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G11話:おたいのも

 前回のあらすじ

 冒険者になった!

 メイド服は目立つと言われたので、アリアに新しい装備を用意することにした。

---


 冒険者ギルドグリモス支部で冒険者になった私たちは、新米冒険者にも関わらず。

 依頼ボードを見ることもせずギルドを出た。

「まずは装備品を買わないとね」

 アリアは今エプロンを外していて防御力が少し低い

 でも、アミィさんに言われちゃったもんね、家出したお嬢さんならメイド服は人目につくから変えた方が良いって


 私とアリアには実際には追いかけてくる家族はいないけれど、家出娘を名乗るのにメイドを連れているのは変らしいし。

 ただでさえアリアは美人で目立つのだから、少しでも目立たない様にするべきだよ。


「アリアちゃん、おたいのもするの?」

 アリアに手を引かれているリュシーちゃんが目を輝かせて、アリアと私とを交互に見つめている。

 好きなのかなぁお買い物、ちっちゃくても女の子だもんね

 私が手を繋いでいるリュリュちゃんは道端にある草花や白い石なんかに興味をひかれていて、私の手の引っ張られる方向が目まぐるしくかわる。

 手を放さない様にしないとね。


「そうですよリュシーちゃん、私とお嬢様は冒険者らしく鎧を購入するんです」

 私はまだ買うか、わからないけどね、ブレザーとスカートが特殊なセット効果らしい防御力を発揮してるから、鎧を着てもそれが崩れないかチェックしてからじゃないとね。


「冒険者らしくっていうけど、アリアさんもムツキも外見は冒険者よりも裕福な町人って感じだよなムツキの服はなんか変わってるし」

 エミールは私たちの先頭を歩きながら軽口を叩く。

 まぁブレザー制服は珍しいよね。

 でも、服の構成としては、町人はワンピース的な衣装が多いだけで、軍の制服や貴族の服には、上下セパレーツになっている服もそれなりにあるみたいだし、ファッションに気をつかう冒険者みたいに見えてるかもしれない。


「でもムツキには似合ってるし可愛いと思うわ、ねーリュシー、リュリュ、ムツキお姉ちゃん可愛いよねー?」

 今朝からジュリエッタはやたらとリュリュやリュシーに私のことを可愛いと言わせようとする。

 面白がってるよね?赤くなる私の反応をかそれとも・・・

「たぁいー!」

「うん、かわいい!」

 過剰に大きな反応を示すちびっ子の反応をかわからないけどさ。


 リュシーもリュリュも昨日私たちと知り合ったばかりなのに、遠慮なく甘えてくるし、そっと手を繋いだら、ギュッて握り返してくるし、聞き取れない言語で何か呟いた後で「ねー?」と同意を求めてくるし、本当これなんだろうね、お姉ちゃん力が急激に高まってきているのがわかるよ。

 えっと・・・なんの話だったっけ?


 あっ、リュリュちゃんが歩き疲れてきて抱っこを欲しがってる。

「リュリュ、抱っこ」

 私が短く伝えて、しゃがみながら両腕を広げるとリュリュはポテポテと擬音のしそうな足取りで私に近づくと、首に手を回して来る。

 足も回してきてしっかりくっつき虫。

 幼児なのに痩せて見えるお尻を支えてあげると、それでももっちりとした柔らかさと、内側の骨の感触も伝わってくる。

 邪魔になるものがワンピースのスカート部分だけだから、感触がとてもダイレクトだ。


 二人の身に付けてるものは、雑な作りのワンピースと、厚手の布を筒にして先端を折り返して縫った物の底に薄い木の板が添えられ、紐で足ごと縛ったただけの粗雑な靴だから歩くのはすごく大変な労苦なのだ。

 靴はそこそこ高いらしいので、すぐに合わなくなるこの年頃にはこういった雑な作りのものが用意されるのだとか。


 リュリュが抱っこされるのを見たリュシーは、自分も足が疲れていることを思い出したのか、アリアの方を見上げると無言のおねだりを始める。

 すると、アリアもすぐにリュシーの望みをかなえてやる。

「アリアさんもムツキも細いのにらくらく抱っこするよな、重くないか?」

 とエミールは失礼なことを言う。

「こんな可愛いリュリュちゃんが重たいわけないじゃない、エミールは女の子に重たいとか言っちゃう男の子なんだね」

 もうエミールの役割は決まったね、女心のわからない朴念仁だ。


 ちょっと歩きにくくはあるけれど、こんな可愛い子を抱かせてもらえるのに重たいとかないよね、仔犬で慣れてるのもあるけど、リュリュちゃんがしっかり抱きついてくれるから、抱っこしてもそう重たくは感じない。

