87話・レーザーシステム
アベルの脚部アームに、ウェインの肉片がへばりつく。
彼はずっと…聖天使を崇拝してきたのに。
その信じていた存在によって、無残に殺されてしまった。
ウェインを踏み潰した後…
アベルは、別の所へと視線を移した。
モノアイが捉えたのは、ちっぽけな勇者ドラゴであり。
ドラゴとアベル…双方の視線が重なる。
生気の存在しない、機械の視線。
こんな相手を前に、ドラゴは恐怖し震え上がった。
黒騎士たちは、アベルを監視しており。
頭であるガイアが、すぐさま「命令」を下した。
その命令は「恐れ」による選択だった。
黒騎士軍による、総攻撃が始まる。
エネルギ弾の猛攻が、ノドの地を揺るがせて。
妖精に幻獣、木人や…豊かな緑が…争いの嵐に巻き込まれてゆく。
一千万、十千万、百千万。
弾幕の桁は、爆発的に増加してゆき。
その標的は「アベル」のみに向けられていた。
あまりにも「やりすぎ」な総攻撃…
ノドの地どころか、世界そのものが、消し炭になってしまうほどのスケールだった。
ドラゴは、この危機に反応し。
背中の盾を抜き、我が身を無我夢中で守った。
そして…黒騎士の総攻撃を前に。
機械巨人が、とある変化を起こす。
脚部ユニットが変形…
そこから、紅の球体が姿を現した。
その「紅の球体」は、美しく鮮明に輝き。
まるで、死の恒星のようであった。
あかい…赤い…鮮血の赤。
そして…
「フュージョン・コア…起動」
ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
紅の球体から「赤い光線」が放たれる。
この光線は「レーザーシステム」と呼ばれる代物で。
異世界グリモワーツには存在しない…オーパーツそのものだ。
アベルのレーザー光線が、真上にへと放たれて。
紅の閃光が、ノドの地の夜空を歪めた。
グニャ…リ…
その「たった一撃」は…
ノドの地の空を、いや…世界中の空を揺るがす程で。
異次元の力によって、夜空そのものが、粘土のように練り動く。




