68話・決闘の後は
血に飢えた黒騎士たちが、怒涛の勢いで雪崩れ込み。
獰猛なる刃で、隙だらけの勇者に襲いかかった。
肝心の切り札は繊維損失しており。
このザマでは、勇者側に勝機はなかった。
窮地に立たされて…ようやく、一人の男が、重い腰を上げた。
その者は、天使の勇者ウェイン。
最高の鎧を纏っているにも関わらず…自分は一切戦わず「聖天使アベル」に縋るだけの傍観者。
ただし…
こういう種の人間は「逃げる」のだけは一流で。
ドラゴの敗北を察した途端、ウェインが真っ先に行動した。
ウェインは、ドラゴを引きずるように連れ。
敵軍と真逆の方向へと駆け出した。
そして、逃走する一時…
彼の視界に、ミュウの姿が入ったが。
この男にとっては、ミュウの安否など取るに足らず。
カスほども迷わずに、同志である彼女を「見捨てた」。
勇者の逃走ルートは「合鉄の門」にあり。
地獄から人間界に逃げられる。
ウェインは、ドラゴを引きずりながら…唯一の逃げ道(合鉄の門)目指して走る。
当然、獲物を逃がすまいと。
黒騎士たちが、押し寄せてくるが…
勇者たちと脱出口(合鉄の門)は、そう離れていない。
ゆえに、勇者の脚なら、逃げ切る事は不可能じゃなかった。
「ガキども!逃げんじゃねえ!」
黒騎士たちは荒れながら、獲物を追い続けるが。
それでも、ウェインの方が一足早い。
開放された扉の前に立ち…天使の勇者が、高々と台詞を吐いた。
「覚えておけ!屑ども!ロリ魔王!」
ずっと傍観していた癖に、誇らしげに声を上げる。
「正義の聖天使アベルが…貴様らを踏み潰すっ!」
その捨て台詞を最後に。
二人の勇者は、合鉄の門を潜り抜け、邪悪なる魔王の領域から敗走した。
仲間に置き去りにされ、ミュウは独りとなった。
だが、それでも…
大切な人の…ドラゴの無事に、ひとまず安心した。
そして、勇者に逃げられた後。
合鉄の門の扉が、ゆっくりと閉じられてゆき。
合鉄の門は、頑丈に封印されてしまった
もうこれ以上…黒騎士たちが、勇者を追う事はできない。




