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13話・秘密の展望台


騒がしい祭りを、ひっそりと抜け出し。

ドラゴは一人、静まった街道を歩く。


 彼の目的は、ミュウを見つける事。

そして、彼女の行く当てなら…おおよその検討がついていた。


 なぜなら、二人ドラゴとミュウは、幼馴染だから。

彼女の考えが、大体は想像できる。


 ドラゴが、足を運んだ場所は、街の外れにある「展望台」。

小さい頃、二人でよく遊んでいた「秘密の場所」。

ここ(展望台)は、ミュウのお気に入りで。

大切な日の前夜…彼女は必ず、この展望台を訪れる。


 緑の芝生を踏み進み。

円筒形の建物に、ゆっくりと近づく。


 この建物は、古い煉瓦で造られており。

階段を登れば、すぐ頂上という…シンプルな建造物(展望台)だった。


 展望台の頂上に着くと。


予想通り…幼馴染ミュウの姿があった。

 ブロンドのローブを纏い。

ローブの下には、安物のドレスに、どこにでもあるスカーフ。

武器と呼べるモノは一切、持ち合わせていない。


 冷たい夜風に、長い髪の毛が揺れ。

ソレ(ミュウの髪)は…汚れのないピンク色だった。

髪型は、後ろ髪を軽く結んだだけの「ポニーテイル」。


 平和な一時に、ドラゴの頬が緩む。


「ミュウ…どうしたんだい?」


 ドラゴの存在に気づくと。

ミュウは、ポニーテイルを揺らしながら振り向いた。

その細い手には「一つの籠」を抱えていた。


 夜空に花火が広がって、二人の視線が重なった。


 ミュウは、ニコニコと微笑みながら。

ドラゴに、籠の中身を覗かせた…その中には、沢山のパン(食料)。


「どう?凄いでしょ!」


 特徴の無い、普通のパンだけど。

その量は沢山…ざっと、三十人分はあった。


「二人で食べるには、多くないか?」


えへへ…と笑うミュウ。


「違うよぉ。『牢獄』への差し入れ!」


「しばらく、街から離れるしね」


 どうやら彼女は『ノドの地』へ旅立つ前に。

この街(はじまりの街)にいる罪人たちに「食料」を届けたいらしい。


 そんな彼女の優しさを、理解しているから。

いつものように、幼馴染として、見送ることにした。


「見つかったら、呼び止められるかも」


牢獄へ向かう彼女へ、冗談交じりのアドバイス。


「いつもの『抜け道」を使いなよ」


そんな冗談に「うん!」と、元気よく頷いてから。

ミュウは、展望台から降りていった。


 そして、慈愛の勇者は、芝生の上を踏みしめながら。

ドラゴとミュウ…二人だけが知っている『抜け道』に姿を消した。


 ドラゴは、展望台の上から、彼女を見送ると。

一人残って、夜空の花火を見上げた。


 様々な色彩が、次々と拡散してゆき…

街の向うから、賑やかな声が聞こえてくる。

 平和の一時を、噛みしめながら。

ドラゴもまた、花火を楽しむ事にした。




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