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126話・必要とされなくても


 展望台にて、大きな機械音が響き渡る。

この音こそ、一機のSSによるモノで…

展望台にいるミュウが、追い込まれた合図だった。


 SS相手に、追い込まれても。

彼女ミュウはもう…逃げも隠れもしない。


 SSは、追い詰めた獲物を狩るべく。

胸部の球体ユニットを起動させ、辺りの空気を焼き焦がしてゆく。


コレはきっと…尋常じゃない恐怖だけど。


 ミュウは、その場に踏み止まり。

「目覚めぬ」幼女魔王の傍に、寄り添ってあげた。


 幼女の目は、開かれる事なく。

穏かに、永遠に、安らかに、眠り続けていた。


 悠人はもう「二度と」目覚めない。

彼女ミュウ自身が一番、理解しているけれど。

絶対に、この人を見捨てはしない。


 この人(悠人)は…


世界グリモワーツから、嫌われても、憎まれても。

そして、誰からも必要とされなくても。


たった独りで「みんな」を、守ろうとしてくれた…


 きっと、この人(悠人)には、善とか悪とか…

何が正しいとか、何が間違っているとか…

 そんな「理屈」と呼べる概念はなく。

ただ「守りたい」だけ、ただ「助けたい」だけ、それだけの単純思考なのだ。


賢くもなく、笑ってしまうほど不器用だけれど。

とっても優しい、お人好し。




 ミュウは、覚悟を決めると。

その身を挺して、幼女魔王を庇った。


 眠る幼女魔王へ、全身で覆いかぶさり。

ギュッと固く、目を閉じてから。

悠人だけは…SSの手から守ろうとする。


「フュージョン・コア」


 レーザーシステムが、発射態勢に移行。

あと数秒後には、彼女を含め…全てのモノが破壊されてしまう。


「キドウ…」


 機械音による、死の宣告が告げられ、場の空気が豹変。


ミュウの体が、フワリ…と軽く浮いた。


これが…死…?


ぼんやりとした感覚と共に、死を意識するものの。


 何故だか?


身に覚えのある、優しい感覚を感じた。


 ミュウは、この感覚を知っている…


温かく、優しく…そして「不器用」な感じを、誰よりも知っていた。


 そして、その感覚に誘わるまま…ミュウは、ゆっくりと目を開けた。


 開かれた視界に…

殺戮ロボットの姿は、どこにもなく。

紅の球体も、死のレーザーシステムもない。


 それどころか。

彼女の体は、一つたりとも傷ついてなかった。


「わたし…生きて…る?」


彼女は呆然としながら。

「助かった」と、理解するものの。


 あるモノが、頭上から降ってきて…

思わず、目を丸くして驚いた。

 ソレは、銀色の粉雪。

米粒よりも小さい「金属の塵」だった。


 展望台の周辺へ、金属の塵が舞い散り。

そんな中…ふと。

ミュウは、とある方向へ、意識を移した。


 そう…

金属の粉雪のなか、一つの人影が佇んでいたのだ。


 それは「幼女」の形をしており。

黒いドレスに…白の道着…

そして、ミュウが整えた「ポニーテイル」。


黒髪のポニーテイルが、ユラリ…と揺れ。


「はる…と…?」


 ミュウは無意識に、その人の名を呼んだ。


遠い空の向うから、やって来た「不器用な人」の名を呟いた。




 銀色の粉雪の「正体」は…

ミュウと悠人を追い詰めた、SSの末路であり。


 つまり…

何者かが、想像を絶する速さで、このロボットを破壊したらしい。

 これこそ、まさに木端微塵。

ロボットの原型は、欠片すらも残されておらず。

デタラメな力によって「金属の塵」と成り果てたわけだ。







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