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G35話:港町ザラオ1日目・ターニャとリサ

 前回のあらすじ

 ザラオの冒険者ギルドでティータ達3人との合流を果たした私たち。

 私は嘘をついていることに多少の心苦しさを感じながら、しばし歓談を続けていた。

---


「・・・えぇ、そうなんです。カノちゃんはこんなに可愛いのに、すぐに自分のこと、私なんか・・・って言うんですよ。もっと自信を持って欲しいんですよね」

 どういう流れでこんな会話になったのだったか、一部の真面目な冒険者が今日の稼ぎに出掛けていった後で、私たちはまだ歓談を続けていた。


 ティータは椅子に座り、フォニアや女冒険者たちから取り戻したカノンのことをウリウリと撫で付けながら談笑を続けている。

 カノンは話題に少し居心地悪そうにしているものの、『お姉ちゃん』の胸元はやはり特別らしく、対面にしがみついた姉の膝上から離れる気は無さそうだ。


 その手が無意識になのかティータの左胸を揉み、私と違って(泣)服の上からでもソレだとはっきり判る程度に豊かな大きさのソレが形を歪ませると、残っている勤勉でない若い冒険者たち数名がゴクリと唾を飲む音がした。

 全く男ってのは・・・。

 私だって全くない訳ではないのだけれど、ソコに殿方の視線が集まることは稀だ。

 そんな視線に晒されていることには気付かないカノンとティータは単に純粋なのだろう。

「だって・・・お姉様方は皆綺麗で優秀、なのです。私はアリアお姉様と違って寸胴ですし、ティータお姉様と違ってドジですし、セレナお姉様と違って運動も苦手ですし、フォニアお姉様みたいに器用でもないのです」

 なだらかな膨らみに顔を半ば埋めながら、いじいじとするカノン、私の事は話題にしなかったね?

 私もいじけちゃうよ?


「カノちゃんだってこんなに可愛い上に、私たちの中では一番治癒の力が強いし、祝福の力もある。経験が足りないから自信がないだけ、私だってもっとアリアお姉様みたいに動ければとか、もっとカノちゃんみたいに素早く治癒の力が扱えればって、憧れるのよ?カノちゃんと一緒よ」

 ティータはカノンの姉だけれど、ちょっぴり母娘に見えるくらい、言い聞かせるティータの態度は大人びている。

 二人の外見の差はせいぜい5歳分くらいだけれど、カノンの子どもっぽさも強い。


「そんな、お姉様は何でもできるのです。私とはちがうのですよ」

 優しく諭されてもウジウジとしているカノン、なんでスイッチが入ったのかなぁ、せめて宿に帰ってからなら良かったんだけれど、ギルドでは悪目立ちしそうだ。

 なんて考えたけれど。


「ティータちゃんは聖母!」

「母って歳じゃないだろ、聖女だよあれは」

「やーんカノちゃん可愛い、私もあんな妹欲しい、ただただ可愛がりたい」

「甘やかしてダメな子にしたいわ」

 などと言って、男性はティータを女性はカノンのことを特に好意的に捉えているらしい。


 だけど、やっぱり常識的に考えればこんなところでうじうじするのは良くない、それはティータやアリアも同じ考えだったみたいで、やがてティータはカノンのことを膝から下ろしながら椅子から立ち上がった。

