Gプロローグ1
文章力皆無ですが、よろしくお願いします。
ある平日の昼過ぎ、駅に続く道を二人の少女が足早に歩いていた。
2人は同じブレザーを着ており、近くにある幼稚園から大学まで一貫教育を行う、地元では有名な女子校の高等部の生徒だとわかる。
一人は金髪の小柄な娘、もう一方はそれより5cmほど身長が高いそれでも小さく見える黒髪の娘だった。
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「いやー台風にも困ったものだね、くるくる言ってこなかったり、まだまだって言ってたのに、いきなり早足になったり。」
隣でぼやく同級生上段弥生のその眼の青にちょっぴり見とれてしまっていた私は少しだけ反応が遅れた。
「・・・、ぁ、そうだね、でも昨日のうちに台風の準備は終わらせてるから。」
うちの家はそれなりに歴史のある家で、台風の度にしっかりと台風対策をしないとご先祖様が残した家を守れないのだ。
といっても、私が何かしたわけじゃなくて女中さんたちがやってくれたんだけれど・・・。
「ちょっとムツキ、ちゃんと聞いてるの?」
「うん、ヤヨの眼きれいだなって思って。」
とっさに真実を語ってしまった私のことをヤヨはきれいな青い目をジト目にしてねめつける。
「ちゃんと聞いてないジャン・・・」
「ソ、ソンナコトアリマセンヨ?」
聞いてなかったんじゃないもの、聴こえなかったんだもの・・・。
「まぁいつものことだからいいけどさぁ・・・ムツキって本当私のこと好きだよね。」
「うん、ヤヨは親友。大好きだよ」
ヤヨはロシア人のママと日本人のお父さんがアメリカ出張中に出会って生まれたそうで、現在はアメリカと日本の国籍を持っている。
その後日本に戻ってきたものの現在は両方の国籍を持っていて(ママさんはすでに日本に帰化していて、ヤヨもロシア国籍は持っていない)名前は二種類あり日本名が上段弥生マルタ、アメリカ名はややロシア風でマルタ・リヒトヴナ・ウエンダン、それで3歳頃に日本に帰ってきて、それから私と幼馴染・・・。
その帰国子女という背景もさることながら、ママのスヴェトラーナさん譲りの美しい金髪と青い瞳、白い肌とすぐに赤くなる頬、そのすべてがとてもかわいくて物語の主人公みたいで、彼女ともう一人の幼馴染とは私にとって自慢の親友だった。
だから好きか嫌いかときかれればそう答えることに一切の迷いはない。
「う゛・・・そう素直になられるとなかなか厳しいこともいえないや・・・それはそれとして、本当に居るの?そのお友達さんたち」
赤くなって照れたヤヨもかわいいけれど、本人は赤くなったのが悔しいのかすぐに話題を変える。
今朝の時点では今夜未明に九州南部に上陸予定であった台風8号は、なぜか急速に速度を上げ、正午頃には薩摩半島に上陸した。
それで学校はあわてて午後休校となり、私たちはめでたく早上がりとなったのだけれど、私には人と会う約束があった。
その時間は夕方5時頃だったけれど、彼らならきっとすでにもう現場に居ると、私は確信していた。
「うん、絶対居るよ・・・」
平日の昼間であるとはいえ、彼らは有給休暇くらい平気でとる。
「だって今日は、新バージョンの稼働日だもの」
「そんな自信満々で・・・。」
呆れ顔のヤヨもかわいい。
店員の狐火さん(きつねびはゲーマーネームで、本名は金田さん)のメールによれば昨日夜のうちに新型筐体は設置していて、朝のうちにデータのダウンロードも始まる予定とのことだったので、間違いなく彼らは居る。
「なんだっけ?今までやってなかったゲームだけど新しいバージョン?になるから、始めるんだっけ?」
「うん、そうだよ。今日はその稼働日だから来たの。」
私はカードゲームにはまっている。
家がそこそこ裕福で、小さい頃には幼稚園帰りに女中さんに家電量販店に付き合ってもらって「お着替え魔法少女」シリーズの子供向けカードゲームを時々やっていたけれど。
その延長と言っていいのか、中学にあがる頃にゲームセンターでトレーディングカードアーケードゲーム(TCAG)をプレイする様になった。
といってもお小遣いは多いほうとはいえ、あまりたくさんはできない、ゲーセン通いはかなりお金がかかる。
それでも共闘型アクションRPG、ファンタジーオブE(EはEternal、Epic、Element、Eraなど複数の意味を持たせている。)とオンライン対戦型TCAG閃国戦姫シリーズはそれなりにやりこんできた。
いつも鞄の中にデッキケースを忍ばせて、学校帰りにちょこちょことゲームセンターに通っている。
今日だって両方のデッキケースと複数のゲームの交換用高レアカード容れ、それに今日から手をだす予定のゲームのカードをリサイクルボックスからたまに拾っていたのと専用ゴーグル、知人が少し分けてくれるらしいのでそれを入れるカードケースを用意している。
