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25話・勇者は子供


 そして、この瞬間。


 悠人の…幼女の耳に「電動ノコギリ」の機械音が聞こえてきた。

音(電動ノコギリ)の位置は離れている。


 だとしても、今の悠人(幼女)ならば。

たとえ「遠くの音」でも、聞き逃す事はなく。


 ノコギリが回転する音。

男が「命乞い」をする音。

そして「女の子」の力強い声。


それらの物音から、あらゆるイメージが垣間見えた。

巨大な脅威が「女の子」を、襲っているイメージ。

そのビジョン(映像)が、悠人の本能に叫ぶ。


 その娘を…救え…と。


 訳も分からず突然、幼女として、転生したとしても。

「お人好し」の本能は、変わらなかった。

 ただ、感情の赴くまま。

「少女を助ける為」幼女の体で、力強い一歩を踏みしめた。


 だが、このとき。


「ストップ…お待ちください」


 カイルの一言が、幼女(悠人)を引き止めた。


 つい踏み止まり、カイルの紅い瞳と視線を交わす。

すると、この悪魔カイルは平然と、残酷な台詞を口にする。


「見殺しに、するべきです」


紅の瞳は冷たく、語られる言葉は冷酷。


「彼女は『勇者』ですから…」


「勝手に潰れてくれた方が、好都合です」


つけ加えて、切り札の一言。


「叶さんの、ためにも…ね?」


 

 妻の名が上がり、悠人の心情に「迷い」が生まれる。

「助けるか?」「見殺しか?」迫りくる究極の選択。


 そして…

こうして、思考を巡らせている内に。

「最悪な推理」に、勘づいてしまった。


 これだけは、聞いてはならない。

そう理解しているのに、思惑に反して幼女(悠人)の口が問いかける。


「もっ…もしかしてッ…」


「他の勇者たちも」


「こっ…こども…なのかい?」


 その推理とは…

殺すべき勇者が、皆「子供」だという予想であり。


 オドオドしながらも、悠人は願った。

カイルが、首を横にふって、予想を否定してくれることを。


 だが、しかし。

いとも容易く、かつ当然のように。


コクリ…


『子供(勇者)を殺す』ことを、この悪魔は肯定した。


 聞かなければ良かった…後悔しても遅い。

殺すべき相手が大人ならば、決心がつくけれど。

 相手が子供となれば…話は別だ。

だって、子供は叶が愛した「宝物」だったから。

悠人は、子供の絵を描く、妻の横顔が好きだったから。


 そんな綺麗事を並べても。

叶を救う道は、勇者(子供)を殺す他にない。

 この選択肢は…

凡人にとっては、余りにもハードルが高くて。


どうしたら?どうすれば?


 うかうか考えている内に、事の展開が進んでゆく。

また、遠くから…電動ノコギリの音が聞こえてくる。

そして、ノコギリの音に追随して。


「勇者さま!」


 騎士の絶望した声が響いた。


 窮地の現場が、こんなに遠くでも。

今の悠人(黒髪の幼女)には、ハッキリと垣間見えた。


 ピンク髪のポニーテイルが、ゆっくりと倒れる。

このまま放っておけば、この娘は消えるだろう。


 その結末を確信したとき、幼女の体が無意識に動く。

黒い髪をなびかせ、本能のゆくまま、幼女の脚を動かした。


 そんな、ありふれた選択を…

カイルは、背後から傍観していた。


 思惑通りに、展開しないからか?

それとも…全く、別の理由か?彼女の表情は、どこか不機嫌そうだ。






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