37話・アポカリファ
極悪魔王の領域『アポカリファ』
この暗黒地では、灼熱の炎が、天をも焼き尽くし。
漆黒に染まりし大地の狭間にて、真紅の溶岩が流れてゆく。
灼熱の温度が、空気そのものを歪め。
煮えたぎる地の上で、黒騎士たちがせっせと労働に励んでいた。
そんな地獄の地平線にて…
一際「悪質な塔」が聳え立っていた。
この塔こそが。
極悪非道の魔王『シュバルツ・ハイツ』の領域(城)であった。
アポカリファの上空では、業火や灰が、雲や雨の役割を担い。
もはや、一般的な生物が、立ち入れる場所ではなかった。
と言っても、この地獄は、黒騎士にとっての庭。
ゆえに、フェルゴールは、二つの荷物(悠人とミュウ)を抱えながら、悠々と地獄の空を飛行する。
次第に、塔に接近してゆき、魔王城の風貌が明らかになった。
魔王城の全貌は、醜く、怖しく、そしてグロテスク…
像の牙のような、刺々しい建造物が、幾つも建ち並び。
それらの建物は全て、天にまで達していた。
そして、中心にて一つ…古びた「塔」が存在していた。
巨大な牙(建物)の脇を通り抜けて。
フェルゴールは真っ直ぐ、古びた塔を目指した。
この塔には、屋上が設けられており。
そこ(屋上)へ、フェルゴールは、ゆっくりと着陸する。
そして、丁寧に紳士的に…
金属の肩から、悠人とミュウを降ろした。
屋上から、塔の中へ入ると。
暗闇の空間が、三人を待ち受けていた。
廊下は狭く、異様な空気が立ち込め。
床のカーペットは古びており、歩く度に埃が舞う。
また、廊下の両端には、物置棚が設けられ…
人の頭蓋骨が、コレクションのように並んでいた。
床には所々、鼠や蛇などの「生物の死骸」が散乱していて。
歩く度に運悪く、それらの死骸を踏んでしまう。
悪質な廊下を…ロボット騎士を先頭に、三人は進みながら。
悠人(悠人)は、隣で歩くミュウの事を心配した。
こんな所、悠人は一度も、訪れた事が無かった。
だけど、それ以上に…こんな少女を「誘拐」したという罪悪感が強い。
ミュウと歩調を合わせて、チラリと横顔を覗いてみる。
やはり、その表情は、芳しくなくて。
怯えて俯く彼女の姿に…息苦しさを覚えた。
今の自分は魔王…
それは、勇者である彼女と、敵同士という事実。
カイルとの契約により。
極悪魔王として、ミュウを殺さねばならない。
しかし、そう簡単に言っても、お人好しの本能が妨げになり。
女の子に、乱暴するなんて…悠人には、想像すら出来なかった。
これから、どうすればいいのか?
薄っぺらな思考で、ブツブツと考えながら、幼女魔王も俯いてしまう。
すると、ようやく…
落ち込んだ二人(悠人とミュウ)に、フェルゴールが「着いた」と声を掛けた。
「ようこそ」
「ここが、貴方様の…極悪魔王の…お部屋でございます」
そこには、模様の記された扉。
その模様は、ロゴやエンブレムの類に近く。
エンブレムに記されているキャラクターは、影や亡霊を連想させる「悪魔」に見えた。
ともかく、この扉の奥が『魔王の私室』になるらしい。




