36話・東京から離れた異世界
ガイアは怒り、体を震わせていた。
そんな彼を鎮める為、フェルゴールが動く。
機械のアームが、ミュウの体を抱き上げて。
流れ作業のように、彼女を肩に担いだ。
突然、ロボット騎士に、持ち上げられてしまい。
「?!」
ミュウは驚き、言葉に詰まってしまう。
慈愛の勇者を捕えて、フェルゴールは、ガイアの説得をする。
「人質だ…これなら、文句あるまい?」
そう、勇者を人質にすれば。
あとは、こちら(魔王軍)の思うつぼ、確実に「一人」は勇者を始末できる。
まあ一応、妥協点としては、最低ライン…
「………」
ガイアは苛立ちながらも、大人しく引き下がった。
悠人としては、彼女を誘拐するのは嫌だった。
だけれど…「今」この娘を殺すよりは、数倍マシに思えてしまい。
ロボット騎士の指示に、大人しく従った。
ロボットの肩で、ジタバタするミュウ。
そんな彼女を抱えながら、フェルゴールが合図を出す。
「さあ、魔王の地へ」
その合図と共に、黒騎士たちは、次々と飛び発ち。
一騎、また一騎と、彼ら(黒騎士軍)は、姿を消してゆく。
頭であるガイアも、闇夜の上空へと還って。
後は、ミュウと悠人、フェルゴールが残された。
ロボット騎士は、電子音(音)を弾ませながら、幼女魔王に期待を寄せた。
「さあ…極悪非道、悪の魔王さま」
「ぜひ、その脅威を、お見せください」
アームの手で、夜空を指す…
どうやら、幼女魔王に「飛べ」と、言いたいらしい。
だが、悠人には「飛ぶ」なんて…理解不能だった。
「ムリだよ。僕には…無理だ」
幼女魔王は弱気で、ずっとモジモジしているが。
フェルゴールは、気にする様子もなく。
ミュウと同様…悠人も、片方の肩に乗せた。
そして、二人(悠人とミュウ)を抱えたまま。
背部のユニット(スラスター装置)起動させる。
噴射装置の大出力によって、一気に急上昇…
「はじまりの街」が、一瞬で遠のいてゆく。
幼女の瞳から、世界を見渡し…悠人は息を飲み込んだ。
ヨーロッパ風の街並み…
色彩の豊かな森…
この世界グリモワーツは。
叶が愛した「ファンタジーの光景」を連想させ。
鈴木悠人がいた…日本から、東京から…とおく遠く離れた「異世界」なのだと。
混乱しながらも、おぼろげに自覚した。
去ってゆく敵の軍勢。
連れ去られた「慈愛の勇者」…
空虚な静寂に、三人の勇者は、取り残された。
ヨハネは、すっかり疲労しており。
ウェインは「アベルさまが、魔王を払った」と騒いでいる。
そして、この中で一番、ドラゴだけが。
憎しみ、怒り、喪失感…あらゆる負のスパイラルを背負っていた。
絶対に何があっても、ミュウを守ると誓ったのに。
宿敵の魔王が、あんな近くにいたのに。
自分は何一つ、行動に移せなかった。
沸々と悔やむ度、ドラゴの体が震え。
そんな彼の肩を、ヨハネが軽く叩いた。
「大丈夫、次がある」
「『次』こそは、悪を滅ぼそう」




