G42話:3戦目
前回のあらすじ
3チームに別れてレッサードラゴンの捜索を開始した私たちは貯水池に着いた直後、池から飛び出してきた大きな生き物に襲撃された。
狙われたアーニャさんとの間に慌てて割り込んだ私の短剣は、一度は敵の急所を捉えたけれど、手応えはなぜか失われてしまったのだった。
---
「(そんな!?確実に首を捉えたと思ったのに!?)」
突然軽くなった手応えに私は動転していた。
勢い良く飛び出た私は、短剣を振り抜いたこともあり、未だ後ろを振り返る事が出来ないでいる。
不自然に途切れたアーニャさんの悲鳴の意味を確かめたいけれど、このまま遠心力に任せて振り返ってしまえば、私はバランスを崩して背中から池に飛び込むことになる。
そうならないためにはもう一度は地面を踏み込んでから反転する必要があった。
不用意な体勢で水の中に入れば殺到する物が、まだ水の中にいるかもしれない。
MAPではアクティブになっている敵はほかに居ないけれど、私のそれが合図になるかもしれない。
ほんの1秒たらずの時間が、とても長く感じる。
アーニャさんは無事なんだろうか?
びっしりと並んだ牙だった。
この際多少のケガなら良いから・・・そんな事を思う。
一体どれくらい経ったのか、私の右足は漸く水辺の草を踏みしめた。
繊維が折れ、ちぎれる感触が靴越しに伝わってくる。
一歩では止まりきる事ができず更に二歩踏みしめて私は反転する。
「うっ!」
目に飛び込んで来たのはおびただしい量の血、斜面の草を真っ赤に濡らしたそれは、私の敵の方から続いていた。
そして、その向こうには・・・
「はぁ、良かった。間に合ったんだ」
思わず安堵の息が洩れる。
トカゲというよりはウーパールーパーに似た姿のそれは首の一部を切り裂かれて血を垂れ流して居るものの、未だじたばたとあばれている。
その向かって左側にはアリアが居て、アーニャさんの口と胸の辺りに手を回して尻餅をついていた。
だからアーニャさんの悲鳴は途切れて、アリアナイス!さすがは護衛メイド、アーニャさんが無事で良かった。
まだ少し混乱してるや、て、私も今貯水池に背中向けてるし離れた方が良いね。
暴れるウーパールーパーもどきの横から回り込む様にしてアリアたちの方へ向かう。
「あ、ありがとう・・・」
アリアが手を離すと少しだけ荒い息をしたアーニャさんは、その目尻に涙の粒を溜めたままでお礼を言った。
あの一瞬死を覚悟したのだろう。
未だに震えて、アリアに支えられながら立ち上がる。
「申し訳ありません、私、先輩面しておきながら、お二人が居なければ今頃・・・」
未だに暴れ続けているウーパールーパーもどきの傷を見るに、私の突き入れた短剣はそのまま敵の体重と勢いで首の後ろ方向を切断し、そのために手応えがなくなったらしい。
ウーパールーパーに似ている割には、その口の中にはびっしりと歯牙が生えており、強い肉食性を感じさせる。
アーニャさんを襲ったところからみてもプレデターであることは疑いようがない。
首の過半を切断された事で体のコントロールが利かないのだろう、ジタバタするばかりでサークルゲージが出ることもない。
暴れてるうちは危ないから近寄らないけどね。
「いえ、アーニャさんが無事で良かった。ケガでもさせたらターニャさん達に申し開き出来ないところでした。アリアもありがとう」
「いえ・・・」
気づくのが遅くなってしまい申し訳ない、とかかな?アリアは何か言葉を飲み込んだ。
でもアリアがアーニャさんを引き倒してくれなければ、アーニャさんは噛みつかれるか、そうでなくても押し潰されてしまって居ただろう。
二人いたから彼女を守る事が出来たのだ。
「こんなに大きいのがいるなんて、やっぱり繁殖してるんでしょうか?」
2m程の巨大なウーパールーパー、きっとさっきの小さい奴の親に違いないと思ったのだけれど、アーニャさんは異なる見解を示した。
「いいえ、これはまだ若い個体です。おそらくまだ繁殖能力もないかと・・・それに今は夏です。自然状態の繁殖期は寒冷期前だとされていますから」
だとすると、さっきの幼生を見た時点でアーニャさんの見解は決まっていたの?
