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G31話:家族向け宿屋のサービス

パソコンでのチェック一度もなしで書くのははじめてなので誤字脱字が多いかもしれません。

書くペースも非常に落ちておりご迷惑をおかけしておりますが、8月から9月末までにはパソコンを購入する予定にしているので少しはペースも戻る予定です。

 前回のあらすじ

 デフロットさんに案内されてザラオの町に入った私達は、女の子と見紛う様な可愛い男の子クリストファ君が受付をしている宿屋に入った。

 

---

 お風呂も食事も終わった後で、私たちは4人部屋に集まっていた。

 当初は、デフロットさんが一人部屋、ジャンさんとエミール、リズ姉とユティがそれぞれ2人部屋、私とアリア、カノンとが4人部屋で、あとは私かリズ姉達の部屋にリュシー、リュリュ、フルーレちゃんを分配する予定だったのだけれど。

 入浴中はご機嫌にリュリュのお世話を焼いてくれていたフルーレちゃんだったのに、ほとんど入れ替わりにデフロットさんが入浴して、デフロットさんも久しぶりにフルーレちゃんの世話を焼く必要なく、ジャンさんやエミールと男同士のんびりとお風呂に入り、結果フルーレちゃんとデフロットさんは1時間半ほど言葉を交わさなかった。


 すると、フルーレちゃんの中でなにか不安感が目覚めたらしく。

 デフロットさんがお風呂を上がってからはパッパにべったりで、両腕両足を使ってデフロットさんにしがみつき。

 そのまま、デフロットさんの一人部屋で普段通りに父娘水いらずで休むことになった。

 そんな熱烈にパッパに甘えるフルーレちゃんが羨ましかったのか、リュシーとリュリュが「ママとねゆーぅ!!」「ねぅ!」と猛烈な自己主張、その上両者ママの隣を譲らなかったために、姉妹でリズ姉を挟んで二人部屋のベッドをくっつけて3人川の字。

「え、パパじゃないの?」

 と背中に哀愁を漂わせるジャンさんは、今はクリストファ君のパパである宿屋の主人チャールズさんと、その弟さんのギムさん(酒場を切り盛りしている)、そしてもう一組の宿泊客の若い夫婦の旦那さんのジョシュアさんと、食堂で酒を呷っている。

 そしてちびっ子によりベッドを占拠され寝場所を失ったユティが私たちの部屋に輸出されてきた。

 この四人部屋には私、アリア、カノン、ユティとが寝泊まりすることになった。


 ところでこの宿には家族連れ向け宿ならではのサービスがある。

 それは宿の経営者やスタッフの子どもや手の空いている若い人を、少額で宿泊客に貸し出すサービスだ。

 別にいかがわしいモノじゃなくて、幼い子どもが居ると中々夫婦水入らずで過ごすこともできないので、子どもの世話や遊び相手を宿関係者の子女がしてくれる訳だ。

 その中にはクリストファ君は勿論、ギムさんの一人娘のレミちゃん8才、クリストファ君の姉の娘ミーナちゃん4才、さっきまで食事の配膳なんかをしてくれていた12才の奉公人のファナちゃん等、下は1歳から上は18才のシャーリーお姉さん(出戻り)までが場合によっては相手してくれる。


 今日はお客さんがうちとすでにおやすみのデフロットさん父娘、それに前述のジョシュアさん夫婦だけ、そしてジョシュアさんの息子のマリオ君はリュリュより半年ほど後の生まれですでにおやすみしている上、奥さんのマローネさんも第2子妊娠中の為すでにおやすみ中。

 結果宿の手空きの子どもたちがおこづかいを稼げるのは今夜は私たちの部屋だけだった。


 さすがに未婚の女の子ばかり4人の部屋にクリストファ君を入れるのは憚られたので、レミちゃんとシャーリーお姉さんを部屋に招き、話し相手になってもらっている。


「へー、そうなのですか?レミちゃんはクリストファ君のお嫁さんになりたいのですね」

「ちがうよ?クリスがレミのお嫁さんになるんだよ?」

 もう少し眠たくなってくる時間のはずのレミちゃんがあまりにクリストファ君のことをほめるので、カノンはレミちゃんがクリストファ君のことを好きだと分かり。

 設定的にか男女の恋愛のことはとても真面目、或いは事務的で、イコール結婚して子どもを作るという考えを持っているらしいカノンは、まだ幼いレミちゃんの感情を結婚ゴールを見据えたものだと判断したみたい。


