102話・歪む宇宙
アベルの拳と悠人の拳(幼女の手)が衝突。
両者の大きさ(スケール)は、余りにも遠すぎて…
まるで、山と蟻が戦っているみたいだった。
普通ならば…
ちっこい幼女の方が、潰れるはずだ。
その筈なのに。
追い込まれ、窮地立たされていたのは、巨大ロボット(アベル)の方だった。
銀のフレーム(装甲)から、更なるエネルギーが放出。
青と黄の電が、荒々しく放電され…
アベルの戦闘力が爆発的に増加し、エメラルド(緑色)の宙域が歪んだ。
アベルの攻撃が、緑の宇宙に影響を及ぼし
もはや、その一撃一撃は、ビックバン(超新星爆発)をも凌駕していた。
これらの広大なる攻撃は全て…
ちっこい正体不明(幼女魔王)を潰す為にあり。
小さき脅威(悠人)を潰す為に、ありったけのエネルギーを叩きつける。
もはや『生命殺戮機構』の領域には…
超人も能力者も、神々であっても、立ち入る事は出来ないだろう。
なのに、その筈なのに…
アベルの攻撃は「全て」いとも容易く無力化されていた。
幼女魔王は、こんなにも小さいのに。
むしろ、アベルの方が、力負けしており。
隕石のようなアベルの拳は、幼女の手によって…完全にホールドされていた。
やっぱり、おそい…
今の悠人には、全て「見えていた」。
殺戮マシーン(アベル)の挙動を、精密に捉える事ができ…
敵の動作が、スローモーションに感じられた。
広大な拳が、襲いかかってきても。
幼女魔王の力は…デタラメでインチキ、そしてアンノウン(正体不明)。
理屈や常識を超えた力で、アベルの脅威を無力化してゆく。
そして次は、悠人のターン(反撃)。
と言っても…
悠人は「戦い」など知らないし。
元の世界(東京)で、喧嘩すらも経験した事がない。
ゆえに、殴る…とか、蹴る…とか、それらしい「格闘」なんて出来ない。
だから、悠人の攻撃は、素人のソレ。
子供でも出来る、単純な「頭突き」だった。
なんの工夫もない、直線的な一撃(頭突き)。
たったソレだけで…
巨大ロボットの半身が、アベルの左肩が…バラバラの木端微塵となった。