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Gプロローグ3

 ヤヨの為に余剰なカードの供出を求めたエビちゃんの声が響いた後

 常連さんたちは余りカードを出しあって、閃国やEoS、戦略これくしょんに、私が名前すらわからないロボット物のゲームまでたくさんの余りカードを出すと、ヤヨのために供出した。

 ヤヨはろっこつさんに羽交い締めにされながらも一人一人にペコリペコリと頭を下げてお礼を言っている。


 美人なろっこつさんに金髪美少女のヤヨが抱き締められているのはなかなかに幸福度の高い光景で、何を思い浮かべたのかモグリーマンさんが顔を赤らめてろっこつさんに殴られ、他の常連さんたちも羨ましそうにみている。

 と、そこにCOPさんが

「マーチ嬢、6番台が空くよ」

 と、ヤヨを呼んだ。

 いつの間にか結構時間が経っていたみたいだ。


「あ、はーい、ありがとうございます、それじゃガーネット、よろしくね?」

 少し話していて多少慣れてきたのか、ヤヨはにこやかにCOPさんにお礼を言って、筐体の前へ、何人かの入っていくのをみていたヤヨは筐体から前の人が出るのを確認してペコリと一礼、出てきたプレイヤーは緊張した金髪美少女ヤヨの会釈に顔を赤らめた。

 そしてゲームセンターに不馴れなヤヨのために私も一緒に筐体の中にはいる。

 ただ筐体の中から見える映像はゴーグル越しでないと完全な状態にはならないから、少しでも早くやりたくて、ヤヨと10人分空けて私の名前も書いてきている。


 筐体の中は一人なら両手を広げて回れる位には広い。

 そしてドアの辺りにコイン投入口と専用ゴーグル、少し柄の長い短剣型のコントローラーがある。

 私はすでにやる気満々でお年玉貯金からゴーグルを購入しているけれど

 ヤヨは勿論持っていないので備え付けのゴーグルを使う。


 ヤヨは可愛いから大きなゴーグルをつけてもSF物のヒロインみたいでとても似合っている。

 小さい顔に大きなゴーグル、そして挟まった金髪をかきあげる仕草、そのすべてがヒロインらしくて引き込まれる。

「このゴーグルすごいね、大きいのに軽いし、見える景色も綺麗・・・」

 初回プレイチュートリアルは200円、プレイヤー情報を生体情報と一緒に記憶するICカードが発給されて、次回からはそれを専用ゴーグルにセットしてゲームを開始する。

 私の目の前にある映像を信じるなら、今ヤヨの見ている世界には名前を決める画面が出てるはずだ。


「ヤヨ名前は、マーチにするの?」

「え、うん、そのつもり、名前と意味がほぼ同じだし、発音的にも覚えやすいし・・・」

 まぁ確かにマルタとマーチなら発音も近いし、弥生とほぼ同じ意味だし覚えやすいか


 画面の映像は、ゴーグルなしだと少し横に広がって見える。

 ヤヨは宣言通りマーチと名前を入力して、次は性別を選んで、キャラメイク、ヤヨは自身を投影するタイプなのか金髪に青い瞳、彼女と同じく小柄の・・いや彼女自身よりはやや高い身長のキャラクターをデザインした。

 ちょっと願望をいれたな?


