67話・削がれてゆく正義漢
正義の一手が、聖剣ヨハネが…邪悪なる魔王を貫いてゆく。
善と悪の決闘は、一瞬で幕を閉じ。
形的には…勇者の勝利で終わった。
その筈なのに。
勝者であるドラゴは、絶望に打ちひしがれた。
ある意味…彼の方が、惨めな負け犬のようだ。
聖剣を握る手が震える…
幼馴染を…ミュウを救うのが、本命だったのに。
魔王を倒すのに、意識も視界も奪われてしまい。
自ら、大切な人を、危険に追い込んでしまった…
大きな後悔が、ドラゴ一人に圧しかかり。
勇気の勇者は、空虚の眼差しで唖然としていた。
一方、破れた「魔王ハルバート」は…
その身を聖剣に貫かれても、幼き表情を微動だにせず。
小さい胸が、史上最強の聖剣に貫かれても。
やはり…
「痛く」も「痒く」もなくて。
一滴の血すら、流すことは無かった。
悠人は、なんとなく。
自分が「刺された」と、自覚しながら…
幼女(自分)の胸から、背中へと貫いた「黄金の刃」に意識を傾けた。
そして、何も考えずに。
ちっこい手で、聖剣ヨハネを引き抜こうをする。
幼女の手が、黄金の聖剣を、ガッチリ…と掴み。
正義(黄金)の光りが、魔王の手に反発を起こした。
ジュ…ジッ!ジッ!ジジジ…
この輝きは、黒騎士を消し炭にしてしまう威力を持ち。
そんな破壊力を持つ、エネルギー光が…悠人(幼女魔王)の体内で暴発した。
だとしても…
悠人が感じるのは、チクチクとしたむず痒さだけで。
むしろ、黄金の閃光が、幼女魔王に吸収されてしまう。
悠人は平然としながら、聖剣ヨハネを引き抜く。
ズル…ズルズルズル…
聖剣ヨハネが、簡単に引き抜かれ。
こうもアッサリ…史上最強の切り札が、無力化されてしまう。
勇者ドラゴは、聖剣を握る手を震わせた。
怒りに任せ…大切な人を「危険に晒した」自分に恐怖した。
「ミュウ…」
今の彼は戦意喪失しており。
もはや、棒立ちのカカシ同然だった。
当然、下衆共(黒騎士たち)は、この隙を見逃さない。
「動きが止まったゼ!」
「今だ!かかれや!」
ついさっきまで、呆けていた黒騎士たちが。
隙だらけの勇者を見て、汚れた闘志を震わせる。