「カノちゃんはもっと色々経験して行くべきね、せっかく6人再会出来たんだから、何か依頼でも受注しましょう?」


 そして同じタイミングで

「皆さん、何か依頼をこなしたいと思うのですが、こちらに集まって頂けますか?」

 と、いつのまにかアリアはクエストボード前にいて私たちを呼んだ。


 流石空気を読めるお姉さんメイドは違うね。

 5人それぞれの位置からクエストボードの前まで移動する。

 フォニアには顔馴染みになったらしい女性冒険者2人がついてきた。

 お世話になったという先輩冒険者のターニャさんとリサさんだ。


「わかんないことあったら教えるよん♪」

「結婚相手の見つけ方とかは勘弁・・・いや、要らないか」


 ターニャさんはレザー系の軽鎧を着た短髪の女性で得物は柄の長い斧でヘッドは小さいもの。

 それから腰の後ろに幅の広い短剣を差している。

 肌はよく日焼けしているみたいで、鎧と服の隙間から日焼けしていない白い部分がチラチラ見える。

 明るく親しみ易い女性だ。


 一方リサさんの方はダークブラウンの長い髪を後頭部でみつあみ団子にしている小柄で童顔の女性で、得物はやはりヘッドの小さい長柄武器、1メートルほどの金属棒で先端の尖った物を1本と60センチほどの硬そうな木の柄に小さい穂先のついた槍を持っている。

 長柄武器の二本持ちは珍しいね?多分。

 その上小柄なので武器が目立つ。


 この二人が一緒に前衛を張っているらしいので、長物使い同士少し戦いにくそうだと感じるけれど、本当はあと一人魔法使いの女の子が居る。

 ただ昨日の夜くらいからお腹が痛くて魔法に集中出来ないので、本日のパーティーでの狩りはおやすみ、女の子同士なのでそういう時は気兼ねなく休めるそうだ。

 それで二人は恩のあるルミエさんのお手伝いでも出来ないかとここに顔を出していた。

 義理固く、面倒見の良い人たち。

 どうやらこの辺りの地理に明るくないだろう私たちに助言をするためにフォニアについてきたらしい。

 なお先程カノンを妹にする妄想で身もだえていたのがターニャさん、カノンをダメな子にしたがっていたのはリサさんだ。


「まぁフォニアちゃん位フィールドの知識がある子が一緒なら、ある程度行きあたりばったりでも大丈夫な気もするけどねー」

「でも冒険者はむやみに危険を冒す仕事ではないからね、利用できる情報はなんでも得ておくべきだよ」

 童顔なリサさんのほうが落ち着いたしゃべり方をしているのにちょっぴりギャップを感じるけれど、ソレが良い。

 なんていうかファンタジーものにありがちな小柄なのに大き目な武器という特徴も相まってリサさんへの好感度はうなぎのぼりだ。


「それではご好意に甘えまして、ご同席頂きたいと思います。お・・・ほん、ムツキさんはなにか興味を惹かれる依頼はありますか?」

 と、アリアは珍しく一瞬演技をミスしそうになりながら、しかし多数の冒険者の前で使うにふさわしい言葉遣いで私に接する。

 それでいて主である私に場所選びの主導権を預けているけれど、正直・・・

「(すっごい読みにくい・・・)」


 クエストボードにある手書きの依頼表の数々は、私から見れば大変に癖の強いローマ字の羅列に見える。

 たとえば一番手近にあるものでも

 Yakusounosaisyu to Sakananonouhin

 薬草の採取と魚の納品、と読めるけれど読みにくい、本当はもっと細かい説明文があるけれど、読む気力が湧かないくらいだね。


 ひらがなだけの文章が読みにくいの以上に読みにくい。

 その上単語毎ですらなくよく判らない区切りになってる。

 そして依頼の内容はもう少し書かれてるけれど、ただでさえ読みにくいのに紙は原型を残した繊維がボコボコとして書き味が悪い。

 漫画雑誌や新聞紙みたいなガサガサした紙よりも更に強烈な自己主張により、字は歪んで、更に滲んでいる。


 と、ここで私は、仲間と合流したらやっておくべき事を思い出した。

 丁度地理に明るい?人たちも来てくれてるしね?

