表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/53

G4話:旅立つ前に

 前回のあらすじ

 朝起きたらメイドがいたので名前をつけた。

 タイツとか洗濯してもらった。

---


「お嬢様、お召物が乾きました。お召しになりますか?」

 銀髪で肌の色も透き通る様な白さのきれいな女性が筐体の中に入ってくる。

 その手には私の下着とブラウスがある。

 残念ながらアイロンがないため少しふにゃりとしているけれど、清潔さが確保されたことが判る。


「ありがとうアリア」

 先程名付けたばかりの名前に礼を言って受け取ろうとすると彼女は少しだけ手を引く?

「お召し代えなさるのであれば、お手伝い致します」

 そう言いながら、筐体の中に入ってくる。


「いやそれは・・・」

 恥ずかしい、今私はほとんど裸、制服のブレザーとスカート位しか身につけていない。

 折角ならと身につけていた物も殆どを洗ってもらったので、あれだけ避けたかったノーパン、ノーブラどころか裸に直ブレザーなんて不審者みたいで、女同士といえ恥ずかしい。

 しかしアリアは、違う考えの様で

「お嬢様、失礼いたします」

 と、私のブレザーを剥ぐとあっという間に着替えさせられてしまった。


 さて、服装も昨日と同じ制服ではあるけれど整えた。

 下着も、上下でお揃いの白地にピンク色の縁取が刺繍されたものに戻ったので少しだけテンションが持ち直す。

 洗濯待ちの間に鞄とインベントリの中身を調整して荷物は最低限にしてある。


 賢者の短剣を装備欄で確認したところ攻撃力は7、たまたまだろうけれど装備品の防御の合計値が7と同じ数値を示している。

 レベルに対するステータスの数値を確認するためにも、現在のステータスをメモにとることにして、インベントリに入れていた数学のノートに書き入れた。


 着替えの途中、夕べの召喚について尋ねてみると、形のない魔力の渦から温かい手が伸びてきたのでそれを掴むと、受肉果たしていたが、自我を得た時にはすでに護衛メイドの自分であったそうで、それ以前のことは分からないらしい。

 ただ召喚されると同時、魔力の急速な減少で意識を失ったらしい召喚主を見ると頼りないとか、弱そうとかではなく

「この寝顔を守りたい、そう思って膝枕していたのです。みているうちに、私も寝てしまいましたが」

 と、好意的に思えたと頬を赤らめながら教えてくれた。


 ちょっと納得いかないものを感じながらも、すでに真っ昼間なので、暗くなるまでに町を探さないといけない、急がないと・・~

「さて、これからどうしようか?アリアも最寄の町とか分からないんだよね?」

 まずここがEoSの世界かも分からないし、仮にそうだとしてもEoS初心者の私は勿論、召喚されたばかりのアリアが土地勘などの知識があるものだろうか?

 設定に矛盾しないメイドとしての技能と精神性は所持しているみたいだけれど・・・


「そうですね、ここは草原のエルフ族がすんでいるフリッガ平原に植生が似ておりますが、見かけた動物の種類はどちらかというともう少し西のモノに近いですね、同じものかはわかりませんが~」

 と、アリアはEoS世界の地理や生態系の知識は持ち合わせているみたいで、この世界もEoS世界の可能性が少し増した。


「~なので、隣の丘へ向かってみてはどうかと思います」

 隣の丘はここよりも20mほど高いらしい、そこまで登ればもう少し遠くまで、あわよくば町まで見えるのではないかという考えから、アリアは丘に上ることを提案し、私もそれを良しとした。


「それじゃ出発しようか」

 早速とばかりに私は立ち上がる。

 私の感覚では昨日の今ごろはまだヤヨと一緒にいたのに、一日足らずの間に色々とありすぎて、それなのに状況に慣れていっている自分が少し怖い。

 最初が最初だったから、上手く非日常に入り込めたのかも?

