46話・異世界転生の解説書
まずは、異世界に行く手段…
「異世界に転生するには『ゲート』が、必要不可欠でしてね」
ゲートという、聞き慣れない単語に。
凡人(悠人)は、やはり困惑してしまう。
「げーと?」
混乱している彼に、カイルは余裕たっぷりに説明する。
「ふふっ、貴方は一度、ゲートと接触してるんですよ?」
確かに、そう言われてみれば。
過去に、それらしき工程(現象)があった。
「あの橋かい?」
真っ先に浮かんだのは「工事中の橋」。
悠人とカイルが、落ちていった橋。
あの橋から、落ちた後。
妙な空間へ意識が誘われて、異世界グリモワーツに転生した。
しかも、黒髪の幼女として…
平凡な推理かもしれないけど。
過去に起きた事を、手探りで推測してゆく。
そんな凡人を、緑髪の悪魔が嘲笑った。
「せいか~い、パチパチ~」
いい加減な拍手をしてから。
『工事中の橋』について、更に情報を付け足す。
「たしかに、お猿さんのおっしゃる通り」
「あの橋も…ゲートの一つです」
「ですが」と、彼女は念入りに、言葉を重ねた。
「あそこにはもう『二度と』行かないこと」
「いいですね?!」
白い手を、ビッと指して、冗談交じりに念を押すも。
紅の瞳は尖っていて、真剣そのものだった。
一体、どうして?
あの橋から、転生してはならないのか?
疑問に思う点はあるけれど…知るべき情報は別にある。
「じゃあ、どこから。異世界に行くのさ?」
ゲート(入口)が、あの橋じゃないのなら。
もっと別の所に、他のゲートがあるのかもしれない。
頭を必死に回転させる凡人を…
悪魔は、ニヤニヤしながら観察している。
そして、クイクイっと、床を指しながら一言。
「ここ、ですよ」
「え?!」
単純すぎる回答に、口から素っ頓狂な声が出た。
「だから、この『物置部屋』です」
こんな薄汚れた部屋が、異世界への入口とか…
簡単に言われても、良く分からないけど。
「今回は、説明の為。多少の手違いがありますが」
「次回からは、扉を開けばOKです」
つまり…
物置部屋の「扉を開く」事で、異世界グリモワーツに行けるらしい。
また、男の体から「黒髪幼女」に転生するのも。
避ける事のできない…必須の条件のようだ。
そして、次の疑問が肝心。
異世界から、現実世界(東京)に返る方法。
悠人には、大切な人と居場所がある。
ゆえに、こちら(帰還する手段)の方が肝心だろう。
こちらの手段も、彼女から説明してくれた。
「もし、東京に帰りたくなったら…そのときは」
「私に一言、言ってください」
ただ「帰る」と…
クライアント(依頼主)である彼女に、伝えるだけという。
至ってシンプルな工程だった。
ここまで単純(簡単)だと。
賢い人間なら、多少なりとも疑問を抱くはず。
だが、この男は鳥頭。
ゆえに、疑いもせず、素直に頷いた。
「わかった…君を信じるよ」
理屈なんてモノはなく…
まっすぐ純粋な視線で、紅の瞳を見つめた。
悠人にじっと見つめられ。
悪魔の方が、動揺して下がってしまう。
「?ッ……………」
いつもの冗談が、ピタリと止まり。
そして、何故だか?彼女の頬は紅潮していた。