今日新作・・・というか新バージョンが稼動したばかりのゲームはエンパイアオブスカーレット(通称EoS)というモンスターや英雄を召喚して戦う人気シリーズで、なんと新バージョンからは、大きなドーム型の筐体の中にプレイヤーが入って、専用のゴーグルをつける。
そうすると自分の視界には各種パラメーターが表示され、周囲には味方や敵の召喚獣が見えたり、自分がプレイヤーキャラクターに見える様になっているという、ロケテではその手を伸ばせば触れそうなモンスターやキャラクターたちのリアルな造形に酔う人も出ていた様だけれど・・・
なおこの専用ゴーグルは購入することもできて、一台39600円と少々単価は高いものの、ほかの人と同じゴーグルをつけるなんてという人はマイゴーグルを購入することで、ゲーム内通貨500万Gと、通常2プレイ700円(7クレジット)のところが500円(5クレジット)になるというクレジットサービスが自動で適用される。
無論プレイヤーデータと紐付けができ、生体認証も付いているので安心だ。
また召喚獣もカード毎に戦略的に成長する簡易AIを搭載している様でプレイヤーの癖から学習するシステムやカード毎に成長する個性の様なものがあり、稼動前から大変な評判を呼んでいる。
なお旧カードにはこの簡易AIが搭載されておらず、無個性というか、サーバー側でプリセットされている数パターンのAIしか存在せず、動きが単調になるそうで、やりこめばやりこむほど、相対的に弱くなっていくそうだ。
それで、今までのカードは価値が下がる(同じ名称のカードも新バージョンの仕様とイラストで排出される)ので、ゲームセンターでの友人から譲っていただけることになったのだ。
「ところで、どうして今日に限って、ついてきてくれるの?台風もきてるし、先に帰っててもよかったのに・・・。」
普段ヤヨは私のゲームセンター通いにはついてこない、ヤヨは部活をやってるので、一緒に帰れないことも多いというのもあるのだけれど・・・。
「なんか話を聞いてて不安になったというか・・・・ゲームセンターって男の人多いわけじゃない?」
とヤヨはやや偏見を含んだゲームセンター観を語る。
「それは違うよ、今は女の人もいっぱいいるよ?」
主にプライズや音ゲー、あとはフォトクラとかにだけど・・・。
「女の人もいるかもだけど、今日カードもらうのは男の人でしょ?ムツキは可愛いのにガードがゆるいから親友のヤヨイさんとしては不安なの・・・どういう男の人かちゃんと確かめなくっちゃ、私が見てきたらカンナも安心だろうし・・・。」
とヤヨはその薄い胸を反らせながらフンス!と息を吐く、どちらかというとヤヨのほうがちっちゃいしかわいいし、幼精・・・もとい妖精みたいで男の人から狙われそう。
私は目立つ名前の割りに中肉中背の普通顔、かわいいヤヨと美人なカンナとに挟まれてちょっぴりコンプレックスあり。
「なんでなでるの?」
「ヤヨがかわいいから・・・。」
それでもヤヨのかわいさはやっぱり私には特別なので、こんな風にちょっぴりお説教というか、お姉さん風を吹かせようとしているところでも、ついついなでてしまう。
「とりあえず、こんなことしてる暇はないんじゃない?さっさといこ?」
ちょっと怒らせてしまったらしい、ヤヨはほっぺを膨らませながら、再び前進を始めた。
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それからさらに3分ほど歩いてゲームセンターのある建物に到着、エレベーターで該当のフロアに上がった。
「あぁ5日ぶりのゲーセンだぁ、今日はプレイ無理かなぁ、人多いだろうし、ヤヨもいるし。」
言いながら、カードゲームのコーナへ進もうとするとヤヨが意外な言葉をくれた。
「いいよ、ちょっとくらいプレイしても、意外とタバコのにおいとかもしないし、うん、台風的にも2時間くらいは大丈夫じゃない?」
と、寛容なお言葉をくれたのだ。
「いいの?私は待ち時間も楽しいけれど、ヤヨ退屈じゃない?」
実際ゲームは見ているだけで私は楽しいけれど、ヤヨとあまりゲームの話題で盛り上がった記憶はない、退屈だと思う。
「いいよ?楽しそうなムツキみてるだけでも私は楽しい、あとはムツキの持ってるかわいいカード見せててくれたら多少は時間つぶれるでしょ?かわいいイラストは私も好きだよ?」
ニカリと笑い、ますます寛容なお言葉をくれる。
そんなヤヨのやさしさがうれしくて、私はついつい首を縦に振ってしまった。
それがスタートの合図だったのかもしれない。
プロローグ部分は一回で済ませようと思ったのですが、1回の投稿を四千字前後に予定しているので分けることにしました。
スピード感はありませんが細々とやらせて頂きたいと思いますので、お付き合い頂ける奇特な方がいらっしゃいましたらばよろしくお願いします。