 アリアが言うには私が倒れたのは魔力の使いすぎが原因だけれども、もしかしたらアレは状況に対応できる様に私の脳が休息を求めていたのかもしれない。


 私は今の今まで裸同然の格好をしていたので、明るくなってから外に出るのは初めての事だ。

 少しワクワクしてきた。

「お嬢様お待ちください」

 だけどいざ扉に手をかけようようとした私に、アリアが待ったをかけた。

「なあにアリア?」

 気勢を削がれて少しムッとしながら、だけど決して無意味なことは言わないと、現在の私が唯一信頼できるメイドの顔を、不満を隠さずにジロリと見つめると、アリアは少し遠慮がちに発言する。


「類稀な魔法使いであるお嬢様に対して差し出がましいことかも知れませんが、ここは古の魔術師の簡易住居の様に見えます。何か使える物があるのではないでしょうか?」

 と、アリアは筐体内のドア近くにあるコイン投入口やカード排出口のある端末に視線をやる。

 暗に機械を壊して中身を暴けと言っている。


 ゲーマーとしては神聖な筐体を叩いたり蹴ったりするのも許せないところだけれど、この筐体はすでに半ば朽ちているし、二度とオンライン状態になることもないだろう。

 私が生き残るのに役立つかも知れないのであれば打ち壊す価値もあるよね?

 これが間違いなく筐体だとしたら、この中にありそうなのは筐体としての機能に関わる基盤や配線、センサー類、印刷用インク、百円玉それから・・・

「サプライズカードパックと印刷用のブランクカードか・・・」


 EoS2では、2つの方式でカードが排出されるという仕様に変更されていた。

 ゲームプレイ中に使い魔になるキャラやイベント配布のキャラ等を印刷して排出するモノと、旧来通り工場で印刷済みカードがカートリッジに詰められて、ゲームセンター側で補充していく形式のモノの両方が導入された珍しい仕様。


 なので、この筐体の中には印刷前の白いカードと印刷済の使い魔カード、それにプレイヤーICを作成するための空きカードが入っているはずだ。

 他はともかく、使い魔カードは今後の為に役立ちそう。

「そうだね、アリアこの箱壊せそう?」


 あちらの世界の常識から未だ解き放たれない私には、筐体を壊すことに抵抗がある。

 だけどファンタジー世界の常識を持ちそこに生きているアリアにとっては、ダンジョン内を探索する程度の感覚だろうと思い尋ねる。

 すると、アリアはナイフを取り出して箱の縁にかける。

 ナイフといってもグルカナイフの様な独特の反りがあるモノで、刀身も分厚い。


「開きました」

 そしてそれ以上に筐体はやはり作りは頑丈といっても、金属部分は錆びたりして弱くなっていたのか、意外とあっさりと外側が外された。

 本当ならばそこには前述の通りいろいろな物が収まっているはずだったけれど・・・


「ブランクカードのリールと、これはサプライズカードのパックかな?」

 そこにあったのは多分残り50枚分位のブランクカードの連なったものと、ビニールの様なもののカスがついている使い魔カードが40枚くらいバラバラに落ちていた。

 後は朽ち果てた金属や樹脂らしい何かがバラバラに散らばっているだけであった。


「魔術の道具は無事でも、入れ物は朽ちてしまったみたいですね、それにしても流石はお嬢様よく一目でここにあるとお分かりになりましたね、言われてみれば施錠してある金属の箱ですから、貴重品容れだったのでしょう」

 アリアは私がこの場所を見つけたことを誉めるけれど、 私の興味は中身の方だ。

 どうして外側は脆くなっていたとはいえ割りと無事なのに中身の機械はここまでバラバラに朽ちてるのか、そしてなんでブランクカードと使い魔カードは無事なのか

 いや、実際に召喚が可能なカードになっているのだからこれらは魔法の品という扱いになるのだろうけれど、納得しにくいものだ。


「お嬢様、どうぞ」

 アリアは手早く使い魔カードを拾い上げると私に手渡す。

 続けてブランクカードのリールも持ち上げて、私の手が空くのを待つ。

「ありがとうアリア」

 私は手渡されたカードを改めると一旦インベントリに突っ込む。

 後でまた確認して人型カードで消費魔力の低いものだけアイテム欄に移しておこう。


 だけど当面の間は、アリアだけかな?