 近くなったリュリュの柔らかいほほに頬擦りすると、ミシシと嬉しそうに笑う。


「あー、エミールそういうところあるよね、フランステルプレに住んでたときもね、私がイスに載って棚からポーション瓶取ろうとしてたらさ、スカートの中覗き込もうとしてさ、それで私驚いてイスから落ちたんだけど、そのときも重いって言ったのよ!信じられない!」

 プンプンと鼻息を荒くするジュリエッタに、エミールは反論する。


「いやだからアレはイスの足が曲がってて危なそうだったから駆け寄ったんだって!あの時それで納得してくれたじゃんか!」

 少し論旨がずれてるね、怒ったのは覗こうとしたことじゃなくて、その後の重いって言葉だよね。

 あと、どれくらい前の事か知らないけれど、ショーツやドロワーズが平民に浸透していないこの世界でスカートを覗くって・・・もしかして伝説のスカート捲りとかも在るのかな?そうだとしたら恐ろしい。

 そりゃ年頃の女の子ならびっくりすることだよね。


 そして直前に女心と体重の話をしていたのにとっさにスカートを覗こうとした疑惑の方に引っ掛かるという事は、エミール的には、そちらに心当たりがあるってことだ。

「エミールやらしい」

「はい、女の敵でございますね」

「エミーユややちぃ」

 私、アリア、リュシーの賛成多数で、エミールはやらしいことが決定した。


---

 それはさておき、それからさらに3分程海側に歩くと、布製の屋根が沢山建てられた区画が見えてきた。

 どうやら露店商の集まる区域らしい。

 パッとみた感じでは私たちから見て右手奥に行くにつれて小物類、食器、家具など住人向けのもの、左手奥に行くに連れて木材、板金など職人向けの素材がおかれている。

 そして左手奥側の少し町の方に戻る位置に、装備品類を売っているらしい、露店ではない店舗がいくつかあった。


 でもまずはジャンさんたちを探さないと。

「ジュリエッタ、ジャンさんたちはいつも場所は決まってるの?」

「固定してる訳じゃないけど大体の位置は決まってるかな?うちはグリモスでは木工品と保存食を主に売ってるから、こっちだよ・・・ね?エミール」

 そういえばジュリエッタはまだあまりグリモスに来たことはないのだったか。

 エミールに確認を取る。

 少しふてくされているエミールは、やる気無さげに先導を再開する。

 するとすぐに二人の露店が見えてきた。

 布の屋根の下、というより他の露店もそうみたいだけれど、馬を外した幌馬車の荷台をそのまま持ってきて幌の一部を外すことで屋台みたいにしている店が多いみたい。

 昨日載ってきた馬車だねこれ。

 その下に荷台があって、ジャンさんは中で多分商品の管理、ルイーズさんは外に立って店番をしていた。


「あ、ジャン来たみたいよ」

「お、お疲れ様、登録はできたかい?」

 と、ルイーズさんはすぐに私たちの接近に気付き、彼女の声でジャンさんも顔を出す。

 するとパパママの声に気付いてか、リュシーもリュリュもそれぞれ私とアリアの腕から逃れて行く。

 リュシーはまっすぐ、リュリュはだっこされていた影響か少しよろけながら走っていき、揺れるお尻がまたプリチーだ。


 ルイーズさんは嬉しそうに二人の愛娘を抱き上げる。

 細く見えてもさすがに母親は格が違うね、あの細腕で二人の子どもを楽々だ。

「リュシー、リュリュ、ちゃんとお利口にしてた?お姉ちゃんたちの邪魔しなかった?」

「「うん!」」

 元気よくうなずくね、二人とも実際お話中はずっとジュリエッタとお話して待ってくれたし、かなりの時間は自分で歩いてくれた。

 本当にお利口さんだ。


「エミールが受付の人と知りあいだったお陰でスムーズに登録できました、晴れて二人ともG級冒険者です」

 と冒険者証を見せながら報告するとジャンさんは荷台から降りてバシバシとエミールの背中を叩く。

「ハハハ珍しくエミールが役に立ったか、この調子ならそのうちエッタを嫁にやれるかな?」

 すごく嬉しそうに見える。

 エミールの事内心ではもうとっくにジュリエッタのお婿さんとして認めているのだろう。

 あとは時間とかキッカケの問題かな?


