107話・金属の王子さま
レーザーの弾幕を、幾ら阻止しても。
相手側(SS軍団)は、攻撃の手を緩めはしない。
それどころか…敵の手数は、更に増幅してゆき。
レーザーシステムの弾数が爆発的に膨れ上がり。
脅威度を増して、幼女魔王に襲いかかった。
宇宙での死闘は、地上の世界にまで影響を及ぼし。
魔王の領域、アポカリファも…
この死闘によって、地獄の大地を震わせていた。
アベルの一撃によって、フェルゴール以外の黒騎士は全滅。
黒騎士軍団が消失したことで…
アポカリファには、空虚だけが残されており。
史上最強の軍団の姿は、一片の欠片すらも残されていない。
SS軍団と幼女魔王の戦いによって、地上そのものが怯えて震える。
ゆれる、ユレル、揺れる…
荒々しい自身が、アポカリファを大きく揺るがせた。
魔王ハルバートの城が…グラグラと振動し。
足元が激しく揺れて、ミュウの背筋に悪寒が走った。
一方、フェルゴールは、空の様子を察しながら。
カイルの耳元にて、ひそひそと…何かを呟いた。
どうやら、何かを尋ねている様子だが…
彼女は返事をせず、一つだけ頷いてみせた。
そんな、二人のヒソヒソ話に、ミュウは疑問を抱く。
「カイル、何をするつもりなの?」
一応、カイルに質問したのだが。
ロボット騎士が代わりに、その疑問に答えた。
「帰りたいのだろう?自分の家に…」
「え?帰る?」
ああ、そうだとも…と。
彼は、流れるように「次の動作」へと移行する。
「OKが、降りたからな『街』まで、すっ飛ぶのさ」
「さあ、王子タイムだ」
その言葉はつまり…
ミュウを「はじまりの街」に連れて行く…という意味であり。
意図は分からない…けれど。
ミュウは、勇者として…いや「人間」として、伝えねばならない。
聖天使アベルによる「正義を超越した正義」の恐ろしさを…
「はじまりの街」にいる、人々に伝えねばならない。
ミュウの選択(行動)も、ドラゴ(幼馴染)と同じで。
皆に危機を警告するべく、翻弄する道を選んだ。
「さあ、桃姫さま」
フェルゴールが、腕のアーム(金属フレーム)で…ピンク髪の姫君をエスコートする。
フェルゴールと、初めて出会った頃。
彼女は、このロボットに殺されかけ…当初の印象は最悪だった。
だが、しばらく一緒にいたからか?
フェルゴールが、ただの「殺戮マシーン」ないと…微かに理解できた。
ゆえに…
「………うん」
素直に頷いて、フェルゴールの手を取った。
金属アームが、彼女の体を抱きかかえて…
フェルゴールが、ミュウをお姫様抱っこした。