 今は町に行くまでの隠密性、そのあともお金が使えるかとか懸念は多い。

 インベントリにあった帝国金貨は持ってみた感じでは、家にあった10万円金貨と変わらない位の重量感だから名前の通り「金貨」だと思うのだけれどこの世界の金の価値も分からないし、使われてる貨幣でないなら鋳溶かす必要がある。

 もしもお金が使えないのに、使い魔を何人もつれていたら食事が大変だ。

 アリアは魔法で水やお湯も出せるので飲料の問題は片付いたけれど流石に無から食料をつくる魔法はない。

 そして彼女もお腹はすくそうだ。


 とりあえずインベントリに入れたものを見るとブランクカードのスタック数は54枚、使い魔カードは37枚あったけれど被りもある。

 ブランクカードのアイテム説明は

『使い魔と契約するための無記名カード、強力な生物の死体や悪魔等を使い魔化することが可能な媒体』

 と書いてある。


 つまりこれを使えば新しい使い魔をつくることも可能になる?

 いやでも、とりあえずカードの子でいつになったら呼べるかもわからない消費魔力500超えのとかもいるし、そうそう使うことはないかな?

  強そうな竜とか倒す予定ないし。


「さぁ、目ぼしいものは回収したし、外に出よう」

「はい、お嬢様」

 ドア近くの「箱」を壊したので、今はアリアの方がドアの近くにいる。

 アリアはドアを開けて先に外に出て、ドアを開いたまま保持した。

 気分は貴族のお嬢様だね、何だか自分が物語の主役になったみたいな錯覚を覚える。


 そうよね、キラキラした友人たちにコンプレックスを持っていたのが、些細な事件やらなんやらで、キラキラした世界の御曹司やヒーローたちと出会って変革していくのも少女マンガの王道だもの。

 異世界?ゲームの世界?まだわからないけれど、兎に角魔法が使える世界に放り出されるという些細と呼ぶには大きな事件に巻き込まれた私は将に物語の主人公になろうとしている。

 その物語の一歩目がここだと考えて・・・うん

「いくわよアリア、まずはあの丘を上るわ!」


 前向きに行こう、私はこの世界を・・・楽しむんだ。

作中で分かりにくい表現がたまにありましたので補足を開始します。


新コーナー?「ムツキとヤヨイの質問部屋」

ヤ「ねーガーネット、ちょっとききたいことがあるんどけど?」

ム「どしたの?マーチ」

ヤ「この神聖な筐体を叩いたり蹴ったりするのも許せないってなあに?筐体ってゲーム機だよね?叩いたり蹴ったりすることがあるの?」


ム「あぁ、ゲームセンター初心者のマーチには馴染みが薄いよね、ざっくり説明すると・・・

○台パン・・・筐体に対して殴る蹴るする行為、大体は対戦相手やその時のプレイング、システムへの不満なんかを、ゲームセンターの資産である精密機械を殴る蹴るすることで発散すること、よそ様の車やパソコンを殴る蹴るするのと変わらない器物破損に問われうる行為、台バンと呼ぶ人もいる。

・・・くらいかな?あと周りの人も突然ドンとかバンとかいうから怖いしびっくりするの、自宅の家庭用ゲーム機でやれって感じ!」


ヤ「・・・・・・・(無言で首を振る)」

ム「マーチ?」

ヤ「やっぱりゲームセンター危ないよ!帰ろう!」

ム「わぁ、マーチ落ち着いて・・・コーナー化するかわからないけど、またねー!!」

ヤ「ムツキ帰ろうよー!」

ム「ワアァァァァァァァァァァァ!!」


※ゲームセンターは自宅ではありません、私物でないものを殴ったり蹴ったり揺すった抱き締めたり大きな音をたてたりは止めましょう

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