99話・ハンマー投げ
そして、敵を探知した頃には…
アベルの足元にまで、幼女魔王は潜り込んでいた。
アベルは、脚部アーム(脚)を振り上げ。
ミジンコのような外敵を、潰そうとした。
悠人(幼女)の視点からすると…
アベルの脚そのものが、山の如く広大だった。
だが、体格の差が、かけ離れていようとも。
一切、引き下がる素振りもなく…
豆粒のような体一つで、アベルの「蹴り」を受け止めていた。
ギィッ!
魔王に脚を掴まれて、アベルの脚部アームが悲鳴を上げる。
幼女魔王の腕力は、アベルの計算を凌駕しており。
パーツが悲鳴を上げ…アベルの動きた止まった。
そして「次」は…
極悪の魔王(悠人)のターン(攻撃)。
小さき手で、アベルの足先を掴み。
山のように巨大な相手を、ハンマー投げの如く振り回した。
グォオオッ!ブォン!
幼女魔王の繰り出す「桁違いの腕力」が…
全長200mのロボットを、玩具のように弄ぶ。
体格差では、アベル側に分がある…が。
腕力すなわち…力においては、悠人側に分があった。
いけるっ!今の僕になら!
この世界にいる、悠人は「東京の一般人」ではない。
「恐怖」であり「極悪」であり…「異次元の力」を秘めた幼女魔王なのだから。
相手が幾ら大きくたって。
今の悠人なら、対等か…それ以上の戦いに持ち込める。
一、二、三…何回転も、アベルの巨体をぶん回し。
悠人は、大気圏外のもっと先…
遥か遠くに広がる「宇宙」へと、意識を傾けた。
この機械巨人は、自分と同じく「死そのもの」。
ゆえに、地上で戦ったなら…被害が広がり。
大勢の命が、死に絶えるだろう…
だから、悠人は「戦いのフィールド」を。
グリモワーツ(地上)から離れた「宇宙」に移動させようとした。
大気圏外のむこう。
何光年も離れた…次のフィールド(宇宙)を睨む。
そして……投げた……
自分の体よりも、何百倍も巨大なロボットを。
ボールのように「宇宙」に向けて…軽く吹っ飛ばしたのだ。
デタラメで馬鹿げた腕力によって。
アベルの巨大が、宇宙の彼方まで、投げ飛ばされてしまう。