22話・悪魔との契約
悠人の…幼女の額に、嫌な汗が流れる。
緊迫する感情を抑えながら、カイルの表情を見る。
すると、先程の雰囲気から一変。
彼女は「機械」のような冷酷な眼差しをしていた。
相手の変わり様に。
尚更、動揺してしまう幼女(悠人)。
この娘は、見知らぬ赤の他人。
それにも関わらず、妻のことを「熟知」したような口ぶり…
まるで、全てを見抜くような台詞が。
悠人の薄っぺらな思考を混乱させる。
「妻は…叶、は」
どう応えればいいのか?
平凡な思考が、正解に辿りつく事はなく。
幼女の声で、ゴニョニョ…と呟くしかできない。
そんな幼女を、見下ろしながら。
カイルは「一つだけ」…たった一つだけ、重い台詞を口にした。
「叶さんを、救えますよ」
「ッ?!!…」
妻を「叶」を、救う事ができる。
それだけの台詞が、悠人の思考を、容易く一蹴してしまう。
「本当かい?」
嘘か真かなど…どうでもいい。
「叶が助かる」たったソレだけで、悠人の感情が大きく揺るいだ。
そんな心情を見抜くように。
カイルは瞳を細め、容易に頷いた。
「ええ…」
「もちのろん、ですとも」
不思議と、今の悠人は、カイルに信頼を置いており。
何の根拠もないけれど…
彼女の言葉に「偽り」はないと、信じる事ができた。
「とある案件を、引き受けて頂けますか?」
カイルは、ニタリと笑い。
鈴木叶を救うための「契約」を持ち出してくる。
もし、叶が助かるなら…
土下座だってするし、靴だって舐められる。
いざとなれば、この命を、代償にしたって構わない。
「うん、なんだってするよ」
幼女の手に力を込め、悠人は強く頷いてみせた。
その決意(返事)を聞き入れて。
カイルは「契約」の内容を説明する。
「消してほしい、奴らがいるんです」
そして…
案件の内容とは、あろうことか。
命を売る事でも、玩具になる事でもなく…残酷な「人殺し」だった。
「『四人の勇者』を、貴方に、潰して頂きたい」
彼女は、ゆっくり丁寧に、残酷な内容を語る。
平凡な人生を、生きてきた悠人に。
勇者はともかく…「人殺し」の頼みなんて、された事が無いから。
こんな案件を、平然と持ち出してくる彼女に、恐怖さえも感じてしまう。
「………………」
混乱のあまり、言葉が出てこない。
そんな反応さえも、カイルには、想定内らしく。
「叶さんの、為ですよ?」
ズバリ…と、切り札の一言。
魔法のような台詞が、選択権すらも奪い去ってゆく。
「ッッッ!」
そうだ…迷う暇などない。
外道と化しても、殺人者と化しても、悪魔と化しても。
大切な人が、救われるのならば、選択する自由なんていらない。
「うん、わかっ…た」
幼女の声を、不器用に震わせながら。
『緑髪の悪魔』の頼みを受け入れた。
「契約、成立ですねえ」
悠人の承諾に、カイルは、満足そうに頷く。
「さあ、始めましょうか」
「わるもの魔王の物語を」
この一時にて…
「黒髪幼女」と「緑髪の悪魔」の契約が成立した。




