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140話・ぶきっちょ魔王と幼女転生


男の子はメソメソしながら、木の上を指さした。


「ぼくの、ふうせん…」


どうやら、木の上に「風船」を、引っ掛けてしまったらしい。

木は高く、大人であっても、手は届かないだろう。


 黒髪幼女は優しく微笑み言った。


「大丈夫…」


「ボクに、まかせて」


黒い瞳で、木の上を見上げてから。


 ピョンッ…

助走すらつけず、軽く跳んでみせた。


 この「一跳び」は、あまりにも高くて。

黒髪幼女は、木の頂上まで、あっという間に達した。

 幼女の手で、囚われの風船をキャッチ…

風船の紐を掴みながら、少年の元へと着地する。


そして…


ぎこちない笑顔で、少年に風船を返してあげた。


 風船が戻って来て…

彼は、太陽のように「笑い」「喜んで」くれた。


「ありがとう!おねえちゃん!」


 元気を取り戻した少年は…

風船を片手に、友達の元へと走り去ってゆく。


 元気な背中を見届けると。

黒神幼女は「また」小さなベンチにへと戻った。




ベンチの上に、ちょこん…と座っていると。


「どうも、悠人さん」


聞き覚えのある「敬語」が声を掛けてきた。


 黒髪幼女…いや。

『魔王ハルバート』は、この声をよく知っている。


「やあ、カイル…」


幼女魔王の日課を見て、カイルが茶化してくる。


「邪悪な魔王さま~いつも、人助けしてますねぇ」


 彼女カイルに茶化されるのは毎度の事だが。

この口調を聞くと安心できた…だから、幼女魔王も共に笑う。



 しばしの談笑から、ささやかな沈黙。


そして…


「コレは、悠人さんの手に…」


カイルは、病院から持ってきた「荷物」を…ぶきっちょ魔王に手渡した。


 魔王ハルバートは「荷物」を受け取ると…

小さな幼女の手で、包みの布を解いてゆく。

 布の奥からは「一枚の絵」が顔を覗き。

この世から去った、一人の画家による「最終傑作」があった。


 この幼女魔王は「大切な記憶」を失っており。


 今となっては、もう。

「この絵」に関する記憶が、思い出せなかった。


 それでも、だとしても…


この絵は、何よりも大切で。

きっと、魔王にとっての「宝物」の鱗片そのものだった。


 ゆえに…この絵を、手放す事はなく。

小さな公園の片隅で「一枚の絵」を抱きしめた。




ここは、東京の片隅にある…ちっぽけな公園。


今日もまた、誰かが愛した…笑顔が溢れ…


小さなベンチに、一人ぼっちが座り…


そして、今日もまた…


 やさしく…


 お人好しで…


 不器用な物語が…


誰も知らない所で、ページをめくられるのだろう。




                       fin








無事、完走する事ができました。

皆さん、本当にありがとう!感謝!

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