 次はオープニングイベントムービー、この間に虹彩と顔情報が採取される。

 また初回プレイ時は印刷されるカードが多いためオープニング中にもカードの印刷が始まっている。


 ストーリーの概要はこうだ。

 度重なる戦乱の時代、ある時、後に血の帝国と呼ばれる国が興り、多くの血を流して大陸を平定した。

 人々は束の間の平和を享受したが皇帝が死んだ後、さらに7人の皇子たちが国土を7分し血で血を洗う跡目争いを繰り広げ始めた。

 これはそんな荒廃した世界の物語。

 プレイヤーは主人公の少年(少女)オスカー(エレット)となり、武技と召喚術を駆使して戦う。

 オスカー、エレットはデフォルトの名前でゲーム中は先程つけたプレイヤーネームで呼ばれることになる。


「ねームツキ、今オープニングの前になんか何も音が聞こえない時間があった気がするんだけど?」

 おや?夢中になっていたヤヨが気になることをいっている。

 少なくとも私はずっと音楽が聞こえてたし、ストーリーを読み上げるプレイヤーの師匠ゲイツの渋い声も聞こえていた。


「夢中になりすぎて聞き逃したんじゃない?こっちはずっと聞こえてたよ?」

 と答えるとヤヨは納得行かない様子で

「でもムツキの声も聞こえなかったんだよ?」

 と、もごもごしながら呟いたが、やがてチュートリアルが始まると黙ってプレイを再開した。



「うわー、すっごい楽しかった。絵綺麗だし、臨場感パないし!ちょっと高いけど、部活のないときは一緒に寄り道しようね?」

 と、プレイ直後のヤヨは印刷された一枚のカードと通常排出の二枚のカードを見つめながらとても興奮した様子ではしゃいでいる。

 それから先程もらったカードたちをケースから取り出して見ると、興味深そうにしてそのカードをくれた常連さんに話しかけて話を聞いている。

 いろんなゲームに興味を持ったみたいだ。


「あ、ガーネット嬢、そのまま6番台に入って、ちょうどガーネット嬢の順番だよ」

 と、COPさんが、待ち席に戻った私に声をかける。

「あ、はい、ありがとうCOPさん、マーチ!私もチュートリアルしてるからー」

 と声をかけるとヤヨは満面の笑顔でこちらに手をヒラヒラと振った。


---


 もう一度筐体に入ると、私はまず自分のゴーグルを取り出してセットする。

 筐体にセットされているものと比べるとフレームのデザインやロゴが少し違って、間違え難い様になっている。


 それからコインを投入してチュートリアルモードでゲームを開始する。

 名前はいつも通りガーネット、外見もキャラメイクできるゲームではいつも赤いロングヘアの細身の女の子で造るので同じ様にする。

 初期装備も剣、斧、槍、弓、杖から選ぶことができたので、主人公らしく剣にする。

 すると手に持っている絵の長い短剣型のはずのコントローラーがゴーグル越しには剣に見える様になった。


 キャラメイクが終わると次はオープニングだ。

 さっきはゴーグルごしではない横長い画面と、臨場感のある音声だったのでちぐはぐで少し物足りなかった。

 今度はゴーグルごしなのでもっとのめり込めるはずだ。

 そう思って身構えるけれど、なかなか始まらない?

 画面は暗転したままで何の音もしない。


 故障かな・・・?いやさっきヤヨがいってた何も聞こえない時間があったというやつかな?

 あ、画面がついた。

 でも何かおかしいな、ゴーグルをつけてるはずなのに先ほどまで下に見えてたメニュー表示が見えない?

 と思ったら視界がちょっとずつ高くなってきた・・・?


「あーこれがさっきヤヨが言ってた、暗くて何も聞こえない時間ってやつかぁ、バージョン初期だし不具合かなぁ?でもOPの臨場感パなかった!おっとイエスイエス・・・チュートリアルしないと何がなんだかわからないよね」

「(え?)」

 聞こえてきた声に、思わず驚きの声が漏れる。

 今の声って・・・。

「(私!?)」

 って、叫んだつもりなのに声がでない!?


 そこにいたのはゴーグルをつけた私、手には短剣型コントローラを握って、さっきのチュートリアルが始まった時のヤヨみたいにコントローラを小さく縦に振ったり横に振ったりしている。

「(ちょっと待って!それ私も、見たい!っていうかOP見えなかった!私も見たいの、臨場感あふれるスゴイオープニング私にも見せてってばぁ!!)」

 私の声が聞こえないのか、ゴーグルをつけた私は夢中になっている。

 そして

「なるほど!これで、こう!召喚するのね」

 そういいながらゴーグルをつけた私は空中に空いている手を差し出すと、人差し指で何かを抜き取る様な動作をする。

 そしてそれをそのまま短剣型コントローラの上の空間に当てると、再度振るった。


 短剣型コントローラーが光を放ち、画面が明滅する。

 それが、私が睦月として最後に見た光景になった。

なんとか日付け変更に間に合いました。

次から転移後の話が始まります。

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