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94話・魔王の背中


 そして…再び。


アベルの胸部ユニットにて「紅の光り」が集まってゆく。


「フュージョンコア・キドウ」


それはきっと…

二発目のレーザーシステムの予兆。


「一発目」は、上空に向けて発射された。

だが、今回は違う…レーザーの照準は、ドラゴのみに向けられていた。


 ドラゴは「死」を覚悟し。

恐怖と絶望により、生ぬるい汗が、滝のように出てくる。


 おぞましいのは、アベルの「死そのもの」であること。

ソレは、未知なる混沌にて渦巻き。

まはや「生物」の価値観では、理解すらも及ばぬこと。


 もう、ドラゴには…

心の中で「謝る」ことしか出来なかった。


 大切な人を。

幼馴染のミュウを救えず、自分自身を恨み悔やんだ。


 


 生命殺戮機構…アベルの裁きが下される。


真紅の閃光が、ドラゴの視界を覆いつくした。


 ………おわった………


惨めに断念して、ドラゴは「死」を覚悟した。


 ………が、しかし………


 ………このとき………


小さな「人影」が一つ…


ドラゴの前に、立っていた…


 ソレ(人影)は、とても小さな「子供」であり。

幼女とも呼べる、ちっこい姿をしていた。


 幼女の影とアベルのレーザーが衝突。


レーザーシステムが爆散し、紅の閃光が四方八方に飛び散った。


 レーザーが拡散してゆき。

ドラゴの視界が、少しだけマシになる。


 そして、このとき「見えた」のは…


 鮮やかに揺れる黒髪と…黒のドレスに白の道着だった。


 ドラゴは知っている…この人影の正体を。


 その乱入者の正体こそ。

この世界の脅威であり「極悪非道の権化」。

勇者が憎むべき、憎悪の対象。


「魔王…」


 凛と揺れる黒髪と、ちっこい幼女の背中を見て。


ドラゴは「魔王」の名を呟いた。


 魔王ハルバートは、幼女の手を突き出して。


 そのミジンコみたいな体で…

たった一人、アベルのレーザー光線を受け止めていた。











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