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G12話:港町の防具屋(ただし武器も置いている

 前回のあらすじ

 港町グリモスで無事冒険者になった私たちは

 アリアの防具を買うため、防具と護身用の刃物を扱うお店にやってきた。

 そうしたら急に店員さんがアリアをナンパしてきた。

---


 この状況はなんだろうか?

 私とジュリエッタはほとんど放置で、優男な店員はアリアを口説き始めて、私とジュリエッタは呆れた目で彼をみていた。

 年の頃はジャンさんよりは若いかな?くらいだから、高3から大学生くらい?

 細身で長身、顔立ちもかっこいい方だとはおもうけれど、こちらの用向きそっちのけでアリアを口説いているのは、店員として問題外じゃないかな?


「僕は貴方と、いやむしろ貴方のその美しい山を冒険してみたい!」

 ナンパ店員は日本なら多分痴漢か不審者しか言わない様なセクハラ台詞を堂々と告げる。

 本当にどうしようもない人だ。

 お店間違えたかな?


 ところで、これだけ熱烈な変態ラブコールを受けてアリアはどうしているかというと・・・

「・・・・・・・・・・」

 私の隣、少しだけ後ろに立ったままで一切のレスポンスをしていない。

 何となくわかるよ、関わりたくないのもそうだけれど、私を無視して話しかける様な男に返事をしたくないんだね。


 しかしナンパ店員もこれだけ無視されてるのに苛立つ様子も見せず、ただただ口説き文句を続けるばかり、そして熱烈にセクハラ紛いのアプローチをする割にノータッチな辺り意外と紳士的な面もあるみたい。


 でもこのままじゃあ、いつまでたっても買い物が終わらないし、リュシー、リュリュとの町歩きに戻れない。

 私の萌え始めたばかりの姉魂は今にも熱暴走を起こしそうなのだ。

 そろそろ店員の対応に怒ってもいいはずだ。


 と思ったら、ジュリエッタが先に怒ってくれた。

「あの!そろそろこちらの用向きを・・・」

 しかし、その声は最後まで発せられることはなかった。

 ガァン!!

 と激しい音がして、ナンパ店員はその場に崩れ落ちた。


「たく・・・このバカタレが!バカ弟子が失礼した。護身用のナイフかダガァでも買いに来たのだろう?」

 と、厳ついおじさんがあらわれた。

 ナンパ店員の後ろのドアから鉄板か何かで殴り付けたらしい。

 いかにも職人風の風貌で、肌は焼けており分厚いエプロンをつけている。

 腕は丸太の様に太く、一本でリュシーくらいの重さがありそうにみえる。

 と、見つめてたから訝しむ様に見られてる。


「えっと、この子の胸当てと軽鎧、私も雨避けに外套と、あと軽い剣やナイフがあったら見せて欲しいです」

 と私が告げると、ジュリエッタが補足する。

「私たちお兄ちゃ・・・ジャンさんからこちらを紹介してもらってきたんですけれど、お知り合いであってますか?」

 そうだったね、それを伝えるの忘れてた。

 全部ナンパ店員のせいだよね。


 そしてそれを聞いた職人風男性の対応は劇的に変わった。

「おぉそうか、お前さんがジャンの言っていた妹ちゃんか、確かに可愛い顔立ちをしているじゃないか、丁度昨夜ジャンが毛革を売りに来てな、今はそいつを加工してたんだが、そうだなまずは妹ちゃんのナイフと、そっちのお嬢さんの剣を選ぶか、あぁ俺はラルフという、よろしくな」