 レミちゃんは気の強そうな女の子で、従兄妹関係のクリストファ君と比べると確かに彼の方が美少女な顔立ちをしている。

 けれどそこは根本の問題でもない。

「レミちゃんレミちゃん、お嫁さんは女の子がなるものだよ?」

 その誤りを、今この場所でもっともお嫁さんに近い女であるユティが指摘するけれど、レミちゃんは首を傾げた。


「でもクリスの方が可愛いよ?レミの方が強いし」

 その目には、クリストファ君を嫁にもらうことになんの疑問もない。

 確かに年下ながらにレミちゃんの方が少し身長も高く、振るまいや仕草も礼儀正しくで大人しそうなクリストファ君の方が可愛い。

 レミちゃんもなんだか田舎の川で全裸で泳ぐ小学生みたいな健康的な可愛さはあるんだけれど、どちらかというとやんちゃ少年ぽい。

 言っている通りなんだろうね。


「まぁ確かにクリスとレミとだと見た目クリスが嫁でレミが夫でも不自然じゃないけどね、ジュリエッタちゃんの言う通りクリスが夫としてこの宿をついで、嫁になったレミがもり立てるのが自然な形よね」

 と、シャーリーお姉さんは常識で答える。

 シャーリーさんはレミちゃんを女性らしく成長させた様な外見で確かな血縁を感じさせる。

 まぁ叔母と姪だし似ててもおかしくはない、年の離れた姉妹くらいに見える。


「シャーリーお姉ちゃんはそんな風に常識的で優しいから、あんな奴に足下見られて好き放題言われるんだよ!」

「う゛ぐ」

 突然声を荒らげたレミちゃんに、声をつまらせるシャーリーお姉さん。

 元々ジュリエッタとエミールのことをそれとなく相談していたのだけれど、シャーリーさんは結婚についての話題として自身が出戻りになった理由も話してくれている。

---

 彼女は14歳の時、ザラオの有力商人ギャランに請われて嫁いだという。

 ギャランはシャーリーお姉さんに求婚する前に先妻に先立たれており、その妻との間に当時3歳の娘がいた。

 ギャランはその娘のために母親が必要だからと12下のシャーリーお姉さんを執拗に口説き、有力商人との縁ができれば実家のためになるかもと嫁ぐことにした。

 幼い娘キャスリンの母親役になることを期待されたため、彼女はその役割を懸命に果たしたと言う。


 離縁した今でもキャスリンはシャーリーお姉さんに逢うためによく抜け出してくるらしいことを考えればそれは確かなのだろう。

 今でもママと呼んでくれるそうだしね。


 ただ結婚した直後からギャランの態度は一変した様だ。

 それまではキャスリンの為母親が必要だからと懇願し口説いてきたのに、いざ結婚するとギャランはシャーリーお姉さんに対してかなりドギツい行為を要求した様だ。


 レミちゃんやカノンの前だからシャーリーお姉さんも言葉は少なく、暗に示したに過ぎないけれど、最終的に結婚生活は1年半ほどで『後継ぎ息子を生ませるために結婚してやった・・・のにいつまでも子どもができない女等不要』と、離縁を申し渡されて今に至るとのこと。


 さらにその後、シャーリーは不妊であるが為に離縁したと声高に吹聴しており、シャーリーの婚姻を邪魔していると言うけれど、その後2度再婚(いずれも年若い女性)したそうだが、どちらの女性とも子どもはできていないと言う。

