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97話・空を越えて


 アベルの進化は凄まじく。

フェルゴールの映像にも、異常が発生した。

スクリーンの画面が、砂嵐によって歪む。


 そんな、アベルの「変形」を傍観しながら。

フェルゴールは、ワクワクと…その声を弾ませた。


「コイツが、第三形態か」


「たしか、まだ」


フェルゴールは、思い出すように言う。


「もう、一段階…あったよな?」


その問いかけは…カイルに向けられたモノだが。


 彼女は、一言も返事をせず。

小さく、コクリ…と頷いてみせた。




 正義の天使と、極悪の魔王の「一騎打ち」が幕を開けた。


 先に動いたのは、アベルの方。

背部のスラスターユニットが起動…

驚異的かつ、異次元の速度で急上昇していった。


 単純に「飛んだ」だけでも。

そのスピードは、物質の領域(範疇)を、容易く凌駕しており。

もはや、アベルの動作は「音速と光速」の次元を超越していた。


 一秒という秒単位すら、アベルにはついてゆけず。

光速移動や瞬間移動などの「超能力」さえも。

アベルの速度にとっては、鈍足で平凡な代物の過ぎない。


 殺戮ロボット(アベル)は、瞬く間に上空を通り越して。

空の上の世界…いわゆる「大気圏外」で飛行していた。


 超高度(大気圏)から、地上(ノドの地)を索敵。

モノアイを光らせ「小さき脅威」に狙いを定める。

 高度な索敵システムで、魔王の補則を試みるも…

幼女魔王はとっくに、ノドの地から姿を消していた。


 計算を度外視した展開に…

アベルのモノアイ(視線)が、慌ただしく動く。


 そして、ようやく相手(幼女魔王)を捕捉した時には既に。


魔王ハルバートは、アベルの鼻先にいた…




 この身体(幼女魔王)ならば…

容易く、当然の如く、呼吸をするように。

想像を凌駕した「速さ」で、陸空海…そして、宇宙の彼方まで。

いかなる領域でも、縦横無尽に動き回れた。


 ゆえに…

たかが「光速の次元」で飛ぶ、アベルの挙動など。

 今の悠人にとっては。

止まって見えるほど、鈍足な世界だった。






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