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G6話:ギフテッド

 前回のあらすじ

 筐体を出て隣の丘を登ったら

 獣の群れに襲われている馬車と遭遇した。


---

「本当に助かりました!ご助力に感謝致します」

 私が救援に入った方の男性、ジャンさんは二人の童女(片方は幼女かな)にも頭を下げさせながら、深々と頭を下げる。

 最初のときと口調が違うのはなんでなのかな?


 二人の子は片方は5、6才、もう一人は3歳位かな?

 白人、それも西欧系だと思える顔つきで二人とも僅かにクセのある茶髪をしている。

 お揃いの外はねした髪がファッションや身だしなみをまだ気にしていない、いかにも幼女らしい純朴さを感じさせる。

 そんな小さな二人が、多分親だろう、御者をしていた女性のマネをしてか

「あいやとーございまし」

「あやとー」

 と二人で私(とアリア)にお礼を言っている。

 正直滅茶苦茶可愛い。

 一人っ子だったムツキさんとしては膝の間にだっこして、『おねえちゃんといっしょ』でも見ながら、胚芽ビスケットとミルク辺りで餌付けしたいところ。

 無論今はそのうちのひとつも用意することはできないけれど。


「いいえ、間に合って良かったです。みなさんお怪我はないですか?」

 と尋ね返すと童幼女以外の四人は、隣にいるもの同士で体を見やった後で

「皆無事な様です。お二人のお陰です」

 と、ジャンさんが嬉しそうに笑い。


「俺が軽く足を捻った位だ。・・・面目ない。」

 エミールさんは少し悔しそうにしている。

「助けていただいて、本当にありがとうございました。お若く見えるのにとてもお強いのですね、お二人がいなければ、少なくともエミールは助かりませんでした」

 と、ジュリエッタさんは涙を浮かべている。


 それに比べると状況を理解していない二人のちっちゃい子は感動も薄いみたい。

 小さい一人はすでにあくびをしている。

 名前何て言うのかな?だっこさせてくれないかなぁ?手がワキワキしちゃう。

 しかし、そこで違和感に気が付く。

 遠目に見ている分には気付かなかったけれど、間近で凝視していると、ちっちゃい子の頭の上に小さな半透明の窓が開いて見える。

 その中に書かれているのは

 リュリュ Lv1 HP24/26


「(えっ?)」

 と思って、もう一人の子を見つめる。

 けれど、窓は開いていない。

 少し凝視してみるけれど浮かぶものはない、何の違いだろう?

 なに考えてたっけ?抱きたい?いやお名前なにかな?

 そこまで思い浮かべた時、あの窓がフェードインしてきた。

 リュシー レベル1 HP34/39

 名前が気になるのが条件?


 まだ名前がわからないのは御者をしていた女性だけれど、名前なんだろう?

 と思いながら見つめても窓は出てこない。

 そして、見つめたことでまだ名乗っていないことを思い出したのか彼女は

「失礼しました。私はルイーズと申します。リュシー、リュリュお姉さんにご挨拶なさい」

 と、二人のちっちゃい子の腰をトントンと叩いて促す。


「リュチーでしゅ、あいやとーおねえさ、ごじゃーます」

「リューュ、んー?んーん、んぅ!」

 お姉ちゃん?の方はしっかりごあいさつ、ペコリと頭を下げてからございますとつけ忘れたのを思い出したのかな?

 妹ちゃんの方は名乗りながら小さな手の指を二本立て、といってもうまく2本をまっすぐにできなくてもう片方の手で立てたくない指を押さえつけて、納得できる指になってから私とアリアの方に示した。

 ドヤ顔が可愛い。

 多分2歳なんだろう。


 ルイーズさんは二人を撫でて誉めながら

「二人は私とジャンの娘です。さっきまで怖がって泣いてたんですけれど・・・本当にありがとうございました」

 と再度頭を下げる。


 自己紹介にも飽きたのかリュリュちゃんは隣に立ったママの足に一度すがり付いたけれど、ルイーズさんは私の方を向いて挨拶しているので、リュリュちゃんの相手をしない、すると諦めたのか今度はジャンさんのほうへ振り向くけれど、ジャンさんはエミールさん、ジュリエッタさんの方を向いて何か話しているのでリュリュちゃんが伸ばした手には気付かない。


 寂しそうに佇むリュリュちゃんが気になるけれど、勝手にだっこするわけにもいかないし・・・

「あの・・・」

 と、ルイーズが私の顔を覗く。

「あ、わたし!私は・・・」

 名前、私は睦月だけどキャラ名はガーネットだし、ステータス画面でもガーネットだしなぁ・・・

「私は、ムツキ・ガーネットです」

 結局煮え切らない名前を名乗ってしまった。


「やはり家名をお持ちの方なのですね、私たちの様な下々の者の為にお手数をお掛けして申し訳ない限りでございま・・・す?」

 おや?最後がなぜか疑問系に、そして彼女たちが名前しかなのらなかったのは、どうやら家名を持っていないからみたい。


「あぁいえ本当お気になさらず。困ってる時はお互い様です、貸せる手が有っただけですから」

 この世界の情報はどうすれば不自然にならないで聞き出せるだろうか?

