61話・ドラゴか?悠人か?
魔王の私室から、幼女魔王(悠人)が発ち。
それから、ほんの少しだけ時間が過ぎた。
今、この部屋(魔王室)には、ミュウとカイルだけが残っており。
シーンとした静寂のみが、沈黙を連ねていった。
チリチリと燃える暖炉を見つめながら…
ミュウは密かに、誰かの「無事」を祈っていた。
幼馴染の「ドラゴ」か?
それとも…
寂しい目をした「悠人」か?
そう…彼女自身。
どちらを心配しているのか?分からないのだ。
だだ一つ確実なのは。
ミュウは、敵味方とか関係なく…
二人(ドラゴと悠人)の事を、平等に想っているという事。
そんな彼女の背中を。
カイルは無言のまま、傍観していた。
紅の瞳をナイフのように尖らせ…冷たいその視線は、不可解な謎が多い。
慈愛の勇者は、軍服の少女へ問う。
「大丈夫、かな?」
その台詞は「誰か」の身を心配した言葉であり。
「は?どっちが、ですか?」
ドラゴと悠人…
ミュウは一体、どちらを気にかけているのか?
そんな「迷い」を察したカイルは、質問を質問で返した。
「………わからない」
複雑な感情に、挟まれてしまい。
そう安々と「答え」が、見つかりそうもなかった。
だとしても…
こうやってジッと、囚われたままじゃいけない。
ゆえに、自らの「迷い」を正す為。
囚われの勇者は、この部屋から発つ事にした。
当然、ミュウが脱走するのに、カイルは気づいているが…
彼女は、勇者の逃走を黙認。
逃げ去るミュウの背中を、紅の瞳が静かに見送った。




