35話・ダダ下がりの士気
ガイアには、一切の容赦がなく…あと、ほんの少し、力を加えたら。
この世界から一人、勇者が消えるだろう。
さっきは、邪魔されたが。
次こそは、この手で、勇者を始末してみせる。
そう意気込んで、手に力を入れるが。
このとき。
ガイアの体に、異変が起こった。
「?ッ!」
それは、まるで「拘束」された感覚であり。
何者かの横槍(力)によって、ガイアの動きが止まった。
ミュウの首を掴む手から、腕力が解けてゆき…
こうも呆気なく、勇者を取り逃がしてしまった。
一体、何が起きたのか?
ここでガイアは、自分の腰に、違和感を抱いた。
どうやら、小さな何者かが、彼の腰に触れているらしい。
勿論「小さな誰か」とは、この場に一人しかいない。
「おまえ…」
ガイアは、苛立ちながらも。
自分の懐に触れている…幼女を睨んだ。
そう、ガイアを「拘束」していたのは…悠人(幼女)だったのである。
幼女(悠人)の視線と、黒騎士の視線が合わさり。
怒りと屈辱に、漆黒騎士の声が震えた。
「一体、何をした?」
だが、悠人の方は、キョトンとしたまま。
自分が一体、何をしたのか?それすらも、理解してなかった。
ただ、ミュウを助ける為に行動した…ソレだけだから。
「え?え~と」
そもそも悠人自身が、幼女の力を分かっていないが。
ただ一つ、明確な事は…
この幼女魔王は「触れる」だけで、最強の黒騎士を制圧できるらしい。
力の鱗片を味わったガイアは。
この幼女が「魔王」であると実感した。
ゆえに、魔王と見なして、深く問いただす。
「勇者を消す…それは、共通の目的だろう?」
彼の言う通り、悠人の目的も「勇者の殺害」。
妻を救う為の「必須条件」。
でも…それでも…相手は「子供」なのだ。
「ま…まってくれ…」
悠人は、モゴモゴしながら犯行するも。
情けない魔王の姿に、ガイアは更に苛立った。
「ああ?!ふざけろ!」
怒鳴られる理由も分かる…が。
どうすれば正解か?悠人自身が、一番混乱していた。
怒る黒騎士、俯くロリ魔王。
このとき…
フェルゴールが、とりあえず「妥協案」を挙げた。
「魔王さま。一旦、魔王城に、帰還しましょう」
「鼠の始末は、その後で」と、つけ加えるロボット騎士。
その後…と言う台詞に、悠人は、安心してしまう。
子供(勇者)を殺すまでの猶著が、少しだけ先送りになったから。
「あっ…はい。そうだね…そうしよう」
挙動不審な幼女魔王…
もはや、配下(黒騎士たち)の士気はダダ下がりだ。




