95話・勝率は0%
フェルゴールの映像にて。
黒い髪の毛、白の道着、ちっこい背中が…
間違いなく、ハッキリと映し出された。
レーザーの衝撃によって、黒髪が揺れ。
豆粒のような幼女を見て…
一早く反応したのは、ミュウであった。
「ハルトッ!」
心優しき魔王の名を叫ぶ。
そう…彼女の反応通り。
突然、ノドの地に降臨し、アベルの狂気から、ドラゴ(勇者)を救ったのは…
極悪魔王「ハルバート・シュバルツハイツ」だった。
カイルは、唇を噛みしめながら。
「また」この世界に転生した…愚か者に、苛立ちを感じた。
「悠人さん…まったく…」
「どうしようもない、鳥頭ですね」
そう愚痴る彼女の横顔は…
どこか寂し気で、悲しみさえも漂わせていた。
文句を垂れながらも…
カイルは、予想していたのかもしれない。
力もない、知恵もなく…ただの「優しさ」しかない。
『鈴木悠人』という人間が…
日本、東京という…遠い世界の果てから。
異世界グリモワーツを「助け」に来る事を…
「愚か者の末路は、絶望だけですよ」
ミュウが、自分が「おこがましい」と自覚している。
だが、それでも…
もう彼女には、悠人に託すしか選択肢がなかった。
「お願いっっっ!」
この世界の「命」を…
この世界の「明日」を…
そして…
「みんなを、守って!」
魔王城の屋上から…自らの望みを、鈴木悠人に託した。
フェルゴールは、モニター(映像)を鑑賞しながら。
とある疑問を、カイルに投げかけた。
「今は、第二形態だろう?」
「魔王さまに、勝機はあるのか?」
彼の言う『第二形態』と言うのは…
アベル…SSシステムの「変形機構」を意味しており。
つまり、それは。
変形機能(変身能力)によって、アベルが姿を変え。
更なる脅威へと、進化するという構造だった。
「0%ですね…」
「悠人さんに、勝算はありません」




