72話・希望の天使
黒騎士の襲撃によって…
グリモワーツの都市「はじまりの街」は痛手を負っていた。
建物の殆どが、瓦礫と化し。
街の住人は、ぼろ雑巾のように疲労していた。
我が子を求め、彷徨う母親。
母親を求め、彷徨う子供。
人々の嘆きが、腐敗した街に浸透してゆく。
邪悪なる魔王によって、崩されてしまった街。
アポカリファ(魔王の領域)から帰還した勇者は…
人々の嘆きを背負いながら「敗北」の意味を受け止めた。
と言っても…
悔しがっているのは…ドラゴだけで。
ウェインの方は、清々しく余裕に満ちた表情だった。
天使の勇者が、傷ついた子供へ、救済の手を差し伸べる。
「さあ少年…立ちたまえ。アベル様のために」
余裕たっぷりな勇者の姿を見て。
人々は「希望の兆し」を取り戻した。
注目を集めて得意になったのか?
ウェインは誇らしげに、お得意の演説を始めた。
「アベルは、正真正銘!正義の味方だ!」
「ゆえに、我々は『救われる』」
ウェインが高々と、聖天使の名を轟かせ…
街中から、人々の拍手喝采が湧き上がった。
「我々勇者は、ノドの地へ向かう」
さあ、皆よ!
ウェインの一言一言が、純粋な人々を焚きつけてゆく。
「我々に、力を分けてくれ!」
ウェインの演説が終わり…
二人の勇者は「はじまりの街」を発った。
次の目的地は『ノドの地』
ノドの地とは?
グリモワーツに存在する「生命の大地」であり。
この地は、自然の神秘に溢れている。
緑の地を、あらゆる幻獣が住処とし…
争いなどとは「無縁」の自然の理想郷そのものだろう。
そんなノドの地に…数世紀も前…
とおい…遠い空のむこうから、一つの天使が「降りて」きた。
この天使こそ、人類が讃える「聖天使アベル」だった…
人類が誕生し、繁栄するよりも…
遥か昔に、グリモワーツにやって来た天使。
聖天使アベルは、ノドの地に降りて直ぐ「永き眠り」にその身を委ね。
今も…ノドの地のどこかにいるらしい。