 と、職人風男性もといラルフさんはニカリとした笑顔を浮かべた。


「私はジャンの妹のジュ・・・」

「いや、名乗らなくていい、お嬢さん方もだ」

 ジュリエッタが名乗り返そうとしたけれど、ラルフさんに止められた。

 そしてラルフさんは足元に視線をやると

「チャーリー!このバカタレ!いつまでも倒れたふりしてるんじゃねえ!交代だロードランドッグの毛皮をなめしてろ」

 と、足元に転がっていたナンパ店員もといチャーリーを蹴る。


「スイヤセンおやっさん!お嬢さん方失礼しました、素敵な人、また会いましょう」

 蹴られると彼はすぐに立ちあがり店の奥に消えていく。

 やっぱりアリアを口説く様にしながら、流し目してるのが少し気にくわない。

「いやぁスミマセンね、悪いやつではないんですが、女と見ると食いつくやつなもんで、お嬢さん方の名前を知られたくなかったんでさ」

 と、ラルフさんはチャーリーの背中を目で追いながらため息を吐いた。


---

 ラルフさんは宣言通りに、まず刃物を見せてくれる。

 ナイフは刃が小さく、本当に最低限のモノ。

 ベッドの中で相手を刺し殺せる位が限界のモノを最初に持ってきたけれど、ジュリエッタは納得していない様に見える。

「あの、ロードランドッグと戦える様な武器が欲しいです」

 しばらくいくつかのナイフを握り、なにかを確かめていたジュリエッタはそんなことを呟いた。


「ロードランドッグは、魔物ではなく動物ではあるが、女がナイフ一本でどうにかできる動物じゃないぞ?・・・・?どうした妹ちゃん」

 魔物と動物はなにか分ける概念があるらしいことに私は興味をもったのだけれど、何故かジュリエッタが私とアリアの方をジッと見るので、ラルフさんもジュリエッタの視線を追いかけて不思議そうに私たちを見る。


 あぁ、うん、私はともかくアリアはロードランドッグをナイフで真っ二つにしてたよね、そこはかとなくグルカ風なナイフで。

 ナイフと言われてそういうのを想像しちゃってたかな?

 でも多分ジュリエッタがアンシーリーコートを振るっても、同じ結果は得られないよ。


「あぁいえ、昨日のロードランドッグは数が多くて厄介だったので、私もお兄ちゃん達のお手伝いがしたいなって思ったんですよ、思ったんですけど、私は武器なんて持ってないし、使ったこともないから、なにもできなくて」

 やっぱり昨日のことだよね、でも彼女は思い違いをしている。

「ジュリエッタ、それは違うよ?ジュリエッタは姪っ子二人を抱き締めて待ってたじゃない、ジャンさんとエミールを信じて・・・後ろにいるジュリエッタが二人を守ってくれるからジャンさんは戦えるし、ジュリエッタがいるからエミールも戦えるんだよ?」

 現実世界では言う機会の無さそうなくさい台詞、でも実際そうなんだから仕方がない。


「こっちのお嬢さんの言う通りだ。女は男にとって家みたいなもんだ。居場所なんだよ、居場所を守ってくれるから男は覚悟を決めて戦いに臨めんだよ妹ちゃん」

 ラルフさんは私の言葉に乗ってジュリエッタを宥める。

 そしてその上で

「それで今日はナイフと投げ物を教えてやろう、少し待ってな」

 と、言って追加でもう3本ナイフを置くと、席を立った。


 ラルフさんの姿がみえなくなるとジュリエッタはナイフを手に取りながら

「ねぇムツキ、アリアさん、どれが良いとかあるかな?私にはどれもそう変わらない物に見えるんだけど・・・」

 と、私たちに尋ねる。

 と、言われてもねえ・・・

「手に馴染むとかそういうのはない?いざという時のための物だから、使いやすさが大事だよ?」

 と、そこまで言ってから思い出す。

 手にもってステータスを見れば攻撃力も分かりそうだなって・・・


 試しに適当な1本を持ってみて、アイテム欄を確認すると簡単な説明文が見える。

 次に装備確認の画面を見ると、1本目の攻撃力は+2、私の賢者の短剣やアリアのアンシーリーコートは大分特別品なんだとわかる。

 それから、その場にあるナイフを全部確認していくと、攻撃力+4のものと+5のものとがひとつずつあった。

 この2本のどちらか扱いしやすい方を選んでもらおうかな?

