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G43話:レベル5の能力

 前回のあらすじ

 私にとって3戦目となる(アリアが一人で対処したものも含めば4戦目かな?)魔物との遭遇戦、なんとか同行者を守り切った私たちはその距離が少し近くなった。

 

---

 ダンピングサラマンダーの死骸をアーニャのアーススパイクと縄を利用して吊るし、血を抜いた。

 さらにたくさんの血が池に流れ込んでいったけれど、やっぱり新たなダンピングサラマンダーは出てこなかった。


 そういえばこの池の水は農業用水と、町の水路へと流れていき住民が利用するそうだけれど、こんな血を流し込んで良いのかな?と気になって尋ねたところ

『そもそも普段から魚やカエル魔物たちの暮らしている池ですからね、農業以外は湧いている方の水をよく使います。水路の水はモノを冷やしたり、掃除や洗い物するのが主な用途ですかね。湧いている水を使うと変にカスが浮いたりするので』

 とのことだった。

 多分温泉でもあるザラオの湧き水にはミネラルがいっぱい含まれてるから何かしらの化学反応があるんだろうなと納得する。 


 貯水池の外周、水際からは離れた場所を歩きながら、先ほどのダンピングサラマンダーの死体に近づく魔物は居ないかとか、他に動く物は居ないかと周囲を見渡す。

 先ほどの反省も踏まえて、比較的広めにミニマップを表示させてレーダーも常時観測している。

 幸いにして、現在身近なところに魔物や動物の表示はなく少し離れた水の中に、平穏な状態のものがポツポツいるくらい。

 虫なんか結構いっぱい飛んでいるのに、レーダーに映らないのはどういうことなのかちょっと気になるけれど、恐らくはEoS的な基準で表示されるかどうかが決まっているのだろうと考える。

 考えたところで答え合わせなんてないんだけれどね。


 レーダーを目で確認していればある程度安全だし、今はもう油断していないアーニャとアリアもいるので、私は現在ちょっとした確認作業中。

 というのも、先ほどのダンピングサラマンダーが息絶えた後私の視界に映るものがあり、安全だと判断するまでその確認を後回しにしていたためだ。


 先ほど大分落ち着いてきていたアーニャと会話している途中、唐突に私の視界にいつものシステム画面と同じタイプの窓が表示された。

 そこには・・・。

『Lvが5に達したためチュートリアル【賢者の武器】が開放されました。確認しますか?』

 というテキストが表示されていた。

 久々のゲーム的演出にちょっと前までの日常を思い出して寂しい気持ちにもなってしまった。


 YESとNOの確認があって、閉じると今後見られなくなるかもと思うと怖くて、それを放置したまましばらく捜索をしていたのだけれど、チュートリアルの確認は何が起きるかわからないから一旦置いておくとしても、Lv5になったステータスの確認くらいはしても良いかな?

 と、考えたわけだ。


 前回Lv4になった頃、まだ名前も知らなかったジャンさんたちを追うロードランドッグの群れを襲撃した時は、装備のステータス画面で賢者の短剣と、ムツキの防具が数値的に成長しているらしいと分かったのだったか。

 ノートを今はインベントリに収めているのでうろ覚えだけれど、ステータスの伸び幅もレベルで割り切れない数値だったから、Lv毎に一定値育つ形式ではなさそうだと考えたんだったかな?


 今のステータスを見てみよう。

 アーニャの背中を追いながら、MENUをタップし、ステータス画面を確認する。

 ガーネットlv5

 HP1220/1220 MP40/40 STR17 INT29 VIT15 AGI20 DEX18


 次いで装備画面のステータス・・・装備合計値込みの数値が

 ATK69DEF87MATK63MDEF54


 装備合計値を合わせて考えると革コートが防御15なので、賢者の短剣がATK+31制服セットがDEF37ということになる。

 正確な数値を覚えてるわけじゃないけれど、これ結構伸びてるんじゃない?

 Lv4の時の数値は後でメモを確認しないと分からないけれど、アリアとの攻撃力の比較で印象があるのでLv2の時の短剣込みのATK30は覚えている。


 Lv2から5まででレベルは倍以上になっているとはいえ、ATKまでが2倍以上になっているのは人間としてどうなのだろう?

 筋力というか膂力というか、力自体の強さが上がったのか、Lvの上昇に伴って武器を振るう技術などを含めてのATKなのかな・・・?