「あぁいえ、ところでうちの娘がなにかしたのでしょうか?」

 少し怯える様に、ルイーズさんが私の方を伺う。

 やばい、リュリュちゃんを凝視しすぎた!?

 親御さんを警戒させてしまったかも。


「あ、いえ、ちいちゃくて可愛いなって思って」

 実際小さなおてては柔らかいし、ほっぺプニプニだし、服は少しみすぼらしいけれど、天使みたいに可愛いし温かい。

 何より抱き抱えたとたんに、リュリュちゃんの方からもギュッて!ギュッて!

 ん?あれおかしいな、私はいつの間にリュリュちゃんを抱いてたのか覚えていない。

「それはありがとうございます。貴族の御令嬢に抱いて頂けるだなんて、リュリュ、良かったわねぇ」

 と、ルイーズさんは安心した表情を浮かべた。


「あぁいえ、私は貴族と言うわけでもなくて」

 とりあえず貴族という誤解は解いておいた方が良い様に思える。

 曖昧なままにして、貴族を騙った罪状を被る様なことになったら絶対ろくなことにならないし。

 とは言え、とっさに否定したものの良いいいわけなんて思い付かない。


「これは失礼しました。気品の様なモノが感じられたので、貴族ではないということは、武門の家柄の方なのでしょうか、それならばロードランドッグを容易く屠る短剣捌きも納得できますね」

 ルイーズさんは一人で納得してしまう。

 やばい身分詐称コースになりそう。

 ひそかに焦り始めた私だったけれど

「お嬢様、私からご説明いたしましょうか?」

 と、そこでアリアが口を挟む。

 アリアはまだ名前をつけて2時間も経たないけれど、現在私の唯一の仲間で友人で家族なメイドだ。

 もしかするとこの状況を変えてくれるかもしれない。

 そんな一縷の望みを託して、私は会話のバトンをアリアに預けることにする。


「お願いするわ」

 そう言って、リュリュちゃんを抱いたまま一歩引くと、アリアは逆に一歩前へ出た。

「それでは自己紹介をさせていただきます。私はムツキお嬢様にお仕えする護衛メイドのアリアと申します。突然のことで信じられないかも知れませんが、私たちは恐らくこの国の人間ではございません」

 と、アリアは突然の告白!

 確かにその通りだけど、順序ってものがあるんじゃ!?


「この国以外というと、よその陸地から渡って来たってことですか」

 ジャンさんが興味深そうに食いついた。

 もうなかったことにはできないよ、どうするの!?

「渡って来たと言いますか、流されてきたと言いますか、私たちは元々船を使って同じ国内の別の町に移動する予定でした。しかしながら、海が荒れてしまい。船は自力での航行が不能となり30日以上流されるままに漂流してしまいました。水と食糧はなんとかなったものの船は修理することもできませんでした。そして、三日前のことですが、とうとう転覆してしまいました。しかしながら直前にこの陸地が見えていた為、泳ぎの得意な私がお嬢様だけでもと抱いて泳ぎ、あちらの方の海岸からここまで歩いてきたのです」

 とアリアは海の、町の無かった方を指して言った。


「なるほど、それは難儀なことで、しかしお蔭様で我々は命拾い致しました。この近くに港町がありまして、我々は行商でそこに行くところでした。よろしければご一緒しませんか?お力になれることがあればなんでもしますよ」

 と、ジャンさんはニッカリと笑った。


 喜んでお世話になることになり、彼らの馬車に同乗させてもらえることになった。

 エミールさんとジャンさんは倒したロードランドッグの死体を解体して毛皮を持っていくと言っており、その間に私たち女衆は幌馬車の中で親睦を深めることにした。


 まずジャンさんとルイーズさんは24歳と21歳の夫婦。

 ルイーズさんが落ち着いていたのでもう少し上かと思ったら以外とお若いのでびっくり、リュシーは4歳、リュリュは2歳でジュリエッタさんはジャンさんの三人いた弟妹の一番下で13歳、なんと年下だった。