 ジュリエッタにその2本を勧めて、ジュリエッタは+5の物を選んだ。



「この細い鎖と重しを使った道具なんだがな、少し前に思い付きで作ってみたんだが、買い手が無くてな」

 丁度ジュリエッタがナイフを決めた頃、そんなことを言いながらラルフさんが持ち込んだのは、日本人で祖父母と同居してる人なら時代劇なんかで見覚えがある・・・かもしれないあの道具。

「鎖分銅だ!」


 思わず私は声をあげた。

 私も幼稚園から帰った後なんかに再放送の大河や時代劇で忍者崩れの悪漢やらがが使ってるところくらいしか知らないけれど、投げてよし打ってよし、所により梁に引っ掻けて天井に昇る補助にしたり、相手の首にかけて絞め落とすなんて使い方もされる万能補助武器のひとつだ。


「な、なんだお嬢さんこの道具を知っているのか?」

 今そういえば思い付いて作ったと言っていたか、自分の発明かと思ったらすでに知っている風な反応をされてガッカリしたと言うところかな?

 でも、結構複雑な馬車や、製塩で発生する蒸気をサウナに転用する様な発想のある世界で、鎖分銅位とっくにあると思うのだけれど・・・

 首肯く私にラルフさんは少し残念そうにして、鎖分銅を片付けようとする。


「ああ、待ってください、どうして片付けるのですか?それは良い道具だと思うので安ければ買いますよ?」

 と、私が言うと、ラルフさんが意外そうな顔をする。

「投げて相手を怯ませるだけの道具だろう?鎖をつけたことで当てやすくなり、大きな音で動物が驚くと言うくらいで・・・」

 と、自分で作っておいて鎖分銅の優秀さを知らないらしい。


 そこでテレビで得た受け売りの鎖分銅の使い方の知識を話し、ポケットに収まるサイズのものや、逆に大型化させて一方に手を守るガードの付いた鎌を付けたもの、さらに悪のりして十手の案、シャベルの案を出し、説明だけではわからなかった様なので、鞄から取り出した風に見せてリング式のノートを1枚出し、イラストを描いて説明した。


 ラルフさんは鎖分銅の多岐に渡る使い道と未知の道具に好奇心を刺激されたみたいでそのイラストをもらえないかとお願いしてきた。

 さらに明日は店を開けずに研究するので明後日の朝、来店して欲しいと言われてしまったので、OKした。


 少し話はそれてしまったものの、鎖分銅も引き取りを決定して、私から適当に使い方をジュリエッタにレクチャーすることになった。

 それから私も予備の武器と言うかメインの武器と言うべきか店にあった歩兵用の武器の中で攻撃力が高く扱いやすそうな攻撃力+12のショートソードと、投擲や薪割りに使えそうな攻撃力+10のハチェットを2本購入した。

 外套はジュリエッタがお揃いが良いなと言うので私もアリアも大きさの違う同じ物を選び。

 そしていよいよ当初の目的の鎧の番になった。


 この店に売っている鎧は主に革鎧と簡単な金属鎧で、金属鎧は胸当てと肩当てがついているくらいで全身を保護するものはない。

 そういうのはもっと大きなまちに行かないと置いていないらしい。

 代わりにここでは魔物や動物の毛皮をなめし、何かの液体に浸して茹でたらしい革鎧が多く取り扱われている。

 何かの液体というのは、植物由来らしいことまでは教えてくれたけれど後は秘密らしい。


 私とアリアに革と金属の両方を交えた鎧がいくつも提示されている。

「アリアさんは胸があるから会うサイズの金属鎧がありませんでしたね」

 ジュリエッタは残念そうに言う。

 この三人の中で胸が一番ないのは私だから私だって悔しい、年下のジュリエッタにも負けてるし。


「そうですね、革鎧も選択肢は少ないみたいです」

 とりあえず私もアリアもめぼしい鎧は試着をさせてもらい、って言うか私はアリアに着せてもらい、都度防御力を確認している。


 結果アリアには胸当が女性用の革製で肩当てが青銅の鎧が最も防御力が発揮されていて+12、エプロンの時と比べて+11だね。

 ただその鎧は肩が上側に上り難いそうでアリアはそれとは別の物を選んだ。

 それはノースリーブのワンピース状になった鎧と呼ぶには可愛らしいシルエットのモノで、アリアが細身だったこともあって元の黒いワンピースの上に、その赤茶色の革ドレスとでも言おうか新しいワンピースを着ると、ノースリーブの肩口や、太股迄しかない赤茶色のスカートの下から元のワンピースの生地が延びていて、結局ちょっぴりメイド風に見える。

