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G13話:ランチタイム前のランチタイム

 前回のあらすじ

 防具屋で武器や外套を購入した。

 さらに私はコートを購入し改造をオーダーした。

---


 ラルフさんの店を出た私たちは上機嫌で露店広場まで帰ってきた。


 すると、そのタイミングで店番というか、荷台の前に立っていたエミールが真っ先に私たちに気付いて声をかけた。

「おかえり3人とも、買い物は終わったのか?」

 と・・・エミールに悪気はなかったのだ。

 彼にとっては私たちの買い物第一弾である防具屋さんの買い物が終わったのか?と尋ねただけだったのだろう。

 だけどそれならば彼は言葉を選ぶべきだった。

 例えば、防具は買えたのか?とかね。


 直後に響いた悲鳴で、彼も少しはそれを悟ったと信じたい。

 その悲鳴は荷台の中から響いた。

「やらぁぁぁぁぁぁぁぁ!リュチーもおたいのもするっていったぁ!なんで、おたいのもするっていったのに、なんでおた・・・ゴホッゴホッ、ウァァァァァン」

 すごく悲しそうな泣き声でリュシーは訴えた。

「あぁ!?リュシー落ちる落ちる!」

 と、ルイーズさんがリュシーの服の腰の辺りを掴み、荷台から乗り出そうとするリュシーをなんとか引き留めて、さらに後ろからリュシーの胸とお腹の間に腕を回して抱えあげる。


 間一髪だね。

 やっぱりお母さんは強い。


「リュシー、お買い物はまだ終わってないよ、リュシーとリュリュをお迎えに来たんだよ!」

「もぅ、エミール、さっきリュシーがついてきたがったのみてたでしょ!なんでそんないい方しちゃうのよ!リュシー、お姉ちゃん達はおしごと終わったから、今から、リュシーとリュリュとお姉ちゃんたち3人とでお買い物行くよー?」

 と、ジュリエッタと二人係りでリュシーを宥める。


 リュリュはよく聴こえてなかったのか、まだそこまでお買い物に惹かれないのか反応が薄いけれど、すでにお買い物にわくわくを見いだしているリュシーはすごく『女の子』だと思う。

 嘆き方はまだまだおちびちゃんだけどね。


「じゃあまたしばらく二人の面倒よろしく頼むな、適当に宿に戻って休んでていいから、リュシー、リュリュ、お姉ちゃんたちの言うことはちゃんときくんだぞ?」

「「あーい」」

 少しだけ休憩して、リュシーを落ち着かせてから、今度はリュシーとリュリュを連れてお買い物に行くことになった。

 リュシーとリュリュに適当に運動と食事をさせて適度に疲れさせて、お昼寝に持ち込むのが二人の面倒の内容となる。


 アリアとジュリエッタに左右の手を繋いでもらって、上機嫌に先導するリュシーに、私と手を繋いでブンブンとそれを振るリュリュは追従していく。

 ブンブンと言っても腕の長さが長さなので、勢いはあっても、振れ幅は小さい。

 お店は特に決まっていない、たとえ歩いていく先にお店がなくても、これはお買い物という名前のお散歩なので、例えば海までいって石を拾うだけでも、そこに取捨選択があり、リュシーにとって変化が楽しめるならばリュシーにとってそれは買い物になり得る。


 もちろん途中のお店で食べ物を買ったりしてもいいけれど、一応名目上の目的は、『私たちの船』の残骸がなかったかとか、漂着者がいないかの確認だからひとまず海には行かないとね。



「おたいのもー♪おたいのもー♪おーたんじょーびのおたいのもー♪」

 と、リュシーが上機嫌に歌って、通りすぎる人たちも微笑ましそうに振り返ったりしている。

 って言うか。

「リュシー、お誕生日が近いの?」

 後ろから声をかけて尋ねると、リュシーはお歌も歩みも止めて首だけでふりかえる。

「お?」


 ポカンとした顔、何を聞かれたかわからなかったかな?