「あのターニャさん、リサさん、この辺りに野生馬の生息する地域はありませんか?若しくは馬車を牽ける様な別の生き物でも構わないんですが・・・」


「え、馬?狩るの?いないことはないけど・・・ねぇ?」

「馬は大きいし群れてるから意外と怖いんだ。気性の荒いのも多いし馬車牽きや鋤牽きのと同じに考えないほうが良いよ?」

 私の問いかけにお二人はやや難色を示す。

 悍馬が多いのは野生なら仕方がない、去勢してない雄は扱い辛いって言うしね。

 それでも私たちには馬がいる狩場に行く理由がある。


「無理はしません、飼い慣らせそうな子がいれば良いな、くらいで、他の依頼をこなしつつ可能なら連れて帰る位にしますから」

 EoSのカードの中には騎獣として使えそうな魔物や、もっと簡単に騎手とセットになった騎兵カードも存在するけれど、亜人系統はダメで、カタフラクトやクリバナリウスは騎手が男性、ドラゴンライダーやユニコーンライダーはSRカードなので持っていない。

 それにこの辺りに居ない生き物を急に連れてくるわけにも行かないので、野生のモノを捕まえた体でやれる様に現物を確認してから呼び出す物を選ぼうと考えている。


「馬が欲しいのかー、確かにいると便利だよねー、荷物たくさん持てるしー、いざというときは魔物への囮や非常食にもなるしね!」

 親指をグッと立てながら良い笑顔を浮かべるターニャさん、けっこうシビアな事をさらりと言うね。

「でも高くて買えないから野生のが捕まえられそうならってことか?現地調達も冒険者の基本ではあるけれど、もっとコツコツと地味な依頼でもお金を貯めて買うのじゃダメか?」

 そして、童顔のリサさんはとても堅実。

 これもギャップ萌えだね。


「あぁ、馬を買う位のお金はあるんですよ?ただ私たちにはザラオに伝がないので、駄馬を掴まされたりしないかと不安がありますので、捕獲が無理でも先に元気な野生の馬を見るだけでも価値があるかなって」

 誤魔化しきれたかな?

 さすがに召喚とカードのことを開示はできない。

 とはいえ、後になって買うという選択肢が閉ざされる様な事も言うわけにはいかない。

 条件が合う合わないはまだ判らないけれど、召喚ではなく購入する可能性はある。

 しかし・・・


 ザワリ、と少しだけ空気が変わった様に思える。

 周囲の冒険者達の視線も心なしギラついている?

「ムツキちゃん、あんまり人前で『馬を買うくらい』のお金はある。なんて言わないほうが良いよ?ここにいるのは幸い人の良い冒険者ばかりだけれど・・・、馬は普通駆け出し冒険者には買えないのよ?」

 と、ターニャさんが教えてくれる。

 なるほど失念していた。

 馬は財産だ。

 荷運び、農耕、軍務に就くこともあるし、ターニャさんが言った通り、魔物に襲われたときに一先ず命を繋ぐために生贄になることもある。

 遭難時は最悪食料にもなる。

 その後は荷物も処分せざるを得ないけれど。


 相場が分からないのに、大金を持っていることで適当に発言してしまったなぁ、と反省しつつ、少し誤魔化しを交えることにする。

「地元では結構飼育されてたのであまり高い印象はなかったんですが、馬車馬で幾らくらいするものなんですか?」

 私が改めて尋ねると、ターニャさんは私の態度や表情をさして気にした様子もなく指を立てて教えてくれる。

「そうね!若くて元気の良い馬だと30万スカーレット前後かしら?馬車用ならそれくらいの子は欲しいかな」

 と、彼女はすぐに答えを出す。


 ジャンさんやデフロットさん、そしてまだ若く見えるジョシュアさんも、馬車での旅をしている。

 つまり、セブンリングスで村や町を出ることになって割りとすぐに、それなりにまとまったお金を用意できるだけの経済力があるということだ。

 ジャンさんは確かフランステルプレの店舗を処分せずに来たとも言ってたしね。

 もしかして結構商才があるのかも知れない。


「ターニャさんは馬を買える場所、それも、一見の小娘相手にも良い馬を譲ってくれる商人に心当たりはありますか?」

 おずおずと尋ねる私に、ターニャさんはグッと親指を立てた。

またほぼ一ヶ月空いてしまったうえ、分量も数日ペース時並です。申し訳ありません。

なんとか進めたいと思っているのですが、思いのほか環境の変化が響いているのか、妄想の文章化が進みませんが、なんとか持ち直したいところです。

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