「それってつまり・・・」
「はい、何者かが人為的にコレの移入を行い、飼育下で産卵、孵化したものが何らかの理由でエストレア農園の敷地内に出たということになります」
つまりその人為を為した者がアーニャさんたちの目的ということか?
アーニャさんと話をしていると私の短剣についた血をアリアが拭ってくれる。
「さて、これらは同種の血の臭いにも強く反応するはずなのですが、池は静かなものです。おそらくはこの池には大きめな物はコレ一体しか居ないのでしょうが・・・どうしてこんなに半端な物が一体だけいるのか」
呟きながら彼女は血のついた草をいくつか千切り取ると貯水池に投げ入れていく。
やっぱりそれらしい反応はなく、代わりにエサかと思ったらしい魚がちゃぽちゃぽと音を立てる。
水の中から出てくるものはいない。
それを満足そうに見つめた後で、アーニャさんは振り返りこちらに戻ってきながら
「ところでさっき、私のこと、アーニャって呼びましたよね?」
と、少し照れくさそうにしながら尋ねた。
「あはは、ごめんなさい焦ってたので」
「いえ、折角声をかけて頂いたのに棒立ちになってしまってすみませんでした。それと、ムツキさんとアリアさんの方が年上なんですから、呼び捨てていただいて構わないのですよ?」
傍らに動きが緩慢になってきたウーパーもどきが居なければ、クール系美少女が私にデレたシーンのはずなのだけれど、血糊とウーパーのせいでちょっぴりシュール。
「えっと、じゃあ・・・アーニャ、よろしくね?」
それでも彼女との仲が深まることには何も不都合はないので、早速とばかり呼んでみる。
「はい、こちらこそ改めてよろしくお願いします」
そして二人で、アリアの方を見つめると
「私もですか?それでは、コホン・・・よろしくお願いしますね、アーニャ」
と、若干やりにくそうにしながらアリアもアーニャの事を呼び捨てた。
メイドであるアリアは本当は人を呼び捨てたりするのはちょっと苦手、同じく私に仕える者の妹分として認めたあの子たちならまだしも、よそ様であるアーニャを呼び捨てるのは抵抗が強いみたいだ。
それでもまだ年下の女の子相手だったからか、私とアーニャの無言の圧力に耐えかねたのか、折れてくれた。
------
(アーニャ視点)
姉さんたちと別行動を選んだのは、巻き込んでしまうことになった彼女達だけで行動させることが危険になったからだ。
もともとここまで性急に事を運ぶつもりはなかったのだけれど、成り行きでこうなってしまった。
「(まさかいきなり本命を引き当てるだなんて)」
元々はフォニアさんのことを応援したいと思って、エストレアと引き合わせて、私の自由にできる馬の内の二頭をエストレアの物だと偽って譲ろうと思っていただけなのに裏目に出てしまった。
ううん、そうじゃないよね、私が今日彼女達とともに向かうことを選んだ結果、たまたま本命と引き合ってしまっただけのことだ。
悪いことにはさせない。
伯爵様がいらっしゃった後で良かった。
結果的に私たちの役目を果たすのが早くなったことになる。
おそらくあのダミアンという男は黒だ。
休憩中に別行動になった私たちの動向まで監視していなかったと思うけれど、もしも何も知らないムツキさんやフォニアさんたちだけでいるときに仕掛けられてしまえば、彼女達の身柄が敵の手に落ちてしまうかもしれない。
そう考えた私は予定を変更してこの組み分けを選んでいた。
本当は姉さんと一緒にいるべきだったのだろうけれど、私たちの目的のためにこんな素敵な人たちを危険な目に合わせる訳にはいかなかった。
茂みや水路を確認しながら貯水池までやってきた。
ここは確か小型のカエル魔物と水棲のネズミ魔物くらいしかいない、たまに中型肉食魔物のウォーターサイドキャットもいるらしいけれど、私はザラオ近郊で見たことはない。
整備されて長い年数の経った貯水池はもはや上と下の水門がなければ自然な池沼の様に見える。