「二人ともすごいよ、魔力も高いらしいよ?」

 とジュリエッタはまるで自分のことの様にジャンさんに自慢する。

 と、そうだ本題本題。

「ジャンさん、アリアに防具を買いたいのですけれど、どこかお薦めのお店はありませんか?」


 私が尋ねると、ジャンさんはそれだったらとすぐに心当たりを教えてくれる。

「それならあっちに店があったろう?露店じゃないやつ、その中で緑色の鎧を飾ってる店が、女性用の鎧や外套が充実してるはずだ。ルイーズとジュリエッタに着せてる外套も確かそこで買ったな?」

「昨日毛革を引き取って貰った店ね」

 と、ルイーズさんはその店に心当たりがあるらしくすぐに反応するけれど、逆にジュリエッタは首をかしげている。

「どの分だろう、結構お兄ちゃんにお土産で貰ってたからなぁ・・・」


「とりあえず緑色の鎧の店を探して、私の知りあいだと言えばいい。ただ防具屋に子ども連れは危ないからここで一旦留守番だな、エミール世話を頼む。エッタはそろそろ良い年頃だからな、護身用にナイフの一本も持たせようか」

 と、ジャンさんはジュリエッタに金銭を一枚渡す。

「やた!」

 ナイフ持つのってそんなにうれしい?

 この世界の女の子ってそうなの?

 あぁ昨日の私たちの動きをみて欲しいと思ったの?

 ちょっぴり申し訳ない。


 でも女の子の護身用ってアレだよね?

 男に襲われた時に相手が一人二人なら相手を、もし無理な数なら苦痛を感じさせられる前に自分を突くっていう・・・、何?そんなにこの世界は物騒なの?


「じゃあ、行ってくるねお兄ちゃん」

「おう、気をつけてな、ムツキちゃん、アリアちゃん、エッタがちゃんと実用的なナイフを選ぶ様に見張りをお願いしますね、お気をつけて」

 と、ジャンさんは妹の頭を撫でながら私たちにも見送りの言葉をくれた。


『おたいのも』についてきたがるリュシーちゃんをなんとか宥めつつ出発した私たち

 露店のエリアを抜けて再度町の方に出てくると、いくつかの店が、並んでいる。

 その中でも比較的大店に見える店が看板のすぐ真下に、確かに緑色の布で飾りを施された胸当て型の軽鎧をディスプレイしている店がある。

 海風があるだろうに錆びた様子のないその鎧は、余程金属の品質が高いか、こまめに手入れをしているのだろうと思えた。


「ここみたい?ごめんね二度手間になって、てっきりあっちの露店のところだと思ってたんだけど、まぁここも市場の区画ではあるんだけど、いったり来たりさせちゃった」

 申し訳なさそうな表情のジュリエッタだけど、どちらにせよ刃物や重たい鉄の塊だって置いているだろうこのお店に、ちびちゃんたちを連れてくるわけにもいかなかったし、謝ることじゃないよね?


「でも、ジャンさんに聴けたお陰でいいお店にも来られたし、ジュリエッタもナイフ買うんだよね?いいやつ選ぼうよ?」

 やっぱり私も女の子ですので?

 年の近い子との買い物は楽しみな訳ですよ?

 買うものは鎧にナイフといささか女の子らしくないものだけれど・・・。


 アリアが扉を開けてくれて、店内に入る。

「いらっしゃい、と、女の子だけ?ここ一応鎧がメインのお店だから、女の子が喜ぶ物少ないよ?」

 と、長身痩躯の優男風の男性が私たちを迎える。

「大丈夫です。私以外冒険者なので!」

 と、ジュリエッタが告げると、男性はぴゅうと口笛を吹いた。


「へぇ?冒険者?見かけによらないねぇ、そんなに冒険が好きなら、僕ともっと危険な冒険・・・しない?」

 と、彼はアリアを見つめ指さしながら多分キメ顔でそう言った。

 なんかハズレっぽいんだけど?ジャンさん、本当にここがオススメなの?

おたいのもにリュシーとリュリュを同伴させたかったのですが、危ないと思ったので置いてきました。

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