105話・ロボットの姿をした扉
「これが、第四形態です」
カイルが淡々とした口調で、アベル(SS)の説明をする。
「だっ…第四形態」
アベルの第四形態と聞いて…
ミュウは訳も分からず、混乱しているみたいだが。
フェルゴールの方は、何となく「SSの仕組み」を理解していた。
「レプリカ…複製か?」
彼はどうやら。
アベルが「分身」した…と予想しているらしい。
そんなロボット騎士の推理を、緑髪の悪魔は嘲笑った。
「フッ…」
「頭まで、ポンコツなんですか?」
彼女は、フェルゴールの考えを鼻で笑う。
「そんな、退屈なわけ、ないでしょう」
言いましたよね?
「アベルは『システム』だと」
SSシステム…
それは、あらゆる生命を駆逐する為の「殺戮機構」。
「SSは、アベル一機…だけじゃないんですよ?」
SSは、アベルだけじゃない。
その言葉に、フェルゴールな真実の断片を察した。
「ソイツは、つまり」
感づいた彼の言葉に、カイルは「そうです…」と台詞を繋げる。
「SSシステムは、アベルの他にも存在してるんです」
「それも、莫大な数…ね?」
紅の瞳を尖らせながら、カイルが真実を告げる。
アベルと同等の「殺戮マシーン」が…
数億機…いや、それよりもっと存在している事を。
こんな殺戮軍団において、アベルの役割とは?
「アベルは所詮『扉』でしか、ありません」
アベルは扉。
他のSSたち(殺戮ロボット)を、異世界から異世界へと転移させる渡り鳥。
そして、この第四形態こそが。
光り輝く、黄金の天使の翼こそが。
アベルの本来の役割、扉としての姿であった。
ミュウには、二人の会話が理解できなかった。
それでも、だとしても祈った。
自らの手を固く結び、力の限り「祈った」。
誰よりも「甘く」誰よりも「優しく」だれよりも「不器用」な…魔王のために。