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49話・魔王の私室


 やがて、虹色の閃光は遠のき。

遠い夏の思い出は、悠人の意識から離れていった。


 鈴木悠人の自我が、次第に取り戻されてゆき。

点滅する視界にて…

次の時には、異なる「空間」が視界に広がった。


 ハッキリと意識が戻り。

悠人は、自分の体を再確認してみる。


 すると、そこには…

ちっこい「黒髪幼女」が、椅子に座っていた。


 その手、その足、その体…


 体の全てが「幼女」と、変わり果てており。

悠人の頭にて、サラリ…と、長い黒髪が揺れていた。

どうやら「また」この異世界に、転生してしまったらしい。




 まず、最初に気づいたのは。

チリチリと、穏やかに燃える暖炉の音。

そして、暖炉の傍らには、小包が一つ置かれていた。


 暗黙の一室に、大きな縦長のテーブル。

この部屋は確か…「魔王の私室」と、呼ばれていた記憶がある。


 カイルの話によると、悠人は「魔王」なので。

一応、この部屋は、自身の所有物という事になる。


 前回、このテーブルの上には、盛沢山の料理があった。

だが、それらの料理たちは、全て片付けられており。

 その代わりに…

ドレスやリボン、下着やアクセサリーが山積みになっていた。

これらの衣装類は、すべてフリフリしており…すべてが「女の子用」だった。


 フリフリした…可愛い服を前に。

悠人は、椅子に座ったまま、キョトンと呆けてしまう。


 すると、このとき…

優しい手つきが、悠人の黒髪を撫でた。

シュ、シュ、シュ…それは優しい、穏やかなブラシの音。

どうやら誰かが、幼女(悠人)の黒髪を手入れしているらしい。


 今の姿(黒髪幼女)なら、振り返らずとも。

後ろに誰がいるのか?勘だけで、察する事ができた。


 その人は、慈愛の勇者…ミュウ。

妻の為に、殺さねばならぬ存在(勇者)。


 ミュウは、優しくブラシを走らせながら。


「おきた?」


幼女魔王に、優しく囁いてあげた。

その穏やかな口調に、悠人は、どう応えればいいのか?分からず。


「えっ…あ…あ…」


 器用な対応が出来ず…モジモジするだけだった。

それは当然だ…「殺すべき相手」に、上手く話せるわけがない。


 挙動不審な幼女と対照的に、ミュウは落ち着いており。

幼女の髪を見て、その瞳を緩ませた。


「きれいな黒髪…」


悠人の黒髪を見守りながら…彼女ミュウは独り言を零した。


「わたしね本当は、黒髪が良かったの」


暖炉の火が、沈黙の間を温めてゆく。


「でも、全然ちがうから」


そして、寂しそうに、ピンク髪のポニーテイルが揺れた。


「この『髪型』にしたんだぁ」


エヘヘと笑う、その姿は少し寂しく。

とても、とっても、柔らかかった。


「あんまし…可愛くないけどね」



 この前は、彼女ミュウを、怖がらせてしまった。

きっと「極悪の魔王」として、悠人の事を憎んでいる筈なのに。

その手つきも、その口調も、まるで友人と接しているみたいだった。


 だから悠人も…ついつい、この一時に安心してしまう。


「そっか…」


自然に出てきた、甲高い幼女の声。


「うん」


たった一言、ミュウの返事が、悠人の不安を汲み取ってくれる。



 すると…この平穏にて。


「ん~ん~?幼女の下着、揃ってませんねえ~」


聞き覚えのある口調(敬語)、が割り込んできた。


「幼女のパンツとか、持ってるの変態くらいでしょ?」


幼女パンツ、幼女パンツ…と独り言を繰り返しながら。。

緑髪の悪魔は、テーブルの上にある衣装の山を漁っていた。






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