98話・戦いは大気圏外で
この身体(幼女魔王)なら…
想像を絶する「速さ」で、陸空海…そして、宇宙の果てまで。
縦横無尽に、行き来する事ができた。
ゆえに…
「光速の次元」で活動する、アベルの動きなど。
今の悠人にとっては、鈍足な動きにしか見えなかった。
小さき外敵の「脅威」を感知。
電の走るフレームから、レーザーシステムを解き放つ。
一発、二発、三発…
ノドの地を死滅させた「レーザーシステム」が、次々と発射される。
今のアベルは、第三形態「バトルモード」であり。
永久機構によって、無尽蔵にレーザーを発射可能…そして。
これらのレーザーシステムは、ノドの地で発動したモノよりも。
威力も脅威も、各段に上位互換だった。
レーザーの一撃一撃が、山のように大きくて。
レーザー砲の嵐が、たった一人のアリンコ(幼女魔王)に襲いかかる。
アベルの力が…
時空も空間さえも、グニャグニャに捻じ曲げ。
大気圏そのものを変形させてしまう。
もはや、ここまでくると…
「生物の範囲」では、この殺戮マシーン(アベル)と、対等にすら立てないだろう。
悠人は、幼女の手で、全てのレーザーを受け止めた。
この脅威を、一発でも逃してはならない。
万が一、レーザーが「一発」でも…地上のどこかに当たったら。
確実に「ノドの地」と同じ、悲劇の末路を辿るからだ。
幼女の手とレーザーシステムが接触…
消えたのは後者だった。
すべてのレーザーが、欠片もない幻想と化し。
悠人の妨害によって、存在そのものが打ち消されてしまう。
魔王ハルバートの動きは馬鹿げており。
想像を絶する速度によって、幼女の体が「粒子化」。
物質的な概念さえも、置き去りにしてしまった。
幼女魔王が姿を消すと同時に。
レーザーの弾幕が、易々と無力化されて…
アベルの「脅威」は、魔王の力に薙ぎ払われた。
やがて、全てのレーザーは消滅。
音すらも残らず…大気圏全域が、沈黙に包まれてゆく。
だが、しかし…
この沈黙とは対照的に、アベルの視線は、荒々しく動いていた。
捉えられない…そう。
幾ら、視点を巡らせても、幼女魔王を視認する事ができなかった。