 革鎧が白じゃなくて良かった。


 防御力は+9で、青銅付きの物と比べると数値は低いけれど、元々回避して斬りつけるナイフ使いのアリアからすれば動きやすさの方が優先だから、当然と言えば当然の判断だね。


 一方の私は・・・

「すまねえお嬢さん、お嬢さんの胸に合う女性用鎧はうちにはないみたいだ」

 と、謝られているのに屈辱を感じるという不思議な謝罪を受けることになった。

 そもそも、女性冒険者(この場合家出娘は除く)はそう数が多くない(らしい)。

 その上に私は多少発育が遅い体つきなので、胸もそうだけれど体の大きさの合う鎧がないのだ。


 一応試着はいくつか試してみて、制服の上から着ると、制服セットの防御力を失わずに防御力を追加していることがわかったのは大きな収穫だけれど、よくよく考えればアリアのエプロンを借りた時にもそれはわかっていたことだ。


「お嬢さんには、新しい装備のアイデアをいくつももらったからな、明後日に受け渡せる様にお嬢さんの丈に合わせた胸当てを用意しておくことにするよ、幸い鈑金も毛皮も一杯入荷したからな素材はある。何か要望はあるか?」

 私の表情に気を使わせてしまったみたい。

 ラルフさんはそんなことを申し出てきた。


 折角なのでつくってもらうことにして、要望も直ぐに決める。

「じゃあかっこい・・・・」

「可愛いデザインにしてください」

「お嬢様の服とも合う可愛らしいデザインを所望します」

 えっ?アリアが私の言葉に被せてきた?

 予想外のことに少し狼狽えそうになるけれど、なんとか平静を・・・って、なんで鎧に可愛さを?

 確かにアリアの革鎧は何となく可愛かったけどさ


「ふむ、可愛さを鎧に見出だしたことはなかったが・・・あぁちょっと待てよ」

 と、ラルフさんは再びなにか思い付いたみたいで再度裏に下がる。

 今度は1分ほどで戻ってきて、その手には革のコートを持っていた。

 トレンチコートみたいな形かな?

 ブレザーの上から着るのには少しシルエットが細い気もするけれど、ハードレザーでは複雑な他のコートは難しいものね。


「このコートなんだがな、金属鎧と比べると少し弱いが、動物の攻撃に多少の防御力は期待できるし、体に密着していないから必要なら胸のところや肩に鈑金を付けられる様にする、お嬢さんの服は殆んど見えなくなるが、お嬢さんなら露出の少ない上着は似合うだろう」

「少し着てみますね・・・どうかな?」

 と、二人に見てもらいながら私は装備画面を確認する。

 防御力は+10、結局アリアのよりは硬いしこのあと鈑金も足してくれるらしいし、結構硬いよね?


「ムツキかわいい」

「お嬢様は革のコートをお召しになっても素敵ですね」

 と、二人からの評価も高い

「これにします」

 折角お揃いにした外套の出番は減りそうだけど、なんかちょっぴりマントっぽいシルエットも私に残る厨二心をくすぐるしね。

 


 その後支払いは私のアイデア料と引き換えと言うことで、大分値引きしてもらい13万Scになった。

 帝国金貨を出すと驚いた顔になっていたが、秤にかけて確認すると、お釣りに新金貨と銀貨でお釣りをくれた。


 さて、とりあえず防具は買ったしこれでようやく可愛い妹たちをお迎えにいけるね!

 


防具は迷いましたが、アリアもムツキも革物となりました。

今後室外でのアリアはメイド服ではなくワンピースの上に短い革のワンピースを着た姿になります。

ムツキはまだコートは着ていません、明後日他の物と受けとります。

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