それにしても、ムツキさんはずいぶんときょろきょろとしている。
言動から世間知らずのお嬢さんぽい印象を受けるのに、言葉の端々には知性を感じる。
察しも良くて、こちらも話を進めやすいと思った。
とても華奢で、楽器ですら持ったことなさそうなのに強姦未遂の暴漢に馬鹿力と罵られたとか・・・。
不思議な魅力を感じさせる。
うん、そもそもその容姿からして人を惹きつけるに足るモノは持っているのだけれど・・・。
さらに何度か言葉を交わして、私は水際まで歩いていく。
「さて、移動も考えると1時間弱くらいしかここでの調査はできません、とは言え魔物もいるはずなので、手分けして探すこともできません、あまり離れない様慎重に行動しましょう」
丘の外から私の姿が完全に見えない所まで降りてから、二人の方を振り向く。
まだ斜面を降りている途中の二人を見上げる様にすると、二人の細い下半身のラインに目が行く。
ムツキさんは革のコートを着ているからたまにしか見えないけれど、何か黒いぴっちりしたもので足を覆っていて、その細さが際立って見える。
アリアさんの方は裾から足が見えているのだけれど、よく引き締まっていて鍛えられているのだと分かる。
白銀の髪をして大人びているアリアさんと黒と赤の混じった様な髪に小柄なムツキさんと、対照的で、でも二人ともとても綺麗で、すこし見惚れてしまった。
それは本当に一瞬のことだったはずなのだけれど・・・私の反応は遅れてしまった。
「アーニャ!こっちへ!!」
パシャンッ
二つの聞きなれない音、私は両方に気が付いて、そして危険度の高い方を先に確認しようとしてしまった。
とうに確認なんて段階は通り過ぎているということに気が付かなかった。
冒険者として、あまりにも迂闊でした。
水の中から飛び出したのはダンピングサラマンダーの若い個体、恐らく今年の春頃に生まれたものだろうけれど、その体躯はすでに十分に脅威と言える大きさに育っていて、その歯牙も爪も、私の体を裂き肉の塊にするに十分な威力を持っていると私に知らしめた。
まるで私を庇う様に、ムツキさんが私の隣を通り過ぎて相手に向かっていく、だというのに・・・。
たった今まで歩いていたのに、私の足は痺れた様に動かない。
すこしずつ大きくなる赤暗い穴
すぐに届くであろう暴威への恐怖に体が震え、喉から勝手に声が漏れる。
「きゃぁぁぁんぅっ!?」
しかし、後ろから伸びてきた何かによって、私の口と胸のあたりが圧迫されそして体がもっていかれる。
そしてすぐにドンという衝撃を感じるけれど、感じた衝撃のわりに私に痛みはなかった。
すぐにアリアさんが私を助けてくれたのだと気がつく。
革のドレス越しでもわずかに伝わってくる弾力が、あの恐ろしい生き物の牙が私に届かなかったのだと知らしめる。
「はぁ、良かった。間に合ったんだ」
と、暴れる生き物の向こうでムツキさんが呟いた。
その手には血らしき液体の付いた短剣が握られて、彼女が私を守るために魔物の首を掻いたのだと一目でわかる。
彼女は安堵した様子で、暴れるダンピングサラマンダーを迂回してこちらに近づいてくる。
アリアさんが手を放してくれたので、私も口で息をして呼吸を整えながら立ち上がる。
「(お礼・・・言わないと)あ、ありがとう・・・」
足が震えていることに気が付く。
でも仮初とは言え冒険者の先輩として、恐怖で足が萎えたなどというところは見せられないというのに、情けないことに視界は涙でぼやけ、足も私の言うことをきかない。
アリアさんが私の腕の下に手を添えて支えてくれる。
悔しいけれど、これはもう口にしなければ逆に恥ずかしいことになる。
「申し訳ありません、私、先輩面しておきながら、お二人が居なければ今頃・・・」
ムツキさんは私の方へ向かってきながら、それでもいまだのたうち回る魔物に視線を向けて警戒している。
そして十分な距離のところまで行くとようやく私だけを見てくれた。
