55話・紫の太陽
そして…ガイアは「本物の力」を開放した。
紫色のエネルギー波が、失楽天の空にて集結。
パープル(紫色)の球体が、頭上を覆いつくしてゆく。
今回のエネルギー弾は。
はじまりの街で発動したモノと、スケールが違く。
規模も脅威も、遥かに桁違いだった。
エネルギー弾の姿こそ、まさしく…
紫に輝く「太陽」そのものであり。
太陽を背に、漆黒騎士は、勝利を宣言した。
「終わりだ!勇者ども!」
ここまで、追い込まれても。
ドラゴに「引き下がる」という思考回路はなく。
一つの盾を構え…巨大なる脅威と、真っ向から対峙する。
「ミュウを…かえせよ!かえせ!」
そう…
彼の脳裏には、幼馴染の事しかなく。
戦う目的そのものが。
黒騎士との決戦よりも…大切な人を、取り返す事に代わっていた。
今のドラゴは、危なっかしく。
その様子を見て、ヨハネは、次の対策を急いだ。
手にある「短剣」を握りしめ、額に流れる冷や汗を拭う。
ミュウの名が上がり、呆れるガイア。
「おいおい」
相手の態度に、ドラゴはつい反応してしまう。
「何が、可笑しい?」
「小娘が『誰』に捕まったのか…お前を分かってるだろ?」
慈愛の勇者ミュウを、誘拐したのは…魔王シュバルツ。
この世界における『極悪憎悪の権化』。
そんな脅威に、大切な人を奪われてしまった。
それはつまり…ミュウの悲惨な運命を意味している。
「クソッタレの幼女魔王」
ガイアは高々と、魔王の名を宣言する。
「ハルバートってよ!」
だが、その声はどこか。
仕えるべき主(魔王)を、馬鹿にしていた。
更には、魔王の事を「どうでも良い」と言い捨てる。
「あんな幼女どうでもいい。この俺こそが、史上最強だ」
自らを「史上最強」と…ガイアは語りながら。
勇者を潰す為に、頭上にある『太陽』を操った。
紫の太陽が、ジワジワと押し寄せてくる。
ドラゴが怒りによって覚醒していても。
結局のところ、両者の間には、決定的な力の差があって。
太陽の重力によって。
勇者たちの体は、地面に縛りつけられてしまう。
空間全域が、ガイアの力に支配され。
幾ら抵抗しようとしても、ドラゴは指一本すら動かせなかった。