「こう言っちゃあれだけど、キャスリンの産みの母親は奔放な人だったから、キャスリンは別の男の子どもだったんじゃないか?って今は言われてる」

 キャスリンのことは可愛がっているというシャーリーお姉さんは肩をすくめながら、ギャランの方が種無しなのだという可能性を示唆する。


 ギャランはザラオでは大きな経済力と影響力を持っており、元妻二人の再婚をも妨害しているという。

『子どもも作れない女と結婚する馬鹿は居ないよなぁ』と取引先で声高にアピッていくとか。

 私は寄る先々でおよそ『日本の女子校育ちの私』が想定できる最悪、を下回る酷い男を見ている気がするね。

 昼ドラにも中々居ない酷さの男ばかりだよね。

---


 少なくとも僻地では、家は長男が継ぐのが一般的で、よほど男児が無能揃いで娘が優秀でなければ、女の社会的な立場は弱い。

 それでも男女が分業して家の内外のことを回している一般階級の人々の間には、女性を大事にして一緒に生きていくという気持ちがあるけれど


 ある程度以上の身分を持ち、女性を働かせる必要の無いだけの経済力を持つ人たちであれば、『女性を生活させてやっている』

 であるとか、自分も人を使役する立場の人になると『妻を働かせるのがみっともない』とか

 酷い人になるとロミオやギャランの様に女性を『性欲の捌け口としての道具』とか『子どもを産ませる道具』として見て

 更に少しでも思い通りにならないと『恥をかかされた』『女の癖に生意気』といった様な心証を抱く様な者もいる様だと、これまでの道程で理解できた。

 そして、それは当事者に限らないこともある。


 レミちゃんのことを、クリストファ君がそう思うかは別だけど、将来レミちゃんがクリストファ君のことを可愛い扱いをしてクリストファ君本人が嫌がっていなくても、周囲があそこの嫁はけしからん、なんて風評を得る可能性もゼロでは無い以上、シャーリーお姉さんの言っている事の方が常識的で正しい事だろう。


「でもレミちゃんも言葉ではそんな風に言ってるけど、クリストファ君のこと大好きだよね?態度でわかるよ?」

 と、私はレミちゃんの髪の毛を櫛で梳きながら尋ねる。

 何せクリストファ君がお風呂上がりのアリアの赤くなった肌に見とれたのを見て、頬を膨らせていたしね。

 アリアの美貌はあどけない少年であっても虜にする魔性を秘めているのがよくわかったよ。


 レミちゃんはレミちゃんで部屋に入った直後はアリアに「おっぱい、触っても良いです?」とか、「肌白いですね」とかすごく積極的に絡んでいたので、女の子受けも良いのだと思う。

