127話・魔王の復活
銀の粉雪が、展望台にへと舞い落ち。
一時の静寂の中に、黒髪のポニーテイルが穏やかに揺れた。
ちょこんと立つ「幼女魔王」の背中から…
小さくても、燃え上がる闘志が垣間見え。
復活し目覚めた…悠人の姿を見て。
ミュウは、これからの展開を察してしまう。
この人は、戦う気だ…
この世界を、みんなを守るために。
この人はきっと、自らを犠牲にするつもりだ。
「はると…まって…」
もう、傷つかないで欲しかった。
彼女はただ、それだけを望んでいるのに。
ミュウの願いは、ただそれだけなのに。
悠人の背中は、とっても、とっても…辛そうで…
「悲しみ」と「悲哀」に満ち溢れていた。
根拠は無いけれど、ミュウは察した。
この人はきっと「大切な存在」を失ったのだ…と。
そして、大切な宝物を失い、孤独になったとしても。
「魔王」としての道を受け入れ。
遠い空の向うから、この世界を、守りに来てくれたのだ。
ミュウは、懸命に手を伸ばして…
これから決戦に行く悠人を止めようとした。
なのに、どうしても言葉が出てくれない。
何故なら…
その悲しみに暮れた背中を見ていると。
自分には「彼」を止める資格などない…そう思ってしまったから。
フワリ…
瞬間、幼女魔王のポニーテイルが、優しく揺れた。
そして、一寸の音すらなく、魔王ハルバートの姿が消失する。
一瞬の展開に、ミュウの視線は、追いつかなかったが。
悠人はきっと…
常識も想像すらも凌駕した次元で、戦いに向かったのだろう。
もう、彼女には、関与する事が出来ないけど。
それでも、だとしても。
この世界で、ただ一人。
ミュウ「だけ」が、魔王ハルバートの無事を祈っていた。
魔王ハルバートの飛行力は、光の概念さえも置き去りにし。
たった一飛びしただけで。
宙陸海…あらゆる領域が、視界に飛び込んでくる。
「全ての存在」が、透き通る程よく見えて…
戦うべき敵の動きが、隅々まで目視できた。