 私と同じか少し上だと思ってたのに・・・

 それからエミールさんは私と同い年の15歳、ジュリエッタさんとは恋仲で、兄であり、父代りでもあるジャンさんから認められたら結婚したいと考えているとか。


 ジャンさんはこの大陸で5年前まで7年にわたり繰り広げられていた七王三相の乱と呼ばれる戦乱のために父母と弟妹をなくし、元住んでいた町と交流のあった草原エルフ(!)の集落「燃える平原フランステルプレ)」に赤子だったジュリエッタさんとともに保護され、その集落で大人になり結婚し、店を構えていたが、5年前に乱を収束させ大陸統一国家となった「光輝満ちる人類の王国シャドウレスキングダムギフテッド」の推進する人種隔離と純血種保護を要とする7つの大原則、通称セブンリングスが約1年前に公布、3ヶ月前から施行されたため、ヒューマンであるジャンさんたちはフランステルプレへの定住ができなくなり、フランステルプレを含む近隣5つの町を巡る行商人へと身をやつしたそうだ。


 ギフテッドによる統治は日が浅く改革の最中で、原状七王三相の乱より以前の様な物流は確保されていないためジャンさんたちの様な個人の行商は重宝されていて、実入りもかなり良いらしいけれど・・・


「この辺りにあんな大規模なロードランドッグの群れはいなかったはずなんだがなぁ」

 どうやら皮を剥ぎ終えたらしいジャンさんが幌馬車の中に戻ってきた。

「お疲れ様ジャン、ちょっと聞いてよムツキ様ってエミールと同い年らしいわよ?」

 と、ルイーズさんがジャンさんに話しかけると

「うへぇ!?」

 話しかけられたジャンさんではなく、同い年と言われたエミールさんが驚いて変な声をあげる。


「何か?」

 思わず殺気みたいなものを出しちゃった。

 まぁ確かに私だって、エミールさんのことを年上だと思ってたしね、仕方ないよね。

「あぁいや、てっきりジュリエッタと同じか少し下くらいだとおもってたからびっくりして、11才位だとばかり・・・」

「はぁ?」

 おっとっと、またまたついつい苛立ちの声をあげてしまった。


 いけないいけない、私はお嬢様。

 そして今は、リュシーちゃんとリュリュちゃんに膝を提供している枕でもある!

 ちょっと幼く見られたからって声を荒らげるのは良くない。

「な、なんだよちょっと若く見ちまっただけだろ?老けてるって言われるよりはいいだろうが」

 戦いの昂りから戻ってきたからか、エミールさんは年相応の男の子らしい言葉遣いになっている。

「エミールは女心あんまりわかってないよね」

 私とはすっかり仲良くなったジュリエッタさんが、私の顔を覗き込みながら

「ムツキ様は顔立ちが可愛い系だから今は年若く見られるけれど、きっと将来を沢山の男の人を虜にするわね!」

 と、うっとりとした顔をする。


 一応ジュリエッタさんよりは私年上なんだけどね、やっぱり胸が原因かなー、あれ?

 なにかまた違和感がある。

 昨夜は暗かったから気づかなかったけれど、私の髪は赤色それはガーネットをイメージしてキャラメイクしたし当然と言えば当然、そしてその赤色はゲームの時の真紅とは違い、少し黒みのある色で、割りと自然な色をしている。


 そりゃキャラメイクしたままの色じゃあ、目に優しくないからこれで良かったと思うけれど、気になっていたことはそれだけじゃない。

 私は、キャラメイクの時、赤色のロングヘアーで、細身の女の子を作った。

 これはFoEとかでもいつものことだったけれど、今回ガーネットを作ったときはいつもはない項目があって、それはFoEを初めてやった頃に自分を投影して作ったガーネットにはいままでなかったもの。

 というより、今までのゲームのキャラメイクは体格はSMLくらいだったからいつも細身のSで作ってただけだったんだけど、今回のEoSには今までのゲームにはないキャラメイクの項目があって、私はその設定に少し願望を反映したんだ。

 丁度ヤヨが作ったマーチのアバターがヤヨよりも5cmだけ身長が高く設定されていたみたいに・・・


 私は自分の胸元をみる。

 うん、見慣れたいつもの厚さ。

 な、んで?私はガーネットじゃ?

 よくよく考えたら自分のブラがいつもの通りにぴったりなのだから、それはそうだよね。

 嫌な汗が頬を伝った。

 そうだ鏡。


 不思議そうにこちらを見つめる三人と、ついでにエミールを無視して私はアリアとの間においていたカバンの中、ポーチに入れていた折り畳み手鏡を取り出す。

 そこに映っていたのは、少し髪が赤く瞳か茶色いだけの、よく見知った睦月の顔だった。



ということで、次回でようやく睦月ガーネットの姿の描写が出来ます。

舞台となる王国ギフテッドなどの名前が出たのでそろそろ(仮)を外してキーワードとか弄る支度をします。

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