ちょっと照れる。
「いえ、アーニャさんが無事で良かった。ケガでもさせたらターニャさん達に申し開き出来ないところでした。アリアもありがとう」
「いえ・・・」
ムツキさんはアリアさんを労い、アリアさんはどうということもないとばかり小さく応えただけ、タイミングを外してしまったけれど、後でアリアさんにもたくさんお礼を言わないといけない。
今は照れてしまって、ちゃんとお礼を言えそうにない。
「こんなに大きいのがいるなんて、やっぱり繁殖してるんでしょうか?」
でも今は先にお仕事に関係のある話をしよう。
「いいえ、これはまだ若い個体です。おそらくまだ繁殖能力もないかと・・・それに今は夏です。自然状態の繁殖期は寒冷期前だとされていますから」
大きさはずいぶん大きなっているけれど、まだ冬を越していない若い個体だというのは、首後ろの角を見ればわかる。
まだ角は小さくて、軟骨の様に柔らかそうな質感を持っている。
冬を越したダンピングサラマンダーの角はもっと硬く、頭よりも大きくなるらしい。
「それってつまり・・・」
ムツキさんは本当に賢い方だ。
おそらく私の言わんとするところに気が付いたのだろう。
冬前にならないと自然繁殖はないと言っているのに、この季節に幼生が居た意味、それは人為的な介入を意味する。
たとえば温めたお湯のプールで飼っていればこの季節にでも産卵する個体がいるかもしれない。
いくらレッサードラゴンの肉が一部の好事家の間で珍重されていようとも、常時温めたお湯で飼育だなんて魔法道具を用意していたとしても魔力が枯渇して人件費コストに見合わないだろう。
けれど、ザラオには温泉が湧いている。
何者かがレッサードラゴンの肉の養殖の為か、あるいは何か反社会的な目論見の下にダンピングサラマンダーを繁殖させている可能性があるのだ。
とはいえ今の時点では・・・。
「はい、何者かが人為的にコレの移入を行い、飼育下で産卵、孵化したものが何らかの理由でエストレア農園の敷地内に出たということになります」
これくらいしか言いようがない。
何者かというのももうほとんど確定している様な物なのだけれど、この町に来たばかりのムツキさんは知らないことだろう。
アリアさんがムツキさんの短剣を手入れしている。
その背中を見つめながら私はようやく足の震えがおさまり、感覚が戻ってくるのを感じた。
そして目下危険なことに気が付いてしまった。
そのことに気が付くと、瞬間的に顔が熱くなってくるのを感じる。
ごまかす方法はないだろうか?
私はムツキさんたちの方に顔を向けなくても自然な様、池の方にもう一度向かって歩く。
「さて、これらは同種の血の臭いにも強く反応するはずなのですが、池は静かなものです。おそらくはこの池には大きめな物はコレ一体しか居ないのでしょうが・・・どうしてこんなに半端な物が一体だけいるのか」
呟きながら血のついた草をいくつか千切り取ると貯水池に投げ入れて、湖面の様子を探るけれど魚がちょっといるくらい。
その水の波紋が乱雑に広がっていくのを見つめているうちになんとか一つ、ごまかしになるかどうか怪しいところだけれど思いつく。
「ところでさっき、私のこと、アーニャって呼びましたよね?」
振り向きながらちょっと悪戯を思いついた様な、それでいて突然名前を呼ばれ恥ずかしかったという様な表情を作って見せる。
女同士で名前を呼び合う様なのは仲の良い友人同士という感じがするものの、照れる様なことではない。
私に友達がいないとかであればまた違ったかもしれないけれど、私は多くはないけれど友達もいるし照れる様なことでは断じてない。
だから男の子に名前を呼び捨てられた様に頭の中で想像してみた。
もしもこの可愛いお姉さんが、それでいて私を魔物から助けてくれた格好いいお姉さんが、男の子だったら・・・って想像しながら、だと予想以上に照れ臭くなった。
「あはは、ごめんなさい焦ってたので」
