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74話・真夜中の公園


 夜中の静寂が、工事中の橋を包み。

橋の下に広がる暗闇が、負け犬(悠人)を誘惑した。

歪んだ魅力(闇)に惹きつけられ…悠人の体が、橋の下へと吸い寄せられる。


その時だった…


「飛ばないで…下さいね?」


間一髪…

聞き覚えのある「敬語」が、悠人の背中を呼び止めた。


悠人は知っている…この声を。


「カイル…」


振り返ると、そこには…サラサラと揺れる緑髪。

そして、幻想的な紅の瞳があった。


 異世界でのカイルの姿は、白の軍服礼装だったけど。

今の恰好は、ゲームのロゴのシャツにジーパンだった…

どうやら、彼女は…現実世界「東京」だと、この服装らしい。


「今度こそ、そこから落ちたなら」


「生物には、人間には、戻れません」



「悠人さん…貴方は、幼女じゃなく「凡人』であるべきです」



 カイルと合流した後…

橋から離れて、ちょっとした「寄り道」をしてみた。


ふと立ち寄った場所は、悠人にとっての「思い出の場所」。


 初めて叶と出会った…小さな公園。

一本の木が佇む…ちんまりとした公園。


 どうしてここ(公園)に、彼女を連れてきたのか?

自分にだって、良く分からないけど。


「この木…子供の人気者なんだ」


 あまり考える事をせず…

ただただ…温かい宝物(記憶)に触れてみた。


 妻が愛した「子供の笑顔」。

 

 妻が愛した「この公園」。


 また、カイルも静かに、悠人の話(思い出)を聞いてくれて…

今の彼女には、悪魔としての「冷たさ」は欠片もなく。

とても柔らかく、平凡な話に頷いてくれた。


「うん、うん…そうですか…」


 彼女の第一印象は…

冷酷で冷徹な「依頼人(悪魔)」という形だったけど。

 もしかすると、今のカイルの姿(表情)が…

彼女の「素顔」なのかもしれない。



 悠人は、一本の木へ近づくと。

ゴソゴソ…と、とある「探し物」を求めた。

 それは、ほんの少し前に。

妻の叶が、無くしてしまった「大切な道具」だった。


「叶の筆…この公園で、無くしちゃってさ」


 素手で地面を漁りながら。

背後にいるカイルへ、独りよがりの話をする。


 その話は、とっても退屈で平凡だけれど…

彼女カイルは、口を挟む事なく、頷いて共感してくれた。







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