「リュシーのお誕生日近いの?」

 すぐ後ろに追い付いてもう一度尋ねると、リュシーは首を傾げた後ジュリエッタを見上げる。

 ジュリエッタは空いている方の手でリュシーの頭を撫で

「リュシーの5歳のお誕生日は3ヶ月後だよー、リュリュの3歳は4ヶ月後」

 どうやらテンションのままに歌っていただけみたいで、お誕生日は関係なかったみたい。


 リュリュは目の前に迫ったアリアを見上げて、何を思ったのか革ドレスとワンピースの間に手を差し込むとアリアのお尻をワンピース越しに触っている。

 小さい子だから許されるお触りだね、ニコニコしながら、アリアのお尻を押し上げてる。

 ナンパ店員チャーリーがみたらきっと羨ましがっただろう。

 アリアはリュリュの好きにさせてさほど気にした様子もないけれど、リュリュがお尻を触るとアリアがリュリュの方に顔向ける。

「きゃあハハハ!」

 アリアがリュリュと目を合わせると、リュリュはイタズラがばれた見たいに笑いながら手を引っ込める。

 全身で楽しんでるので私の手もグイグイと引っ張られる。

 リュリュはアリアが再びリュシーの方を見るとまたアリアのお尻に手を伸ばすを繰り返している。


 その一方で

「おたんじょうびじゃないの?おかいものしない?」

 と、珍しくしっかりお買い物と言えたリュシーはそうと気付くこともなく首を傾げている。

「お誕生日じゃないけど、お買い物はするよ?とりあえず食事だけどね、リュシーはお昼どんなのが食べたい?」

 ジュリエッタはリュシーと目線の高さを合わせてしゃがみこんで尋ねる。

 グリモスは田舎町ではあるけれど、漁港があるので新鮮な魚が屋台で塩焼きされていている。

 その臭いも十分美味しそうだけれど、何よりもリュシーとリュリュはまだ舌が敏感なので、私たちが気にならない様な苦味や酸味を気にするかもしれない。


 それならせめて本人達に食べるものを決めてもらえば、ちゃんと残さず食べられるかな?とさっき防具屋から帰る途中にジュリエッタとは話して決めていた。

 グリモスでは野菜が少し高いので屋台では野菜がでない、でもちびちゃんたちには野菜を食べて貰いたい。

 旅人が食事できるところは屋台を除けば二つの宿屋と冒険者ギルド、それに町に1軒しかない海沿いの食堂だけらしいので、事実上お店の選択肢はほぼないのだけれど・・・


「ろんなの?」

 と、リュシーは聞き返す。

 漠然としすぎてよくわからないらしい。

 首を傾げるリュシーが可愛くて私もさらに声をかける。

 決して手を繋いでるはずのリュリュが私よりアリアのお尻に夢中なのが寂しいとかじゃあない。

「リュシーはお野菜とお肉とお魚、どれが好きかな?」

 私が聴くとリュシーはンーと唸りをあげる。

 まぁなんと答えても、海沿いの食堂はほぼ決定してるんだけどね。


 少しの間ゴニョゴニョと独り言を呟いて考えていたリュシーは、最後には頑張って結論を出した様だ。

「じぇんぶちゅき!」

 好き嫌いはあまりないみたい、お利口さんだ。

 それにしても元気に叫ぶと舌が不器用になるね。

「そっかぁ、じゃあお店で決めようねー」

 とジュリエッタが撫でるとリュシーは「うん!」

 と大きく頷いた。

 先に海に行くか、食堂に行くか少し迷ったけれど、ご飯前に疲れて寝てしまうと可哀想だし、先に食事を摂ることにした。


 食堂に入ると、まだお昼には早いからかあまりお客さんも居らず私たち以外には二組、5人のお客さんが2人と3人で座っている。

 食堂は、6人がけのテーブルが4つと、カウンター席が8つある。

 建物の作りは多分冒険者ギルドとほぼ同様で、ドア(ウェスタン風ではない)を開くと正面に精算カウンターがあり、その奥に扉と2階への階段が見える。

 右側のエリアの奥には厨房があり、厨房の前には衝立を兼ねたカウンターテーブルが、そしてそのさらに手前はテーブル席となっている。


 テーブル席には男女の二人組と男三人組がそれぞれ腰かけていて、彼らはどうやら冒険者の様だと気付けたのは、それぞれが得物を空いている椅子に置いていたからだ。

 私たちがお店に入るとすぐに、ジュリエッタと同じ年頃の女の子が笑顔を浮かべて接客してくれる。

「いらっしゃいませー、わぁ!美人さんと可愛い子揃いだ。ちっちゃい子連れならカウンター席が良いよ、お料理してるところが見えるから」

 と、リュシーやリュリュを見ても嫌な顔ひとつしない、多分席を汚すのに・・・町に唯一の食堂だからなれてるのかも知れない。


「じゃあそうしますね、はい、5人です」

 と、ジュリエッタが対応をすると、私たちはカウンター席に一列に座ることになった。

 並びは壁、私、リュリュ、ジュリエッタ、リュシー、アリアの順、私の隣を離れることに少しだけアリアが苦い顔をしたけれど、慣れてきているとはいえリュシーとリュリュはやっぱり一番慣れているエッタお姉ちゃんが世話してあげるのが良いし、両側を挟まないと何するかわからないのでこの並びになった。


「お姉さん達見ない顔だけど、行商の人?おちびちゃんたち可愛いね、どんなのが食べたい?」

 と、若い店員さんはカウンター越しにリュシーとリュリュに尋ねる。

 驚いたことに、もっと文化レベルは低いと思っていたんだけれど、ちゃんと子供用のイスが用意されていて、リュシーとリュリュの顔はしっかりとカウンター席に届いている。

 そして、リュリュは特に、フライパンで何か野菜の微塵切りをシャンシャンと音をたてながら炒めている料理人の男性を見つめていた。


「思いの外夢中だね、こっちの大きいおちびさんは何が食べたいかな?」

 と、店員さんは気を取り直してリュシーに再度尋ねるけれど、リュシーの方は目の前に置かれたお品書きとにらめっこ中、そう言えば字は読めるのかな?


