41話・11月18日 物置部屋
やがて、虹色の閃光が消え去り。
次第に、悠人の意識が戻ってきた。
霞んだ視界が、徐々にハッキリとなり。
「…?……」
意識が戻ると同時に、悠人の口が開かれた。
「ここ…は?」
その声は当然、聴き慣れた自分の声(男の声)で…
小さく甲高い、幼女のモノ(声)なんかじゃない。
朦朧とした意識のまま、辺りを慎重に見渡す。
すると、最初に目に付いたのは。
段ボール箱や小道具、そして物置棚の列だった。
詰まれた段ボールの山、そして。
沢山の医療用品が、物置棚に置かれていた。
一旦、部屋全体を見渡してから。
用心深く慎重に、自分の体を確認してみる。
体はいつも通り、平凡な男の体系。
普通の手足に、普通の顔…
飽きるほど見慣れた、いつもの姿があった。
「…もどった?…いや」
幼女となって見た「異世界グリモワーツ」。
あの不思議な体験を、平凡なこの男は…
「変な夢だったな」
ただの夢と…考えもせず割り切った。
夢(異世界)の事はさておき、今の現状が大切だ。
ここは、どこかの「物置部屋」らしく。
東京のどこかで、間違いないだろう。
しかし「物置部屋」だけじゃ、正確な場所は分からない。
だから、とりあえず…この部屋から出る事にする。
そして、いざ扉(出口)の前に立ってみると。
どこかで見たような、既視感を覚えた。
ドアノブに触れてみると、いともアッサリ扉が開かれた。
開放された、その先には…
鈴木悠人が「嫌なほど」見慣れた廊下(景色)があった。
そう…ここは「病院」。
妻の叶が囚われた…東京の隅っこにある牢獄。
病院の廊下に人気はなく。
彼(悠人)は一人、突っ立ったまま情報を整理した。
なぜだか知らないが…
病院の「物置部屋」で意識を失っていて、そして…
まか不思議な夢を見ていた…
その夢は「四人の勇者を殺して、妻を救う」という、残酷な救済の夢だった。
黒髪幼女とか…極悪魔王とか…カイルとの契約とか…
色々な情報が、頭の中で廻ったけど。
平凡なこの男に、推理など出来る筈もなく。
真っ先に、頭に浮かんだのは「叶の事」だけだった。
この病院に囚われた、大切な人。
これから、どうすればいいのか?
そんな事、分かる筈もないが…
「妻を…叶を救ってみせる」その思いを強く抱いて。
力のない、無力な凡人(悠人)は、妻の病室へ足を運ぶ。
今日は、11月18日…叶の命日まで、あと二日。