 レミちゃんは私の質問に僅かに頬を赤らめると、照れ臭そうにしながら、負けてられるかとばかりに質問を返す。

「レミのことより、お姉さんたちのことよ!二人はどっちがエミールさんと結婚するの?それともどっちも?」


 先程、色々伏せて相談を始めたせいかレミちゃんは私もエミールのことを好いていると誤った理解をしていた様だ。

 ちょっと悪戯を思い付いたみたいに振り向き様、私とユティの手を掴む。

「私はエミールとどうこうってつもりはこれっぽっちもないよ?」

 実際エミールはユティの相手だし、エミールのことは良い友人に思えても、恋人になって欲しいとは思わないしね。


「そうなの?」

「そうだよ?私はなんていうか、冒険者になったばかりだし、もう少し独り身のうちに色々見て回りたいなって思ってるから」

「ふーん?」

 一応それなりに考えて答えたつもりなんだけど、レミちゃんは一気に私に対しての興味を失った様だった。

 代わりにレミちゃんはユティの手だけを両手で包み込む様にして掴むとがばりと体を寄せた。


「じゃあジュリエッタさんがエミールさんと結婚するの?もう二人で寝たことある?」

「ふぇ!?」

 そして、8歳が口にするにはあまりにストレートな言葉を、ユティにぶつけた。


「ななな、ないない、エミールのことは嫌いじゃないけど、それにそういうことは夫婦になってからじゃないと!!」

 ユティは真っ赤になって、レミちゃんの言葉に答える。

 夕べは同じ部屋では寝ているけれど間にリュリュワンクッションが居たしね、その甲斐性か男気をエミールが見せたならば二人はすでに夫婦になっている。


「えー?一緒に寝るの気持ちいいのに、レミはよくクリスと寝てるよ?」

 と、レミちゃんは意味深長な台詞を吐くけれど、その笑顔に逆に気付かされる。

「(これ文字通り添い寝の話だ)」


 そのことはシャーリーお姉さんもわかっているみたいで、彼女は落ち着いた様子で二人、というよりは真っ赤になって困った様子をしているユティを眺めている。

 完全に楽しんでいる。

「レミちゃんにはまだそういうのは早いと思うの、クリストファ君にも!」

 ユティは茹でダコの様な真っ赤な顔で、レミちゃんに手を握られたままで叫ぶけれど、レミちゃんは不思議そうな顔。


「えー?将来夫婦になるんだから一緒に寝ても良いんだよ?」

 どうしてこう、含みを持って感じられる言葉選びをしているのだろう。

 私が汚れてるからそう聞こえちゃうの?

 ううん、ユティだって赤くなってるのだから、これはそういう風に聞こえるものなんだろう。

 レミちゃんのほうは、普通に子どもらしい添い寝とか、人肌の体温が気持ち良いとかの話のはず。

 でも結婚の判断基準の一つとしてそういうモノを据えているユティには、レミちゃんの言う一緒に寝るとか、気持ち良いというのが、アダルトな含みを持って聞こえているのだ。

 私は単に耳年増だからかなぁ・・・?

 少女マンガなんか読んでるとそういうシーンがあるんだもの、自分がお付き合いの経験がなくったって、保健体育と少女マンガだけで、そういった知識は十分ある(はず)。


「よしわかった。レミ、ジュリエッタちゃんがエミール君と添い寝できる様に私たちで協力してあげよう」

 シャーリーお姉さんは、赤くなったユティを十分に楽しんだのか、急に立ち上がるとレミちゃんを後ろから抱き上げた。

「協力?」

 突然後ろから抱きかかえられたレミちゃんはユティの手を離しながら、半分振り返り、首をかしげる。


「そう、とりあえず明日も泊まっていってくれるらしいから、でもとりあえず今日は遅いからそろそろお暇しよう。カノンちゃんも眠たそうにしてるしね?」

 と、シャーリーさんは言い聞かせる。

 見れば確かに、先ほどまで積極的に会話に加わっていたはずのカノンがいつの間にかアリアの肩に頭をくっつけて眼を細めうとうととしている。

「はぁい、おやすみカノンお姉ちゃん、お姉さんたちも!」

 レミちゃんが聞き分け良く返事をすると、シャーリーお姉さんはレミちゃんをそのまま床に下ろし、レミちゃんは眠たそうになっているカノン、続けて私たちに手を振った。

 今は大体夜9時くらい、宿屋のお手伝いもしているレミちゃんはこのくらいの時間は平気らしい。


「そういうわけで、明日は何があっても私とレミはジュリエッタちゃんの味方だから、信じてね?」

 笑顔で告げたシャーリーお姉さんはレミちゃんの手を引いて、部屋を出ていってしまった。


「じゃあ、私たちも寝ようか?」

 カノンが眠たそうだから、おしゃべりを続けるにしても灯りは落とさないとね。

「それでは灯は落としますから、お嬢様方は先に横になられてください」

 夜目も利く(明度をいじれば私もだけど)アリアが灯を消す役を買って出る。

 なおザラオではお馴染みの魚油ではなくて、高いが魔力灯という道具が普及していて、魔力があるなら光源を得ることができる。

 そこそこ高価な道具な為に壁に固定されているから、懐中電灯代わりにはできないけれど、部屋が夕方くらいの明るさになるのでとても便利だ。


 利用者が任意で魔力を溜めることができる蓄魔力槽と、魔力灯との接続をアリアが切ると、徐々に光が弱くなっていく。

 それからアリアは自分に割り振られたベッドに入る。

 ベッドの並びは部屋の入り口のドアの方からアリア、私、カノン、ユティの順、隣のベッドに横たえられたカノンはまだ30秒程なのにすでに寝息を立てている。


 明日にはザラオの中を探して、ティータ、セレナ、フォニアを探して合流したい。

 それにユティとエミールの仲を進展させて、早いところ正式な夫婦にしてしまいたいところ。

 二人のことで、シャーリーお姉さんやレミちゃんがどんな協力をしてくれるのか楽しみだね。

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