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115話・ぶきっちょ魔王とポニーテイル


一機のSSが、展望台へと着陸。

芝生の平野に、脚部アームがめり込み、雑草や草木が宙を舞う。


殺戮マシーン(SS)は、ミュウと悠人を見下ろし、胸部のユニットを可動させた。


「フュージョンコア・キドウ」


 機械の音声と共に、紅の球体が現れる。


 この球体を…この「紅の色」を彼女は知っている。

ノドの地を枯らさせた、残酷な一手。

謎と狂気に、渦巻いた「異次元のテクノロジー」。


 窮地に立たされても…

ミュウに出来る事は、悠人(幼女魔王)を抱えて逃げるだけ。

 

 どこに逃げるか?

どうすれば、正解なのか?


 あらゆる思考が、風の如く過ぎ去り。

無我夢中で、本能の行くまま…一本のルートを選択。


 目覚めぬ幼女を、力強く抱きながら。

ひたすら、展望台の上を目指した。


階段を死に物狂いで昇るものの…一段一段が、永遠に感じる程遠く。


 悠人を抱く手が、震えてしまい。

尋常じゃない恐怖が、呼吸を狂わせ、ゴッソリと体力を奪う。

 だが、それでも…

彼女ミュウは、悠人を離さず、階段に挑み続けた。


 そして、ようやく。


 展望台の頂上に到着…

体力は既に限界、これ以上…走れない。


 冷たい床の上に、幼女魔王を寝かせてみると。

ミュウの頬に、一粒の涙が流れた。


「はると…」


 アベルとの戦いで、幼女の体は傷つき。

その黒髪はボロボロ…

白い道着も、黒のドレスも、ズタズタになっていた。


 きっと、この不器用な人は…

彼女と「初めて会った時」のように、助てくれたのだ。


「守って、くれたんだね」


 目覚めない魔王へ、心からの「ありがとう」を捧げた。


ミュウには、悠人の正体は、分からないけれど。


「とおい、遠い…空のむこうから…」


このグリモワーツとは違う…遠い彼方のむこうから…


「助けに、来てくれたんだね」


 感謝しているつもりなのに。

どうしようもない「悲しみ」が、胸の内から溢れてゆく。

 

もう、この人には…傷ついて欲しくなかったから。


「眠ってほしい」と「もう、戦わないで」と…想い願い…

彼(鈴木悠人)には…

「元の世界」で、幸せになって欲しいと願った。




 幼女魔王の目が、開かれる事はなく。


その眠りを見守りながら…

ミュウは、幼女の黒髪を手入れしてあげた。


 自らの髪留め(紐)を解き、彼女のポニーテイルが崩れる。

自由になったピンク髪を、夜風に委ねながら。


 髪留め紐で、悠人の後ろ髪を結んだ。

長い黒髪が、ゆっくりと結ばれ、静かに姿を変えてゆく。


 どうして、こんな事をしているのか?

ミュウ自身…よく分からなかったけれど…

 傷つき汚れた「この人」を、少しでも綺麗にしてあげたい…と。

心の底から、そう思ったのだ。


 やがて、紐が優しく結ばれ。

幼女魔王の髪型は「ポニーテイル」となった。




 そして…狂気の運命が迫りくる。


あんなにも、必死に逃げたのに。

相手(SS)の方は「たったの一動作」。

たった一飛びだけで、展望台の頂上まで到達した。


 冷たいモノアイが、二匹の獲物を見下ろし。

再び胸部のユニットを起動させた。








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