 ただ筋力的な数値を意味するのがSTRの方だとして、それでも倍とは言わないまでも1.5倍は上がっていると思う。

 私自身にそこまで変わったという印象はないけれど、気を付けないとリュリュのおててを痛くしてしまう・・・なんてことが起こってしまうのだろうか?


「(そんなことしたら二度と甘えてくれないかも!?)」

 気を付けよう。

 というか、歩兵用の剣が攻撃力+12なのに短剣で+31って・・・早くもRPG的なインフレが起きているのかもしれない、序盤の町の正規兵からかっぱらった剣の8倍斬れるハリセン!?みたいな


 それからアリアのレベルも1つ上がっていた。

 ステータスは

 アリア レベル9 絆0

 HP513/514 MP19/19

 ATK124DEF59MATK2MDEF39AGI44ACC48

 アンシーリーコートとラルフさんのお店で買った革ドレスとを装備しているから数値が少し大きいかな?

 アンシーリーコートが確かATK75なので彼女自身のATKは49ってことになる。


 それにしてもアリアたち使い魔のステータスのACCってなんの略だろう?

 私のステータスとちょっと表示が違うけど、RPG的にはDEX(器用さ)の代わりにACCがある感じだから・・・accelerate(加速性)ではないよねぇ?どっちかといえばAGI(素早さ)ぽいし

 私の知らない単語だとどうしようもないね、一旦棚上げ。


 ティータやカノンたちはLv上がってないのは、経験値が足りないのか、それとも近くに居なかったから経験値が入ってないのか。

 とりあえず直接攻撃に参加していないアリアに経験値が入ったっぽいのが確認できたのは収穫だね。

 近くにいたからなのか、攻撃を受けた味方を庇ったから戦闘に参加した扱いなのかは判断に困るところだけれど・・・。

 使い魔たちも成長できるらしいこと、それに気弱で戦闘への参加が難しそうなカノンでもレベルアップさせられそうなことが分かったのは大きい。

 治癒術使いのレベル上げは絶対に大切なことのはずだ。

---

 周囲の探索を行っていた私たちはその後一度だけダンピングサラマンダーの死体狙いらしい猫系の獣と遭遇した。 アーニャはウォーターサイドキャットという魔物だと言ったけれど、私には小型で毛足の長いジャガーか豹に見えた。

 1頭で現れたソレは自分よりも大きいダンピングサラマンダーの死体を目視するとトコトコ駆け寄ってきた。

「大事な証拠品です。不要に傷つけさせないでください!」

 というアーニャの号令に従って私たちはそのウォーターサイドキャットも倒した。


 ワンちゃんに続いてネコちゃんかぁと若干げんなりしながらもパーティらしくアリアと二人でアーニャを守りながらの戦闘を行った。

 ロードランドッグよりも賢いのか、こちらの攻撃を何度か避けられたので少し驚かされた。

 だけど私がナイフを持ってない方に回り込んで飛び掛かって来たときに咄嗟に振りぬいた私の左手がたまたまその爪を潜り抜けて胸の辺りに当たったあたりから明らかに動きが悪くなって、アーニャのアーススパイクで止めとなった。

 魔物だと言われたけれど、私には動物との区別がつかなかった。


 ウォーターサイドキャットを倒したところで、証拠物を運搬するためにみんなと合流することにした。

 アーニャがターニャさんやリサさんと決めていた合図で光と音を放つ魔法の弾を数発空に打ち上げる。

 他所のパーティーが間違わない様に複雑なパターンを決めているらしい。


 それからアーニャさんが

「それでは休憩する前にウォーターサイドキャットも血を抜いて置きましょうか、軽くなりますし臭みも出にくくなるので・・・」

 と言ったので、ダンピングサラマンダーと同じ様に待ちの間に血を抜く。


 驚いたのだけれど、肉食の魔物や動物の肉も、この世界では普通に食べられているらしく。

 脂の乗った家畜や美味しいため人気の鹿程高価ではないたんぱく源として、平民に消費されているとのこと。

 ただし直前に人間が襲われる被害があった場合などは忌避されるそう。

 人間を襲った可能性が高くなるから、その肉は食べたくないらしい。


 それにしてはジャンさんたちは初めての時、毛皮と大きな牙以外は埋めてきたよね?

 なんでだろう?