私を助けるための呼び捨てだったのに、謝罪する彼の笑顔に鼓動が跳ねた。
「(だめだめ、ムツキさんが男の子だというのは私の妄想よ!?それなのに・・・)」
私は冒険者服として動きやすさを優先したために丈に不安のあるスカートの下に、女性としての大事故防止のため布製ショートパンツをはいている。
貴族でもない私は高級な下着は用意できない・・・こともないけれど、少なくとも冒険者が身に着ける様な物ではないからと、おさがりで頂いた乗馬用パンツを短く仕立てなおしたものを穿いている。
これも冒険者には手が出ない高級品ではあるけれど、中古品であれば不自然ではないだろうと・・・
「いえ、折角声をかけて頂いたのに棒立ちになってしまってすみませんでした。それと、ムツキさんとアリアさんの方が年上なんですから、呼び捨てていただいて構わないのですよ?」
立ち上がる時その股の辺りが少し濡れていることに気が付いてしまった私は、顔から火が出る思いで、どうして赤くなっているのかを尋ねられたらごまかせないと思って、さも名前呼びに照れた・・・。
という体裁のためにこんな礼儀知らずな態度を、命の恩人にとってしまった。
「(こんな本当に照れる様な想像する必要なかったんだわ!)」
「えっと、じゃあ・・・アーニャ、よろしくね?」
照れ臭そうに笑いながら、私の名前を呼んでくれるムツキさん。
一度ごまかした以上絶対にバレる訳にはいかない、この年になって恐怖のあまり失禁だなんて・・・。
合流前にトイレに行っていて本当に良かった。
おかげで少し湿ったくらいで済んでいる・・・恥ずかしすぎるのは一緒だけれど、何とか私の中だけの話で終わらせたい。
せめて冒険者同士として友誼を結んだ感じが演出出来ているといいのだけれど・・・。
「はい、こちらこそ改めてよろしくお願いします」
私はちゃんとそれらしい態度を取れているだろうか?
特に私の目指す知的で冷静で大人な女性像、その理想に近いアリアさんにはバレたくない。
じっとアリアさんの顔を見つめると、目があった。
するとアリアさんは私の視線を催促と捉えた様で
「私もですか?それでは、コホン・・・よろしくお願いしますね、アーニャ」
と、私の名前を呼んでくれた。
羞恥とは違う熱を帯びた気がする。
フォニアさんといい、アリアさんといい、ここ数日の好きなタイプの素敵なお姉様との出会いが連続している。
それに綺麗だけれど、年上なのにちょっと幼げに見えていたムツキさんも実は・・・いや、いまはそんなことを考えている場合じゃあない。
「これから、この魔物の体の見える範囲で簡単に捜索しましょう、これだけの血が池に流れているのに何も池から出てこないということはおそらくもう同じ魔物はいないと思いますが・・・この死体を運ぶ手立ても欲しいところですね、大事な証拠品ですし・・・、皆を呼んだ方が良いかもしれませんね」
事前の話合いで集合の合図は幾つか決めている。
「そうですね、成体ではないとは言え、大きな個体が居たことは確認できましたし、ここには一体しかいなかっただろうとアーニャが判断できるだけの材料が揃ったんだよね?だったらそれで良いと思いう。みんなも何か見つけたなら、集まってからでも聞くことができるしね」
ムツキさんは笑みを浮かべ私の言葉に賛同してくれた。
そう、ここにはもうこれ以上は居ないだろう、初めから想定していたことだ。
むしろここに一体とは言え成長している個体が居た事の方に驚いたくらい。
正直南側とここと西側を結ぶ水路に破損があるかどうかを確認しにきただけのつもりだったし、だからこそ油断もしてしまった。
次は繁殖を行っているだろう施設を特定しないといけないけれど、それは冒険者の身分ではできないこと、うまく踊ってくれると良いけれど・・・。
ムツキにとって3回目の実戦となりました。
アーニャを守るためだったことや、モンスター的外見だったこともあって、気持ち悪くならずに済みました。