16話・圧倒的な差
勇者ヨハネと漆黒騎士ガイア。
はじまりの街にて、決戦の火蓋が降ろされる。
先行を取ったのはヨハネ(勇者側)。
「轟け!グングニール!」
神々の炎が、少年の手から現れて…その形が、一本の槍に姿を変えた。
コレこそが、勇者が誇る「神器(武器)」
神器・グングニール。
神器グングニールは、神の力そのものでもあり。
選ばれし者だけが扱える、特別な武器だった。
だが、しかし…
相手の方は、そんなモノ(神器)に興味は無いらしく。
もっと「小さな所」に、注目しているみたいだ。
彼は、ヨハネの懐にある『短剣』を指さすと。
まるで、嘲笑うように問う…
「そのオモチャは何だ?」
炎の槍よりも、その『短剣』に注目している辺り。
ガイアにとっては…彼の短剣の方が、珍しいのだろうか?
一応、ガイアの目測は、的外れではなく。
確かに、ヨハネの短剣は「特殊な道具」だった。
刃先には「未知の言語」で、模様が記されており。
短剣の鞘は、この世界にはない…不明の金属で生成されている。
それに…コレ(短剣)は。
ヨハネにとって、使命を果たす為の必需品であり。
そう安々と、敵(黒騎士)に、情報を教える訳がなかった。
相手の問いかけに答えず。
神器グングニールを構えて、漆黒騎士へ特攻してゆく。
対抗するガイアは、動じる素振りすら見せない。
真正面から、ヨハネの必殺を、受け止めるつもりなのか?
ヂッヂヂヂ!ゴォウ!
漆黒の鎧と業火の槍が衝突。
猛烈な火花が、街中に飛び散ってゆく。
超人を超えた「高次元」の戦い。
一般市民も、そして黒騎士隊も…偉大なる力に見惚れていた。
シューウ、ヒュー
乾いた風の音と、歪んだ煙が宙を舞う。
ヨハネの必殺技が終わり。
神器グングニールは役目を終え、静かに消えていった。
グングニールは、変革の一撃。
その破壊力は、神の宣告に匹敵する…それに、確かな手応えもあった。
そう、僅かに安堵した瞬間。
「ガキにしちゃあ、悪くねえ」
煙の向うから、ガイアの平然とした声が返ってきた。
引いてゆく煙から、鎧のシュルエットが露わとなり。
「だがな…小僧」
傷一つもない…漆黒の鎧が、立ち塞がった。
「コイツが、圧倒的な『差』ってヤツだ」
次はガイアの番(攻撃)。
桁違いの覇気が、彼の右手に集束してゆき。
右手に秘められしオーラが、両者との「力の差」を明確にする。
これは、敵う相手ではない。
あの右手が振るわれたら、自分は死ぬ。
ヨハネは、色々な恐怖(現実)を考えながら確信した。
こんな化物を、倒せる者は存在しない…と。