「リュシー、リュリュ、何を使った食べ物がいい?」

 とジュリエッタが尋ねると、ようやく二人は再起動。

「あのにぇーえっとにぇー、たまご」

「ふー、ふん、ありぇたべないねぇ?」

 リュシーは玉子料理を、リュリュは正面で作られている炒め物を指差し所望したが、その二つは直後に同じものになった。


 どうやら作られていたのはオムレツの類だったみたいで、料理人さんはフライパンの中にちょうど溶き卵を流し込んでいるところだったのだ。

 バターと玉子の焼ける匂いが拡がり鼻をくすぐる。

「あ、ちょっと待っててね」

 と、店員さんは厨房に戻っていくとそのオムレツを受取り、二人組冒険者の方へと持っていく。

 見れば他の4人はもう料理が来ているか、食べ終わっているのに、唯一の女性の分はそのオムレツだったらしい。


「エッタお姉ちゃん、リュチーあれ食べたい」

「リューュの、アレ、アレ」

 と、一度自分達の手に届きそうなところにありながら遠ざかっていくオムレツがほしくてたまらないらしく、切ない声をあげる。

 駄々をこねて暴れたり、叫んだりしないだけ良いけれど、少し恥ずかしい。

 リュリュなんか、アレは私のだーって言ってるしね。


 女性冒険者の人は店員さんと何か話すと、店員さんがこちらに戻ってくる。

「あちらのお客さんが、よかったらおちびさん達に一口ずつ食べて貰って、それから注文したらいいんじゃないか?と提案されています」

 と、女冒険者さんは見ず知らずの食いしん坊おちびたちの為にそんな優しいことをいってくれているらしい、だけどそれは教育上宜しくないよね。


「いいえ、折角の申し出ですが、躾の問題もありますからしらないお姉さんに食べ物を強請る様な子になったら困るので・・・」

 と勿論ジュリエッタは断る。

 すると、また店員さんは冒険者のところへゆきまた何か少し話して、冒険者さんは一口オムレツを食べると、また何か店員さんと話して、店員さんはそれから戻ってきた。

「じゃあせめて個人的な感想だけ、美味しいけど胡椒が入ってるからおちびさん達には刺激が強いかも・・・だそうです」


 胡椒は確かに小さな子には刺激が強い時もありそうだ。

 あのお姉さんとても子どもが好きらしい。

 リュシーとリュリュの為に親切に教えてくれた。

「ありがとーございます!」

 と、ジュリエッタは冒険者さんの方を向いてお礼を言い、冒険者さんは片手をあげて応える。

 すると、ジュリエッタが挨拶を交わしたことで冒険者さんへの警戒心が薄れたのか、冒険者さんに手を振る。


 冒険者さんは、そんなリュシーに応えて笑顔で手を振る。

 軽装の革鎧からチラリと見える引き締まった二の腕がセクシーだね。

 

 結局私とアリアは甘いパンと魚と野菜のスープを注文、ジュリエッタが冒険者さんと同じオムレツで、リュシーとリュリュは押麦を粥の様にした料理を二人で一つ注文して私やジュリエッタの物を少しずつ食べさせることにした。

 運ばれてきた料理を見ると、私とアリアの頼んだ物はブイヤベース的なものと、ブリオッシュ的なもので、組み合わせに若干失敗したなぁと思いつつも、それぞれの味は中々よろしく、リュリュにひと口分けてもらった粥も、麦の甘さをよく引き出していておいしかった。


 オムレツはやっぱり胡椒が少し効いていて、リュシーはおいしく食べられたけれど、リュリュは食べられない事はない位だった。

 むしろブリオッシュ擬きの方を気に入って、私の分の4分の1ほども平らげ、ブイヤベース擬きもそれなりの量を食べて自分の分の粥およそ5分の2人前もぺろりと、小さい体のどこに入るのか、しっかりと食べきった。

 それなりに時間はかかったけれど、ランチタイム前に先に食堂に来たことが幸いして、あまり人がいない店内なのでゆっくり食べることが出来た。


「リュリュちゃんは気持ちいいくらいの食べっぷりだったねえ」

 と仲良くなった店員のバーバラにも好評だった。

 カウンター席は多少汚したものの、食べ物で遊んだりする事もなく、作ったものを美味しそうに食べたことで、バーバラのご両親だと言う料理人にもリュシーとリュリュは気に入られて、お土産にブリオッシュ擬きのパンを一人前持たせてくれることになった。

 可愛いはお徳だね。


 食堂はこれからランチタイムだと言うことで忙しくなる前にバーバラたちも、私たちの接客中にカウンター席の厨房側で賄いを食べていて話をして仲良くなったのだけれど、明日もお昼を食べに来る約束をして、私たちは店を出た。


 さっきまであんなに痩せて見えたリュリュは、すっかりお腹が膨らんでいて・・・

「えむぃ・・・」

 と、リュシーともども食後の眠気に襲われていたので、私たちは海とお買い物は夕方前に行くことに変更、一度宿屋に戻ることにしたのだった。


話の進みが非常に揺ったりしてる気がしますね、丸1カ月の連載で睦月の異世界生活が3日越えられなかったのは想定外でした。

町についた直後などをはしょったにも関わらずのこの遅さには筆者自身驚いております。


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