96話・化物には化物を
幼女の手で、レーザーを受け止めながら。
悠人は、アベルの「狂気」を感じ取った。
赤い光線から伝わる…チクチクとした痛み。
この身体(幼女魔王)で初めて「痛覚」を感じた。
ゆえに、悠人には分かった…
目の前にいる機械巨人は「死」そのものだと…
今の自分と同様「死の概念」である事を。
事の核心を見据えたとき。
この世界の行く末(未来)を、悠人は垣間見た。
赤く染まった空…すべての生命が肉塊と化し…狂気の地獄だけが広がってゆく。
このビジョン(映像)はきっと。
これから訪れる「未来」…逃れられぬ終着点。
と言っても…
悠人は異世界(東京)の住人ゆえに。
これ以上、厄介事に首を突っ込む必要はなかった。
だが、しかし。
見過ごすなんて、器用な事が…
このお人好し(鈴木悠人)に、出来る筈がなかった。
幼女魔王の妨害によって、アベルのレーザーが無力化。
紅の閃光が、バラバラに散乱する。
ノドの地を崩壊させた、最強の一撃を…悠々と「無力化」され。
アベルのモノアイ(視線)と幼女の瞳(視線)が、激しく交差してゆく。
鈴木悠人の戦場はいつも…工場のライン作業だった。
大切な人の為に、毎日を全力で戦い。
死に物狂いで、平凡な日常を守ろうとした。
彼の戦いはきっと…
大切な人…鈴木叶の為にあって。
彼女の笑顔を、妻の「願い」を守る為なら。
公園で出会った時のように「また」微笑んでくれるなら。
屑にだって、悪にだって…魔王にだってなれるのだ。
たたかう…僕は…戦う…
心の中で、力強く決心したとき。
叶が望んだ「最後の希望」が、悠人の胸の中で響いた。
「悠人が、みんなを、守ってくれる」
幼女魔王の眼光が尖り。
瞬間、豆粒のような体から、得体の知れぬ「闘志」が溢れてきた。
暗黒の覇気が、空間を歪めて。
赤い空が、漆黒の霧に覆われてゆく。
アベルは、魔王の力を探知すると。
連なる機械音ともに、体を変形させてゆく。
「バトルモード・キドウ」
胸部の球体が収納されて。
分厚いフレーム(装甲)によって、防御が強化される。
白銀の装甲から、赤と青の「電」が発生してゆき。
機械巨人の体が、混合した雷に包まれた。
異次元の放電によって…血みどろの大地が歪み。
アベルの戦闘力が、桁違いに上昇してゆく。