 まぁ機会があれば尋ねてみよう。


 それから先ほど確認したことだけれど、ここに居る三人は獲物の解体が不得意だった。

 私とアーニャはまず解体自体がほぼ無理、アーニャは力不足、私は命の懸けの戦闘で殺めることはできる様になったけれど、落ち着いてからその肉に刃物を通そうとするとちょっと吐きそうだった。

 暫くお肉が食べられなくなりそうなのである。


 アリアはできないことはないだろうけれど、フォニアに任せた方が精肉も毛皮の採取も綺麗にできるだろうということで辞退した。

 血抜きだけ終えて、アーニャの魔法で氷の柱を地面に突き立てて温度を少しでも下げ、傷みを遅くして皆の合流を待つ。

 その間に多少暇の出来た私は、チュートリアルを消化することにした。


 アーニャが氷柱を出すために集中している間に小声でアリアに話しかける

「アリア、私ちょっとの間作業するから、反応しないかもだけど、任せていい?」

「はい、畏まりました。お任せください」

 アリアは優秀かつ忠実なメイドなので、聞き返したりすることもなく頷いた。

 正直私より警戒心も、ナイフ捌きも上なので安心して任せることにする。 

 先ほどから開いたまま視界の端っこの方に避けていたチュートリアル開始の窓を視界の真ん中にスライドさせて、少しドキドキしながらYesを押すと・・・。


『チュートリアル【賢者の武器】を完了しました』

 とすぐに次の窓が開いた・・・・へ?


「(ちょっと!チュートリアルっていうからには細かい説明とかムービーとかあるんじゃないの!?)」

 混乱するのも束の間、私は私の身に何が起こったのかを理解できないまま、何ができる様になったのかを理解し始めた。

 チュートリアルの完了後数秒かけて、一体なんのチュートリアルが行われたのか頭の中に、経験を伴わない記憶として付け加えられていく。

 少し気持ち悪い感覚を覚えながら、私はメニュー画面を見つめて確認してみる。


「(おぉすごい、手で視界の文字をタップしたりスワイプしたりしなくても操作できる・・・それに)」

 今度はメニュー画面を意識せずにミニマップの大きさの変更や光度の変更を試してみると、メニュー画面を閉じたままでもそれらが操作できる状態なのを確認できた。

 なんというか、今まで操作用のインターフェースでしかなかったメニュー画面が体の一部になったみたいにある程度随意に切り替えられる。

 数値の確認なんかは相変わらず画面を見ることになりそうだけれど、いつぞやのどこかの村の夜みたいなときに咄嗟に光度や彩度の調整が利くのも、人前でメニュー画面の操作という怪しいダンスを踊る必要が減るのも、私にとってとても有難いことだ。


 それから大事なことがもう一つ。

 チュートリアルの題にもなっていた賢者の武器について

 EoSでは主人公の初期武器は剣、斧、槍、弓、杖から選ぶことができた。

 にも関わらず私の武器が短剣だったのは、ゲームの筐体の中で振り回す都合上の設定なのか、オープニングイベントで死亡する師匠ゲイツから受け継ぐ時点では短剣で、普段持ち歩くときも短剣の状態で持ち歩くという設定があったが為の様だ。


 そして今本来の使い方が分かった。

 賢者の短剣は持ち手の経験と意志によってその形を変える。

 今はまだ短剣と剣、斧、槍、弓、杖だけの様だけれど、経験次第でさらにその形態は増えていくみたい。

 そして私はそれを自由に、それこそ戦闘の最中に持ち帰ることなく使い分けることが出来る。

「(まるで超能力みたいだね)」

 まだ実際に使いこなした訳ではないのに、私には武器の取り回しを含めて出来てしまうことが理解できている。

 不思議な感覚だけど、わかるのだから仕方がない。


 思いの外あっさりとチュートリアルが終ったので、アリアにもう良いよと告げると、若干きょとんとされた気がする。

 無論デキるメイドである彼女はそんなことを悟らせないけれど、私にそれを悟らせていないと逆にわかってしまう。

 反応が自然すぎるのだ。


 チュートリアルが短かったおかげで、アーニャになにかしらの不自然を感じさせたり、ぼんやりとした私を見られて心配かけたりしなかったのは良かったけどね。

「お待たせしました。ふぅ・・・これでとりあえず私にできることは終わりましたので、姉さんたちが来るのを待ちましょうか」

「お疲れ様、待ってる間私たちも涼しくて良いね、魔法って便利だね」

「お疲れ様です」

 と、私たちのやり取りに全く気付いた様子のない、一仕事終えたアーニャを労い。


 私たちはしばし水辺で休憩しつつ、仲間の到着を待つことにした。


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