69話・負け犬
勇者と魔王の最終決戦が終わり…
黒騎士たちは、それぞれ解散し始めた。
頭であるガイアも含め、皆が口を揃えて愚痴を零す。
その野次馬の対象は、敵である勇者ではなく…
仕えるべき主「魔王」への暴言だった。
「はずれ、ハズレ!地雷じゃん」
「使えねえ、ロリだなあ!」
「チッ!クソ幼女がよ…魔王ごっこしてんじゃねえ」
この場にいる者たち(黒騎士)には。悠人とドラゴの戦いは「見えなかった」。
それは当然、二人の戦闘は、光速の次元で行われており。
見てから理解するなど、生物では不可能なのだ。
ゆえに、黒騎士たちの目には…
幼女魔王が敵の小娘を庇った「だけ」にしか映らなかった。
たった一人、罵詈雑言を受ける幼女魔王(悠人)。
しかし、ミュウだけは、悠人の「やさしさ」を理解していた。
彼女は、惨めな幼女を気に掛ける。
「ごめんね」
そう謝られても…悠人には、どうしたらいいのか?分からなくて。
「うっ、うん…」
モゴモゴ…と返事をするので精一杯だった。
この決戦によって、一つの事実が明確となった。
ソレは…勇者を「殺せない」という事実。
つまり、自分には、鈴木悠人には…妻の叶を「救えない」のである。
冷たい真実を自覚した途端、心に冷たい風が通り抜けた。
勇者を撃退し、魔王としては、戦いに勝利したのかもしれない。
だが…勝ち負けなど、どうでも良い。
結局「巨大な力」を手に入れても…
チート幼女として転生しても…
鈴木悠人は平凡で、大切な人を救えなかった。
結果を受け入れてしまえば、後に残るのは哀れな虚無感のみ。
極悪の魔王ハルバートは、空虚な視線のまま。
トボトボと…立ち去ってゆく。
その背中は、魔王と言うより、負け犬のソレだった。
そんな悠人を、ミュウは静かに見送った。
白い手を、力強く握りしめて。
自分を守ってくれた「ぶきっちょな人」へ…静かに、優しく…感謝を捧げる。
「ありがとう」
「ハルト…」
今回で二章が終わります。
次回から「三章」に突入!どうぞ、よろしく。




