106話・孤独な肉壁
たった一人の幼女に対し…
殺戮マシーンの軍団が、群れを成して襲ってくる。
一機一機のマシーン(SS)は、アベルと同等の力を有しており。
あのノドの地を枯らした「レーザーシステム」を、マシンガンの如く一斉掃射。
レーザーの弾幕は、宇宙そのものを赤く染め。
圧巻のスケールで、悠人(幼女)一人に放たれた。
幾ら数(規模)を増やしたって…どんなに、火力を上げたって…
悠人(幼女魔王)には、全て「見えていた」。
全てのレーザーの弾道が、静止したように…完全に直視できた。
ゆえに、これらの攻撃が。
アベルの脅威を凌駕している事も分かり、もし直撃したならば…
幾らこの身体(幼女魔王)でも、無事では済まないだろう。
躱すのか?受け止めるのか?
選択する時間は、有り余る程だった。
そして、迫りくるレーザーの嵐を前に、悠人の下した選択は一つ。
………受け止める………
その豆粒のような、ちっこい体一つで…たった一人、肉壁になる事を選んだ。
理由は、至って単純。
悠人の背後にある、青い惑星を守る為だった。
もし「一発」でも、レーザーシステムが惑星に当たれば。
惑星そのものが、グリモワーツそのものが、死に絶えてしまうだろう。
緑の宇宙も、惑星グリモワーツも…
鈴木悠人とは、一斉の関わりのない『遠い異世界』。
だとしても、悠人は守ろうとした。
だって…大切な人に、託されたから。
妻の叶から「みんなを守って」と…頼まれたから。
レーザーの猛攻が、幼女魔王(悠人)に直撃。
黒いドレスがジリジリと焼け、白い道着が焦げてゆく。
これまで、どんな攻撃をされたって。
この身体(幼女魔王)には、傷つかなかったのに。
数の暴力によって、幼女の体は、次第に追い込まれていった。
幼女の体で、初めて「痛み」を実感するが…耐えきれない痛みじゃなかった。
痛くても、熱くても、孤独でも…絶対に引き下がる訳にはいかない。
ここで踏ん張らなければ…
後ろ(背後)にて輝く惑星グリモワーツが破壊されるから…
………!ッ……………音が遠のく…
衝撃に衝撃が重なり、視界が紅の光りに覆われた。