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100話・信仰の末路


異世界グリモワーツの大気圏から…アベルと悠人が消失。


戦いのフィールドは更に上へ。

大気圏外から「宇宙」へと移り変わった。




「?………きえた?」


 映像モニターを眺めながら、ポカンと呆けるフェルゴール。

彼の映像には、天使と魔王の姿はなく。

死に絶えた「ノドの地」だけが、映し出されていた。


「『上』に、いきましたねえ」


 カイルは、何となく察しながら。

二人(アベルと悠人)が「宇宙」にいると口にした。


 あらゆる出来事が、一瞬にして展開してゆき。

もはや、ミュウには理解できなかった。

 それでも、とりあえず…

フェルゴールの映像から、ドラゴの生存を確認できて。

「幼馴染」の無事に、ひとまず安心した。


 優しき魔王は、すぐに消えたから。

彼女ミュウには、悠人の戦いは「見えなかった」。


 だとしても、分かる…


今このときも…

不器用で優しい魔王が「みんなの為」に抗っている事を。





 機械巨人と幼女魔王の姿が消失し。

後に残されたのは、死に絶えてしまった…ノドの地。

そして、惨めに取り残された「一匹の勇者」だった。


 赤く染められた大地に崩れ…

勇者ドラゴは喪失感と共に、辺りを見渡した。


 アベルが復活するまでは…

人魚やユニコーン、妖精など…豊かな生命に溢れていたのに。

わずか一瞬にして、すべての命が、豚や牛の臓器のような「肉塊」と化した。


 この末路は、黒騎士たちも同様。

漆黒の鎧が、木端微塵に破裂しており。

砕けた鎧の中から、グニャグニャの肉片が零れていた。


 かつて…

神々の攻撃を弾き返した「最強の防御」はゴミ屑となり。


 その死骸の山には…

漆黒騎士ガイアの残骸も含まれていた。

 今のガイアは「ただの肉塊」で。

もう、勇者を蹂躙した…最強の騎士の面影はなかった。


 一瞬にして「最強の黒騎士軍団」が全滅…


一人生き残ったドラゴは、真の恐怖に震えた。


「う…ウェイン…」


震える肩を抑えながら、戦友ウェインの元へ駆け寄る。


 だが、しかし…


 勇者ウェインは、アベルに踏み潰された事により。

ペースト状の挽肉と化して、人体の欠片すら残されていなかった。


 これが、天使の勇者の末路。

「希望の聖天使」を信仰してきた者の末路。


 目の前の現実を見たとき…

唯一の生存者ドラゴは、これからの未来を知る。


 きっと、ノドの地の同じように。

グリモワーツも、アベルによって「破壊」されると…


 これからの展開を知って…ドラゴは駆け出した。


 皆に…人々に「危機」を知らせねばならない。


 この事態を招いた…勇者として。

アベルを復活させた「張本人」として、責任を背負う義務がある。




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