお金があっても手に入れられないでしょ?
「え、んんん、あ、…うん」
しかし、神よ。なんだ今の間は。調子悪いのだろうか。うん、と頷いたからには転生後の私の人生を幸せにしてくれるんだろうな?ジィ、と神を見つめる。何故か顔が赤い。
「幸せな人生、ちゃんとくださるんですよね?」
何やら先程よりキラキラが大量発生してある神に、確認の念を込めて尋ねれば。
「…うん、僕も男なれば!もちろん任せてね、しっかり君に幸せな人生をプレゼントするよ」
出会ってから一番というくらいにキラキラを撒き散らした、いや、部屋全体が何故かキラキラになっている中、神はしっかりと約束してくれた。
その後。
異世界に転生した私の横には、何故かあの時の神がいることになる。
私が好ましいといった、近所の親しみやすい優しいにいちゃんというポジションで。ただしキラキラな顔はそのまま。
「ーーだって、幸せな人生をくださいなんて女の子に言われちゃったら惚れちゃうよ」
後で知ったが私が神に希望として言った「幸せな人生をください」は、この世界でプロポーズの言葉らしくて、それも女性から男性にするときのド定番。男性の死ぬまでに1度は言われたいセリフナンバー1なんだとか。それは神でも例外ではなく。
プロポーズされた神が人間になってまで私と添い遂げて幸せな人生をくれたのはまた別の機会に。




