104話・殺戮マシーン軍団
次は、なにをしてくる?
巨大な拳(腕のアーム)で、殴ってくるか?
紅のレーザーで、狙ってくるか?
たとえ、何が来たって。
悠人は、小さな体一つで、全てを阻止するつもりだった。
しかし、次の展開は…
悠人の予想を、遥かに上回っていた。
アベルの背中から、純白の光沢が開放され。
眩い黄金の閃光が、緑の宇宙を覆いつくしてゆく。
やがて、その輝き(閃光)は、広大なる翼となり。
神々しき正義の翼を、アベルは広げてみせた。
正義の翼が、宇宙全域をも包み込み。
そのスケールは、圧倒的かつ…桁違い。
グリモワーツの地上からでも「アベルの翼」がハッキリと見えた。
アベルの変革によって、グリモワーツの空が、黄金の輝きに覆われてゆき。
地上の人々は揃って、美しき空にへと手を伸ばした。
正義と希望を信じて…彼ら(人々)は祈る。
聖天使アベルが、悪を打ち倒し…真の正義を実現させてくれると。
人々の想いは一つ、誰一人…アベルを「疑う」者はいなかった。
「やったぞ!天使さま!万歳!」
「これで、魔王も終わりだ!」
「悪は滅びるんだよ!ざまみろ!」
地上にいるドラゴにも、アベルの進化が分かった。
あの殺戮兵器が、次に何をしでかすのか?
考えただけでも、全身に鳥肌が立つ。
まだ、今のところ…
幼女魔王が、アベルを食い止めている。
だとしても、アベルの行動は予測できない。
ゆえに、一刻も早く「警告」する必然性があった。
脅威の殺戮マシーン(アベル)を、目覚めさせた責任として。
負け犬の勇者は、街の人々に伝えねばならないのだ。
「アベルから、逃げろ…」と。
枯れたノドの地から離れ…
それから、光速を超える速さで、ドラゴはひたすら走った。
死に物狂いで、駆け抜けながら…
ドラゴは、アベルの「正義を超越した正義」に恐怖し。
幼女魔王の「甘っちょろい悪」に、最後の望みを託していた。
アベルの翼が、無限に膨れ上がってゆき。
黄金の閃光から、ポツポツと…巨大な影が現れた。
これらの影は、総じて人型をしており。
数百万から、億の単位まで、永久的に人数を増幅させてゆく。
影の「正体」は何と…
アベルと同じ存在「SS」…生命殺戮機構の軍勢だった。
一機一機が、アベルと同等のサイズで、同じ戦闘能力を有し。
全長200mの殺戮マシーン軍団に、この宇宙は占領されていた。